ボン・ジョヴィで盆踊り!デビュー40周年のレジェンドは “盆ジョヴィ” で大フィーバー  新感覚DJフェスの結晶 “盆ジョヴィ” とは?

世代を超えて愛されるボン・ジョヴィの代表曲「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」

ボン・ジョヴィは、全米を代表するハードロック・グループのひとつである。骨太なサウンドと重厚なコーラス、豪快に突き抜けるハイトーンボイスが魅力の彼ら… 今年ちょうどデビュー40周年の節目を迎えた。もはや説明するまでもないが、軽く紹介する。

1984年デビュー。1986年にリリースした3枚目のアルバム『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ(原題:Slippery When Wet)』がアメリカ国内で1,000万枚超の大ヒットを記録。全米チャート1位、全英チャートでも4位に食い込み、デビューからわずか数年という短期間でボン・ジョヴィの名を世界に轟かせた。

同アルバムからシングルカットされた「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」は、1988年に富士フイルム『AXIA』カセットテープのCMソングに採用、そのCMではミュージックビデオさながらに演奏するバンドメンバーが出演していた。ちなみに、2023年にはアサヒ『颯』のCM “叫びたくなる緑茶編” で、同曲のサビに合わせてNBAプロバスケットボール選手の八村塁が絶唱しているシーンが放送された。このCMで、今までボン・ジョヴィを聴いたことがなかった若い世代も、その魅力に気付かされたことだろう。

ボン・ジョヴィと盆踊りの組み合わせが逆輸入された?

ボン・ジョヴィは、デビューした1984年の8月に、ロック・フェスティバル『SUPER ROCK '84 IN JAPAN』出演のため来日。それ以降、日本での単独公演を重ね続け、2003年には5大ドームツアーを開催するほどの人気を得ることになる。彼らにとって日本とは大切な場所であり、「俺たちを最初に評価してくれたのは、日本のみんな」と、ライブで発言するほど日本のファンに熱い友情を感じてくれている。

そんな彼らが、前作から4年ぶりとなるニューアルバム『フォーエヴァー』を、2024年6月7日に世界同時リリースすることを発表した。つまり今日なのだが、日本では4月から始まったフジテレビ系ドラマ『ブルーモーメント』の主題歌に同アルバムの「レジェンダリー」が採用、すでに世界に先駆けてシングルCDが先行販売されている。いかに日本が重要なマーケットと認識されているとはいえ、これ程までに日本贔屓とは少々驚きである。

さて、前置きが長かったけれどここからが本題である。「レジェンダリー」が日本限定でリリースされ数日が経った4月27日… アメリカのボストンで開催された『JAPAN FESTIVAL BOSTON』の会場で、「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」にあわせて現地の人が盆踊りを踊る映像がXに投稿され話題になったのだ。確かに『JAPAN FESTIVAL』だけど、なぜボン・ジョヴィで盆踊りなの? と思うよね… 。ということで、今回はこの不思議な現象を探っていこうと思う。

まずは、時を2018年に巻き戻すところから――

世界に “盆ロック”を発信した「中野駅前大盆踊り大会」

それは2018年8月14日に開催された、「中野駅前大盆踊り大会」に端を発する。公式ページで確認してみると… 。 今年で第12回目を迎える『中野駅前大盆踊り大会』“中野の唄と踊りを生唄で” をテーマにスタートし、現在は、地元の「中野音頭」を始め、「東京音頭」や「炭坑節」「ドダレバチ」「鹿児島おはら」など北から南まで、日本全国の民謡盆踊りを中野区民謡連盟の生演奏で踊れる盆踊り大会。 とある。注目する点は、質の悪い音響ではなく “中野区民謡連盟の生演奏” という部分だ。安易に走らず、敢えて生演奏を取り入れたことで、主催者側の盆踊りに対する本気度が伝わってくる。

この大会は、実行委員長である日本民謡舞踏家の鳳蝶美成が危惧していた「若い世代が参加しないと盆踊りの文化に活気がなくなってしまう」という現状を打破するための行動が発端だ。このアツい思いが、民謡や音頭だけに縛られない自由なイベントへと発展させた原動力なのである。

そんな経緯もあって、『中野駅前大盆踊り大会』は、2013年に開催された当初から「Perfumeや、きゃりーぱみゅぱみゅがかかる盆踊り」としてSNSで話題になっていた。そして、第6回を迎えた2018年、ついにディスコと盆踊りが融合した『BON DISCO DANCE大会』が開催された。これは鳳蝶美成がDJ KOOとTV番組で共演したことがきっかけだが、彼に、“盆踊りはこうであるべき” という固定観念にとらわれない柔軟さがあったからこそ、新しい文化の道が切り開かれたのである。

そして、その瞬間がやってきた――

新感覚DJフェスの結晶 “盆ジョヴィ”

『中野駅前大盆踊り大会』に出演したDJ CELLYが、荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)」やABBA「ダンシング・クイーン」、アース・ウインド & ファイアー「セプテンバー」などを選曲。そして持ち時間のラストでかけたボン・ジョヴィの「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」によって会場は空前の盛り上がりを見せた。

もはや完全にDJフェスの様相である。ただ違うのは、この会場が盆踊り大会の会場だということ。事前に鳳蝶美成が踊りのレクチャーをしていたとはいえ、洋楽や歌謡曲に合わせて浴衣姿の老若男女が盆踊りを踊る姿は衝撃的であり、得もいわれぬパワーがそこに満ち溢れていた。そのパワーから “盆ジョヴィ” という造語が生まれたのは当然の成り行きだろう。

そしてこの様子を撮影した一般の方のツイートが、ボン・ジョヴィの公式X(旧Twitter)に届いたことも必然だ。日本の伝統的な着物 “浴衣” は、アメリカ人が間違いなく興味を持つ対象であり、それとアメリカのロックで盆踊りを踊るというクロスオーバー… こんな想像を超えたファンタスティックな出来事を拡散しない理由が見当たらない。間違いなく人に言いたくなるパワーがそこにあるのだ。

ボン・ジョヴィ本人が投稿した 「日本のみんな!11月26日、27日の来日公演の時にこんな風にみんなが踊るのを楽しみにしているよ」(意訳)という引用リツイートがすぐさま話題となり瞬く間に拡散… ネットニュースはもちろんNHKのニュースでも報じられ話題になったのは言うまでもない。この日 “盆ロック” という新しい形のDJフェスが産声をあげたのだ。これは、世界でも類を見ないDJフェスの可能性を秘めているのではなかろうか。もしかしたら、僕らは新しい文化が生まれる瞬間を目にしているのかもしれない。

ニューアルバムリリースに向けたボン・ジョヴィの仕掛けが爆裂中!

さて、6月7日の今日、ニューアルバム『フォーエヴァー』が世界同時リリースされた。それに伴ってボン・ジョヴィから繰り出される日本でのプロモーションが活発である。すでにリリースされている「レジェンドリー」に加え、新曲「リヴィング・プルーフ」が5月17日から配信中。

さらに、ニューアルバム発売を記念して6月7日から23日まで原宿・竹下通りに公式ポップアップストア『BON JOVI FOREVER POP UP STORE』がオープンする。そして、驚くべきは、5月21日が “ボン・ジョヴィの日” として、一般社団法人 日本記念日協会によって制定されたことだ。もちろん、日本でのデビューアルバム『夜明けのランナウェイ』が、1984年5月21日に発売されたことが由来である。

ということで、これからもまだまだボンジョヴィのフィーバーは続く。そして “盆ジョヴィ” の元祖である『第12回中野駅前大盆踊り大会』が、今年も史上最強の盆踊りとして8月3日、4日に開催される。もはや並の体力ではこの夏を乗り切れないだろう… ということで、コラムの最後はボン・ジョヴィ公認アンバサダーになったなかやまきんに君のあの言葉で締めくくりたい。

パワ――――!!

カタリベ: ミチュルル©︎たかはしみさお

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