「デカレンジャー」20年前の知られざる誕生秘話 塚田英明Pが語る1話完結型へのこだわり、敵組織が存在しない理由

20年前、「特捜戦隊デカレンジャー」はこうして誕生した! - (C)2024東映ビデオ・バンダイ・東映AG ・東映 (C)東映

スーパー戦隊シリーズ第28作「特捜戦隊デカレンジャー」(2004~2005)の20周年を記念して、新作Vシネクスト『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』が上映される。同作のチーフプロデューサーを担当する、東映の塚田英明(ドラマ事業部門長)がインタビューに応じ、20年前の知られざる企画秘話や、20周年新作の裏側を語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

「特捜戦隊デカレンジャー」は、宇宙で多発する星間犯罪組織を取り締まるために設立された宇宙警察・地球署を舞台に、選ばれし6人の刑事=S.P.D(スペシャルポリス・デカレンジャー)が、宇宙犯罪者・アリエナイザーたちに立ち向かうストーリー。『ファイヤーボール・ブースター』では、デカレンジャーたちが爆破事件と銀河の麻薬王の関係を追い、宇宙から地球の高知県まで捜査に奔走する。

「デカレンジャー」で敵組織を作らなかったワケ

SPライセンスを構える東映・塚田英明チーフプロデューサー

Q:いまから20年前、「デカレンジャー」テレビシリーズの企画はどのように立ち上がったのでしょうか?

私は、テレビのアシスタントプロデューサーとして京都撮影所でキャリアをスタートさせて、時代劇を担当したり、ドラマ「科捜研の女」をチーフと一緒に立ち上げました。ヒーロー番組も大好きで、いつかやりたいと思っていたところで東京に配置替えとなり、「仮面ライダーアギト」「忍風戦隊ハリケンジャー」「爆竜戦隊アバレンジャー」を担当した後、「デカレンジャー」ではじめてチーフプロデューサーに就任しました。京撮では「科捜研の女」「京都迷宮案内」といった事件モノのドラマを担当していたので、「デカレンジャー」も1話完結で事件を解決していくヒーロー作品としてできないかと考えて、「警察xスーパー戦隊」という軸を作ったと記憶しています。

Q:“宇宙警察”というアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?

前作「アバレンジャー」がファンタジー的な世界観だったので、「デカレンジャー」はSF路線にして、宇宙の犯罪者に立ち向かうことを発想しました。個人的には、藤子・F・不二雄先生の「21エモン」が大好きなんです。地球のホテルに宇宙からお客さんが泊まりに来たり、主人公たちが宇宙旅行するパートがある作品で、「デカレンジャー」は同作をリスペクトして当時制作していました。

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Q:歴代のスーパー戦隊シリーズでは敵組織が登場しますが、「デカレンジャー」には敵組織が存在しません。あえて敵組織を作らなかった理由は?

1話完結の刑事モノでイメージした場合、いろいろな犯人や犯罪者がいる設定になるので、1つの敵組織との戦いにしてしまうと、そのコンセプトとかみ合わなくなってしまいます。1話完結というスタイルを大事にしつつ、縦軸になる敵キャラクターとして、エージェント・アブレラは作りましたが、基本的には毎回いろいろな宇宙犯罪者と戦う形を採用しました。

Q:「デカレンジャー」の世界観を構築するなかで、制作陣の間で決めていたルールはあったのでしょうか?

はい。どちらかというと、ルールを決めることが嫌いではないタイプなので。テツ(姶良鉄幹/デカブレイク)も含めた6人のうち、脚本上で主語になる人=主役が誰になるのか、バディ編では誰と誰を組み合わせるのかをハッキリさせて「この回ではこの人が主役」という方針を明確に打ち出してエピソードを作っていきました。

テレビシリーズ第1話を意識した20周年作品

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Q:『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』の企画はいつ頃から浮上したのでしょうか?

おととしの年末あたりに、一度集まって話し合いをしました。周年企画はキャストが主導してやる伝統がありまして、「デカレンジャー」も企画担当的な存在の伊藤陽佑くん(江成仙一/デカグリーン役)、ハートで引っ張る菊地美香ちゃん(胡堂小梅/デカピンク役)、菊地さんの夫である吉田友一くん(姶良鉄幹/デカブレイク役)の3人が最初に集まって、「20周年やりましょう」と私や土田真通プロデューサーにプレゼンしてくれて、東映ビデオのもとで企画が始動しました。

Q:「デカレンジャー」としては『特捜戦隊デカレンジャー 10 YEARS AFTER』に続く2度目の周年作品になります。『10 YEARS AFTER』との差別化を図るために『ファイヤーボール・ブースター』で挑戦したことは?

10周年が意外とシリアスな話だったので、少し明るい作風を意識しました。土田プロデューサーはドラマ「相棒」を長年担当しているので、「デカレンジャー」でまだやってない「相棒」みたいな事件はある? といったような話もしました。

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Q:『ファイヤーボール・ブースター』という副題はテレビシリーズ第1話「ファイヤーボール・ニューカマー」を連想させます。新人刑事・江戸川塁が登場するストーリーも第1話を彷彿させますが、これは制作陣の狙いだったのでしょうか?

もちろん意識しました。バン(赤座伴番/デカレッド)を表現する「ファイヤーボール」というワードは使った方がいいのでは? という話が出まして、「デカレンジャー」のサブタイトルは、英語で「~・~」というフォーマットだったので、今回もみなさんのアイデアから、それに倣って『ファイヤーボール・ブースター』が選ばれました。

Q:20周年作品における6人の描き方で意識したり、こだわった部分はありますか?

10周年の時もそうでしたが、いつ見ても6人はこういう関係性で楽しいし見やすい、ということを意識しました。地球署のメンバーが結婚するなど、年齢相応の深みや悩みなど変化はありますが、「事件が起きて、デカレンジャーが出動し、犯人を暴き出して、ジャッジメントする」この形は変わりません。

20周年新作に欠かせなかった人物

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Q:バンの後輩である江戸川塁は、エリート気質で、どこかテレビシリーズ当時のテツを彷彿させるキャラクターです。塁のイメージ、演じた長妻怜央さんの印象はいかがでしたか?

長妻くんとは以前、「東映ムビ×ステ」プロジェクトの第3弾『漆黒天 -終の語り-』(2022)でご一緒して、好青年ですごく良い俳優さんだと知っていたので、塁のキャスティング候補として名前が挙がった時にはすぐに、「それだ!」と思いました。新人刑事の塁は、地球署のメンバーを見て「何なんですか、この人たち?」と思う視聴者寄りなキャラクターで、彼らを新鮮な目で見てもらう役割を担っています。

Q:デカレッドのスーツアクターを担当した福沢博文さんは、アクション監督も兼任する形で新作に参加しています。福沢アクション監督とは今回、どういったお話をされましたか?

福沢さんには、20周年作品が始動した時点で、早めにお声がけしました。最近はアクション監督としてスーパー戦隊に参加されていましたが、ちょうど間が空いていた時期で、幸運にも本作を担当していただけました。「魔進戦隊キラメイジャー」(2020~2021)でもアクション監督をやっていただきましたが、福沢さんは映画もよく見ていてアイデアを豊富にお持ちの方なので、「あの映画の、あんな感じにしてみませんか」という話を現場でよくしました。なので、今回もそうしていただきたかったですし、何よりも、オリジナルのデカレッドのスーツアクターなので、「デカレンジャー」を熟知している人物として参加していただきたかった。演出しながらの出演は大変な部分もありましたが、「バンの部分はやるよ」と引き受けてくださり、デカレッドを演じていただきました。20年経って、また一緒に「デカレンジャー」を作れたことは、改めて感動的だなと思います。

Q:最後に、「デカレンジャー」ファンに向けてメッセージをお願い致します。

各キャストが、当時のキャラクターのイメージを変えることなく演じています。6人が全員揃って、スタッフも当時のメンバーがかなり再結集しているので、みなさんが好きだった「デカレンジャー」であり、また新たな「デカレンジャー」をお見せできると思います。ぜひ、安心して楽しんでいただければ幸いです。

Vシネクスト『特捜戦隊デカレンジャー20th ファイヤーボール・ブースター』は6月7日(金)より期間限定上映/Blu-ray&DVDは11月13日(水)発売

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