BTS RM、2ndアルバムチャートイン アジアのインディーシーンにとっても追い風に

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参考:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2024-06-03/

2024年6月3日付(5月28日発表)のオリコン週間アルバムランキングで首位を獲得したのは『あんさんぶるスターズ!!アルバムシリーズ『TRIP』Knights』で推定売上枚数は50,321枚だった。続く2位には、RMの『Right Place, Wrong Person』が23,879枚でランクイン。ほか、トップ10圏内の初登場作品としては、4位長渕剛『BLOOD』(16,455枚)、6位Zero Project『Seize a Chance!』(9,888枚)、7位宮本佳林『Spancall』(7,976枚)、9位星街すいせい『Still Still Stellar』(5,392枚/既出作アナログ盤)、10位ClariS『Iris』(4,851枚)があった。

さて、今回取り上げるのは2位にランクインした、BTSのリーダーであり、ミックステープを含めこれまでも充実したソロ作をリリースしてきたRMの2ndアルバム『Right Place, Wrong Person』だ。

2022年にリリースした前作『Indigo』では、エリカ・バドゥやアンダーソーン・パークといったネオソウル~R&Bのキーパーソンをフィーチャーする一方、韓国のラッパーやシンガーを多数招き、リラックスしながらもポップな華やかさのあるサウンドを展開していた。R&Bを中心に据えつつも、キム・サウォルをフィーチャーしたフォーキーな楽曲が素晴らしいアクセントになっていたのも印象深い。

一方、今作『Right Place, Wrong Person』は、緊張感のあるシンセのアルペジオとトリッキーなドラムのパターンがただならぬ雰囲気を醸し出すオープニング「Right People, Wrong Place」に導かれるように、どこか不穏で一筋縄にはいかないサウンドに満ちている。サイケデリックロックに大胆にアプローチしたLil Yachtyの『Let's Start Here.』や、本作にも参加しているLittle Simzなどのプロデュースをはじめロンドンで気を吐くInfloの仕事を少し彷彿とさせる折衷感覚を感じるアルバムだ。

個人的なフェイバリットを挙げるとすれば、先述のLittle Simzをフィーチャーした「Domodachi」だ。呪術的なパターンを反復するサックス、生々しいドラム、地を震わせるようなベース、サイケデリックな歪みを鳴らすギターのアンサンブルが強烈なインパクトを残す。RMのローキーな声質とLittle Simzのパーカッシブなフロウの対比の妙に加え、韓・英バイリンガルのラップ(Little Simzも韓国語のフレーズを取り入れている)に日本語のフック(!)が登場する歌詞も印象的だ。

本作には、ソングライターやプロデューサーとして韓国のインディーシーンで活躍するアーティストが数多く参加している。HYUKOHのOHHYUK(「Come back to me」)や、今月末には来日を控えているSilica GelのKim Hanjoo(「Groin」「ㅠㅠ (Credit Roll)」)、気鋭のR&BシンガーJclef(「LOST!」「Around the world in a day (feat. Moses Sumney)」)、等々。こうしたアーティストたちのネットワークをまとめあげたのは、アルバムのプロデューサーにクレジットされているBalming TigerのSang Yawnだろうか。2022年に「SEXY NUKIM」でBalming TigerがRMとコラボしたときは「いきなりそんなビッグネームと……」と驚いたものだが、それが一過性のコラボに終わらず、音楽的なパートナーシップが育まれていたことにちょっとした感慨を覚える。

また本作は、日本からnever young beachの面々や岡田拓郎、台湾からSunset Rollercoasterなども制作に携わったことでも注目を呼んでいる。もちろんLittle SimzやMoses Sumneyといった英米の気鋭のアーティストの参加も関心を引くポイントではあるけれども、東アジアのインディーシーンが築いてきた交流がRMというポップアイコンをハブに具現化したような作品だと言えよう。アーティスト同士が重ねてきた交流もさることながら、近年は韓国はじめアジアのインディーシーンを日本のリスナーへ紹介する動きもさらに活発になっている。そんな状況への追い風となりそうな一作でもある。

(文=imdkm)

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