どうしてみんな姑息&卑劣!? 『ジャンプ』バトル漫画に登場する「肩乗りキャラ」の小物ぶり

『幽☆遊☆白書』25th Anniversary Blu-ray BOX 暗黒武術会編(バンダイナムコアーツ)

少年バトル漫画には、しばしば「肩乗りキャラ」が登場する。そのほとんどが“大男&肩に乗る小男”のコンビで、見た目のインパクト通り、大男が凄まじいパワーで主人公などに襲い掛かる一方、肩に乗っている小男はパワーがなく、直接戦いに参戦することは少ない。しかし姑息な手段を使って主人公たちを苦しめたり、呪文などで大男をサポートすることが多いのだ。

ここでは、そんな肩乗りキャラの“小物&卑劣“エピソードを紹介したい。

■肩乗りキャラといえばこの兄弟『幽☆遊☆白書』戸愚呂兄

「肩乗りキャラ」と言えば、この2人を思い出す人も多いだろう。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された冨樫義博氏の『幽☆遊☆白書』に登場する戸愚呂兄弟だ。

戸愚呂兄弟は元人間の妖怪であり、暗黒武術会編では主人公・浦飯幽助の最大の敵である。とくに弟は圧倒的なパワーを放つ恐ろしい能力を持ち、100%の完全体となった異形の姿は当時の読者を驚かせた。

その一方、弟の肩に乗る兄には強いパワーはない。その代わり、体を自由自在に変形できる能力を持ち、再生能力が高く、しかも姑息で卑怯。命乞いをする相手に対してとどめを刺すような残忍さも持っていた。

そんな兄は暗黒武術会で桑原和真と対戦し破れる。その後、持ち前の再生能力を使い復活したが、桑原に負けたことに激高。幽助と対戦する弟に「オレを武器として使え!!」と姑息な手段を持ちかけた。それに対し、正当な戦いを望んでいた弟は「ジャマだ兄者」と、兄を島のかなたに殴り飛ばすのであった。

登場当初は兄を慕っていた戸愚呂弟だったが、かつての仲間であった幻海を侮辱したり、姑息な手段を使う兄に徐々に辟易していったのが印象的だ。兄を殴り飛ばしたあと、「オレは品性まで売った覚えはない」と言い放ったセリフに、兄弟でも性格の違いが垣間見えた。

■肩乗りキャラの意外な正体『ダイの大冒険』ピロロ

監修:堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏による『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』にも、少々変わった肩乗りキャラが登場する。それが一つ目ピエロの“ピロロ”だ。

ピロロは大魔王バーンの側近である、キルバーンの肩に乗る小物キャラだ。“暗殺アンサツ”を得意とするキルバーンは「死神」の異名を持ち、死神の笛や巨大な鎌を使い、主人公・ダイたちを苦しめる。その一方、ピロロの得意技は傷を治す呪文であり、攻撃力は低い。

ただしピロロはイヤミたらしい性格だ。戦闘時、自分は逃げながらも、相手にちょくちょく嫌味や皮肉を言ってくる。

キルバーン相手にまったく歯が立たないポップの攻撃を見て、「燃えた燃えた」と茶化したり、動けなくなったポップを見て「じゃあ早く殺しちゃいなよ!!」とけしかけたり……。自分は直接手を出さず、キルバーンの残忍さを利用して相手を攻撃するのは、まるでいじめっ子のようでもある。

しかし、そんなキルバーンもアバンによって倒され、残されたピロロは「もう悪い事はしないように頼むから…!! お願い!! お願いだよォ~~っ!!!」と、キルバーンの命を助けるよう、懇願する一面も見せている。

また、ストーリー終盤でピロロは驚くべき姿で再登場し、読者を大変驚かせた。ピロロは可愛らしい小物キャラでありながらも一筋縄ではいかない、意外性のある存在なのだ。

■【番外編】パワーはないが口は達者『北斗の拳』ハブ

最後は、肩ではなく腕に乗っているという「番外編」。原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による『北斗の拳』には、人間離れした巨大な敵がいる一方、その巨漢男に乗る小柄な敵キャラも登場する。それが残忍な秘孔の実験研究を行うアミバの部下・ハブである。

ハブはアミバの木人形狩り隊メンバーであり、力自慢のギュウキという大男の腕に乗る小男だ。アミバの秘孔術によりパワーアップしたギュウキは、一般人と腕相撲をし、残忍なやり方で相手の腕を切断してしまう。しかしそこにケンシロウが登場して腕相撲に挑み、ギュウキが敗れる。それに怒ったハブはアミバから授かった跳躍力を武器に、棒を使ってケンシロウに戦いを挑むのであった。

ハブは肩乗りキャラのなかでは、珍しく実戦型のキャラクターだ。しかし、よほど自分の体に自信があるのか、登場時から喋りまくる。ケンシロウと戦う際、棒を地面に叩きつけながら「これぞ猴コウ拳!! またの名を猿拳! その流れをくむ野猿牙殺拳!!」と、自分への解説が止まらない。

そんなうるさいハブは当然のごとくケンシロウによってやっつけられ、最後は慕っていたアミバからの刃物一撃で倒れるのであった。肩乗りキャラのなかでは、もっとも噛ませ犬的な存在といえるだろう。

現実世界ではまずお目にかかれない「肩乗りキャラ」たち。その多くが今回紹介したようにちょっと卑屈な性格をしており、独特な攻撃で主人公たちを苦しめているのが特長だ。

肩に乗る小物キャラの多くは憎たらしい印象があるが、彼らの存在が物語をより面白くし、ストーリーを盛り上げているのも事実だろう。

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