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もしものとき、救急搬送を依頼する「119番」。迅速な対応により、多くの命を救ってくれる、まさに国民の命綱ですが、高齢化のなかで危機に面しています。その危機を打破しようと、さまざまな取り組みが行われています。みていきましょう。
きゅ、救急車!増え続ける救急出動に、搬送時間も増加
――くっくるしい……
年金月16万円、ひとり暮らしの80歳男性を襲う、突然の胸の痛み。これはただ事ではないと思い、とっさに119番に電話をかけ、救急車を要請。そんな光景は、今後、高齢化が進むなか、ますます多くなるかもしれません。
総務省『令和5年版 救急・救助の現況』によると、令和4年、救急出動要請は722万9,572人と、前年比16.7%増。コロナ禍が明けたことで、前年からの伸びで最も目立ったのが「運動競技」で23.5%増。続いて「急病」が20.5%増でした。
【令和4年救急出動人数とその内訳】
救急出動人数:722万9,572人
(内訳)
急病:4,884,630人
交通事故:382,301人
一般負傷:1,101,281人
加害:26,786人
自傷行為:60,327人
労働災害:58,576人
運動競技:35,708人
火災:22,369人
水難:4,719人
自然災害:623人
転院搬送:537,359人
その他:114,893人
搬送人数は、「平成14年:432万9,935人」→「平成19年:490万2,753人」→「平成24年:525万0,302人」→「平成29年:573万6,086人」→「令和4年:621万7,283人」と右肩上がり。
年齢区分別にみていったときに、65歳以上の高齢者は、令和4年386万3,153人。そのうち「65~74歳」が91万8,105人、「75~84歳」が143万0,840人、「85歳以上」が 151万4,208人でした。さらに65歳以上の高齢者の割合をみていくと、「平成14年:40.0%」→「平成19年:46.5%」→「平成24年:53.1%」→「平成29年:58.8%」→「令和4年:62.1%」と、こちらも右肩上がり。高齢化の進行の影響が如実に表れています。
コンビニ受診防止を目指し…救急出動「一部有料化」の動き
増加の一途を辿る搬送件数。その分だけ救急隊員が増員となり、救急車の台数も増え、受け入れる病院も、対応に当たる医療関係者も増えればいいのですが、そうではないことは誰もが知るところ。救急車の現場到着所要時間は、平成14年の6.3分から平成4年には10.3分に、病院収容所要時間は28.8分から47.2分と、倍近くにもなっています。
助かる命も助からなくなる……救急の現場はひっ迫しています。そこを何とか打破しようとする取り組みも。
冒頭の高齢者男性。救急車を呼んだもののすぐに症状は落ち着き、本人も「ちょっと大袈裟だったかな……」。診断の結果、当然入院にも至らず、すぐに自宅に戻れるように。
――大事に至らずよかったですね
――はい(恥ずかしい)
――では7,700円になります
――はい!?
今月、救急医療を担う三重県松阪市内の3基幹病院において、救急搬送された患者のうち、入院に至らなかった軽症患者から保険適用外の選定療養費「7,700円(税込み)/人」を徴収するという取り組みがスタートしました。「救急車を呼んだけど入院に至らず→7,700円かかります」というもの。全国にはすでに救急搬送において一部有料化となっているケースもあるとか。
「日本では救急車を呼んでも無料」というのが常識だったところに、一部有料化という動きが進行中。衝撃的に感じるかもしれませんが、これは社会問題化している「コンビニ受診」の対策としても注目されています。
「コンビニ受診」は、本来であれば救急外来を受診するには緊急性がないにも関わらず、自分都合で、時間外の救急外来に行くことを揶揄する表現。ただでさえ高齢化の進行により救急出動が増えていくのは目に見えているのに、コンビニ受診まで増えると……助かる命も助かりません。そのため今回の松阪市の取り組みは好意的に考えらえているようです。
――7,700円かあ、高いな。救急車を呼ぶのはやめよう
このように躊躇する人もいるでしょう。ただ「緊急の時には迷わず119番してほしい」と呼びかけています。また救急車呼ぶべきかどうか迷った場合には「#7119」。看護師などが症状を聞き、適切なアドバイスをしてくれます。一部サービスがスタートしていない地域もありますが、各自治体が同様のサービスを提供している場合も。自身が住んでいる地域ではどうか、調べておくと安心です。
[参考資料]