偏光板・部材フィルム世界市場に関する調査を実施(2024年)~偏光板世界市場は面積効果が大きい大型TV向け偏光板需要が市場全体を牽引する形で、2024年の偏光板世界生産量は前年比5.6%増の5億9,580万㎡まで拡大すると予測する、単価下落につながるため在庫を抱えたくないディスプレイパネルメーカーは、今後もパネル生産稼働率の頻繁な調整へ~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2024年の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、将来展望を明らかにした。ここでは、偏光板の世界市場予測について、公表する。

1.市場概況

2023年の偏光板世界市場(メーカー生産量ベース)は、前年比114.2%の56,445万㎡と推計する。2023年の偏光板世界市場は第3四半期(7~9月)まで好調を維持し二桁成長で需要回復するも、10月から始まったTVパネルの生産調整により第4四半期(10~12月)は出荷量減少となったが、2023年通年では前年より大幅に市場が回復した。
偏光板市場の回復を牽引したのは65インチ以上の大型TVパネルの生産拡大であった。中国のディスプレイパネルメーカーのみならず、台湾・日本のパネルメーカーの生産拡大が好材料となり、大型TVパネル向けを手掛ける偏光板メーカーは2023年第3四半期(7~9月)にはフル稼働まで生産が回復した。

2.注目トピック~TVパネル向け偏光板、65インチは大型TVパネルのボリュームゾーン、75インチ、85インチの超大型パネルの生産も拡大~

2022年の大型TVセットは売れ行きが低迷し、TVパネルメーカーでの主力生産品は開発途上国でのプロモーション活動で堅調な販売を維持した32インチや43インチクラスの小型TV向けディスプレイが主力であった。
その後、Middle-Low End TV需要が一巡したため、2023年からはHigh-End TV市場が動き、主力生産インチは55インチ以上の大型TVパネルに切り替わった。TVパネルメーカーでは、65インチ以上のTVパネルの生産が主力となった。
2024年もボリュームゾーンである65インチの他、75インチ、85インチの超大型パネルの生産が拡大しており、TVディスプレイサイズをアップしていることもTVパネル向け偏光板世界市場の下支えになっている。

3.将来展望

面積効果が大きい大型TVパネル向け偏光板需要が市場全体を牽引する形で、2024年の偏光板世界市場は59,580万㎡まで拡大すると予測する。

2023年第4四半期(10~12月)より偏光板メーカーのTVパネル向け出荷量が減少したが、2024年2月頃からTVパネルメーカーの在庫補充需要などが発生し、偏光板メーカーの生産稼働率も大幅に回復している。春節連休の後半より中国TVパネルメーカーはTVパネルの生産稼働率を急激に上げ、2月末時点で中国TVパネルメーカーの稼働率は大手のCSOT、BOEなどを中心に90%以上のフル稼働となったほか、台湾・日本のTVパネルメーカーも稼働率が上昇し生産量が拡大した。
そのため、大型TVパネル向けを手掛ける偏光板メーカーを中心に、TVパネル向け偏光板の生産ラインはフル稼働が続いており、2024年5月末まではディスプレイパネルメーカー・偏光板メーカー共にフル稼働の予定となっている。
しかし、TVセットメーカーからの需要動向や、ディスプレイパネルメーカー側で溜まったTVパネル在庫の水準、TVセットメーカーの前倒し発注・ダブルブッキングなどを考慮すると、2024年下期(7~12月)からはディスプレイパネルメーカー・偏光板メーカーの生産稼働率は低下していくと予測する。

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