40代で“要介護候補”になる?50~60代が元気に過ごすカギは筋トレとたんぱく質!

50代の方より、こんなお悩みをいただきました。

相談者 ちょっと外出するだけで疲れやすくなりました。若い頃みたいに運動もしないし筋肉が減ったためでしょうか?

この相談者と同じように、30~40代の頃とくらべて疲れやすくなったと感じる方は多いのではないでしょうか?
「年齢を重ねるにつれ、筋肉が減っていく」→「筋肉が減ることで、動くと疲れやすくなる」→「疲れるから運動量がさらに減る」という筋肉が減る負のループに陥っている可能性があります。
筋肉を維持、増加させるポイントとして、食事でたんぱく質をとることと筋トレをすることが推奨されます。

筋肉量はどれだけ減っている?筋肉が減るとなぜ良くないの?

筋肉のなかでも特に重要なのは、歩くために必要不可欠な「下肢の筋肉」です。
脚の付け根部分から足首の下の足の筋肉を指し、体の中で最も大きいお尻の筋肉大殿筋も含まれます。
この部位の筋肉は年齢に伴う減少率が最も大きい部位で、男女ともに20~30代をピークに中年期以降減少します。
特に男性は、女性にくらべて加齢に伴う筋肉の減少率が大きく中年期以降減少するテストステロンという男性ホルモンの減少が影響していると考えられます。

筋肉が減ることで疲れやすくなるほか、基礎代謝が落ち太りやすくなります。
基礎代謝は運動をして消費されるカロリーではなく、ただ生きているだけで消費されるカロリーで筋肉量が多いほど増加します。
食事の量は変わらない、または少なくなったのに太りやすくなったという方は、筋肉量が落ち基礎代謝が落ちていることが想定されます。
燃焼できなくなった脂肪が蓄積することで肥満になったり、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病のリスクが高まります。

「筋肉量を維持、向上させるために筋トレを始めてみよう!」と思った方は、下肢の筋肉のなかでも特に大きな筋肉である前ももの「大腿四頭筋」やお尻の「大殿筋」を鍛えることができるスクワットから始めるのがおすすめです。
日常生活のなかでは、エスカレーターを使わず階段を上り下りするのもスクワットと同じく「大腿四頭筋」や「大殿筋」を使うことができるので、「階段を見たら筋トレのチャンス!」と思っていただきたいです。

あなたの筋肉量・筋力は大丈夫?セルフチェックをしよう!

皆さん筋肉量はどのくらい維持されているでしょうか?
一つの目安になるのが「フレイル」です。
フレイルとは健康な状態と要介護状態の中間の状態、つまり、将来介護がなければ日常生活を送れないリスクが高い状態のことを指します。
以下は、日本版のフレイル基準で、3個以上該当する方は「フレイル」、1~2個該当する方は、フレイルの手前の「プルフレイル」とされます。
皆さんはいくつ当てはまりますか?

 6か月で、2㎏以上の(意図しない)体重減少
 握力:男性<28㎏、女性<18㎏
 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
 通常歩行速度<1.0m/秒(1秒で1m)
※横断歩行を渡りきるのに必要な速度とされています。
 ➀軽い運動・体操をしていますか?➁定期的な運動・スポーツをしていますか?
※上記の2ついずれも「週に1回もしていない」と回答

全国の40歳以上の男女600名を対象に新田ゼラチン株式会社が行った調査によると、対象となる40歳以上のうち9.6%が「フレイル」、43.8%が「プレフレイル」の基準に該当したそうです。
この調査はあくまで自己申告に基づいた結果ではあるものの、40~50代でもフレイルやプレフレイルに当てはまるリスクがあることがわかりました。
介護リスクが高いといわれても、自分事として捉えられる50~60代の方は少ないと思います。
しかし、高齢期の生活を心身ともに元気に楽しく過ごすためにフレイル予防は重要です。
国立長寿医療研究センターの老化疫学研究部による研究によると、フレイルの人とくらべフレイルではない人の方が生活満足度や自尊感情が高いこともわかっています。
フレイル、プレフレイルのチェックに当てはまった方は今から筋トレの実施や食事の改善していきましょう。

50~60代が1日にとりたいたんぱく質の量

フレイル予防のために筋トレとともに意識してもらいたいのが食事です。
特に50代以降は、「たんぱく質」を意識した食事をしましょう。
健康の保持・増進・生活習慣病の予防のために1日のエネルギー量や主要栄養素(35種類)をまとめた厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」では、フレイルおよびサルコペニア発症予防を考慮し、高齢者の年齢区分の変更(前期高齢者65~74歳、後期高齢者75歳以上)や50歳以上のたんぱく質の目標量の下限値が引き下げられ、たんぱく質の摂取量を増やす重要性を示しています。
※サルコペニアとは…高齢になるにつれ骨格筋の量が低下し、筋力や身体機能が低下した状態を指します。

目標量は、「%」で示されていますが、これは1日にあたり必要なカロリーのうちたんぱく質で割合を示しています。

目標たんぱく質量の算出方法

今回の計算は、身体活動レベル2「出社をして働く活動スタイル」の方を指し一般的に当てはまる方が多い生活スタイルで必要な摂取カロリーからたんぱく質の目標量を求めています。

【50~64歳の場合】
➀ 1日に必要なカロリー量を調べる
男性:2,600kcal、女性:1,950kcal
➁ 1日に必要なカロリー量から、1日に必要なたんぱく質のカロリー量を算出する
男性:2,600×0.14~0.2(14~20%)=364~520kcal
女性:1950×0.14~0.2(14~20%)=273~390kcal
③ たんぱく質1gあたり4kcalに換算し、必要量(g)を算出する
男性:364~520÷4=91~130g
女性:273~390÷4=68~97g

【65~74歳の場合】
➀ 1日に必要なカロリー量を調べる
男性:2,400kcal、女性:1,850kcal
➁ 1日に必要なカロリー量から、1日に必要なたんぱく質のカロリー量を算出する
男性:2,400×0.15~0.2(15~20%)=360~480kcal
女性:1,850×0.15~0.2(15~20%)=278~370kcal
③ たんぱく質1gあたり4kcalに換算し、必要量(g)を算出する
男性:360~480÷4=90~120g
女性:278~370÷4=70~93g

菓子パンのみ、おにぎりのみといった食事の方はたんぱく質が不足しやすいです。
たんぱく質をしっかりとるには、肉、魚、卵、大豆製品などおかずとなる食品の摂取が大切です。
また、年齢を重ねるに連れ、食事量が減少したという方は、牛乳や豆乳を使ったドリンク、ナッツ類にもたんぱく質が多く含まれているのでこうした食品を間食として取ったり、「高たんぱく質商品」や「プロテイン」を活用するのもおすすめです。
いつも食べているヨーグルトを高たんぱく質ヨーグルトに変えてみたり、菓子パンをプロテインバーに変えるのもおすすめです。

さらに体を動かす日は、筋肉の疲労回復効果を高めるためにたんぱく質を多くとる意識を、逆に体をあまり動かさない日は、必要なカロリー量も少なくなることから、たんぱく質量も少なめに調整できると理想的です。
まずは、一定期間単位で「たんぱく質が不足していないかな?」と意識していきましょう。

元気にいきいきと過ごすために「筋トレ」「たんぱく質」に注目してみてくださいね。

※あくまで健康な方を対象とした記事です。治療中の方はかかりつけの医師、薬剤師、管理栄養士の指示に従ってください。

<参考>
・ 谷本芳美、渡辺美鈴、河野 令、広田千賀、高崎恭輔、河野公一「日本人筋肉量の加齢による特徴」(『日本老年医学会雑誌』2010年47巻1号52~57頁)
・ 厚生労働省e-ヘルスネット「QOLの維持・向上に大切な筋肉は?」
・ 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター「2020年改訂日本版CHS基準(J-CHS基準)」
・ 新田ゼラチン株式会社「プレフレイル実態調査」
・ 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 「『フレイル』とこころの健康」
・ 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」

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