仕事で悩む若者は適応障害なのか 【第6回「働くことって、こんなことだったの?」適応障害になった原因は…

第3章  ≪エピソード≫ 職場に行くのがつらい

1 働くって、こんなことだったの? 

Aさん、Bさんのようなケースは比較的多く、典型的なタイプとも言えます。

研修中や先輩や上司のサポートがあるうちは大丈夫。むしろ楽しく働けていますが、いざ仕事が始まり、一人でしなければならなくなったり、責任が生じたりすると症状が出てきています。

実際の失敗などは大したことでないことが多いです。むしろそのささいなことに対する反応が問題です。

何かひとつ注意されたり叱られたりダメ出しをされたりすると、不安になり、気持ちを切り替えて前向きになることができない。そして、叱られるのではないか、責められるのではないか、自分を否定されるのではないかという思いが大きくなります。不安が生まれてきます。なんかイヤだなと思いながら仕事を続けます。

(こんなことは大したことではない)とわかっているかもしれませんが、徐々に体が反応してきます。

うまく行かないあるいは間違うということは、学校時代は不正解になりますから、不都合なことです。そのためちゃんとできるように教えてほしい、一人でするなんて不安だ、責任を問われるなんて不安だ、そんな働くことの入り口よりも前の感情が聞こえてくるようです。

仕事はどんな小さなことでも責任があります。ある作業、仕事をすることによってお給料は発生しています。ある意味でお給料の多さは責任の重さです。何もしていないように見える上司だって、より多くの責任を負っているからお給料も高いのです。しかしそれに耐えられない。言うなれば(働くことって、こんなことだったの?)心のつぶやきです。

学生時代アルバイトでもして小さな責任に慣れていたら、まだよかったのかもしれません。社会や仕事に対するそもそもの不安が見え隠れします。

そしてその不安を助長するのは、微妙で事実関係ははっきりしませんが、(ちゃんと教えてもらっていないのに)という思いです。実態の把握が難しい問題です。Aさんにしっかり教えていたのか、Bさんの能力の問題なのか、気にし過ぎなのか、サポートが十分でなかったのかはわかりません。昨今は人手不足や正社員の削減など、じっくり教え育てる余裕のないこともまた事実でしょう。

2 やさしくしてほしい……

≪再研修を命じられ、一人でいると涙が出てくるⅭさん≫

コールセンターに勤め6カ月になる。

最初1カ月は研修(OJT:On the Job Training 現任訓練などと言われる)があり、その後実際の業務に入った。お客様とのやり取りのメモもすべてPC打ち込み、内容も時間もマネージャーの手元に把握される。成績もグラフ化される。他の人に聞きながらやることも多く、なかなか成績も上がらない。

ある日マネージャーから呼び出された。PCのデータを見ながら、

「Cさんさー、1件にかかる時間が長いよねー、だから件数も伸びないし……もう少し内容を的確に理解して時間短縮できるように勉強し直してみようか」と言われ、OJTに戻されることになった。

自分のグループからは自分一人だけで、他のグループからもう一人いたが、その人は言われたあとすぐ辞めてしまった。

(一緒に入ったひとつ下の子はちゃんとやっている)

自分の不甲斐なさに傷ついた。

(自分も辞めようかな……でもお金も困るし、どうしよう……すぐ次、探せるかな……)

辞めようという決心もつかず出勤していたが、マネージャーや他の人から見られているようで緊張し、手がふるえるようになった。夜一人になると涙が出てきた。よく眠れず、出勤前は動悸や吐き気も出てきた。地下鉄に乗るのも怖くなり、駅にしゃがみこんでしまった。そんなことがあり、同僚から病院で診てもらったほうがいいと言われ受診した。

≪ミスをきつく叱られ、パワハラを受け具合が悪くなったと言うDさん≫

新卒1年目。明日の朝はクライアント先へ直行するので、課長から持っていく資料を渡された。夜自宅で確認し、朝一旦自宅を出たが、念のためUSBも持って行ったほうがよいと思い取りに戻ってから向かったが、クライアント先にはギリギリになってしまった。

余裕がなくなってしまい、スムーズな説明ができなかった。すると帰りに課長から「お前がちゃんと余裕をもって来ないから、こんなしどろもどろになるんだ! いつも遅刻ギリギリのお前なんか、連れてくるんじゃなかったな!」と言われた。

DさんはDさんで一生懸命やったが、結果不手際になり、課長から罵倒され、全否定されているような気持ちになった。以来、課長は自分に冷たいような気がして、自分はダメだというレッテルを貼られているように感じ、職場の居心地も悪くなってきた。

よく眠れず食欲もなく、徐々に気分も落ち込んできたが(あんなふうに言わなくてもいいんじゃないか、人格を否定するような言い方で、パワハラだ)と思うようになった。

気持ちがなかなか回復せず、メンタルクリニックを受診し「パワハラで、具合が悪くなりました」と訴えた。

2 やさしくしてほしい……

≪再研修を命じられ、一人でいると涙が出てくるⅭさん≫

コールセンターに勤め6カ月になる。

最初1カ月は研修(OJT:On the Job Training 現任訓練などと言われる)があり、その後実際の業務に入った。お客様とのやり取りのメモもすべてPC打ち込み、内容も時間もマネージャーの手元に把握される。成績もグラフ化される。他の人に聞きながらやることも多く、なかなか成績も上がらない。

ある日マネージャーから呼び出された。PCのデータを見ながら、

「Cさんさー、1件にかかる時間が長いよねー、だから件数も伸びないし……もう少し内容を的確に理解して時間短縮できるように勉強し直してみようか」と言われ、OJTに戻されることになった。

自分のグループからは自分一人だけで、他のグループからもう一人いたが、その人は言われたあとすぐ辞めてしまった。

(一緒に入ったひとつ下の子はちゃんとやっている)

自分の不甲斐なさに傷ついた。

(自分も辞めようかな……でもお金も困るし、どうしよう……すぐ次、探せるかな……)

辞めようという決心もつかず出勤していたが、マネージャーや他の人から見られているようで緊張し、手がふるえるようになった。夜一人になると涙が出てきた。よく眠れず、出勤前は動悸や吐き気も出てきた。地下鉄に乗るのも怖くなり、駅にしゃがみこんでしまった。そんなことがあり、同僚から病院で診てもらったほうがいいと言われ受診した。

≪ミスをきつく叱られ、パワハラを受け具合が悪くなったと言うDさん≫

新卒1年目。明日の朝はクライアント先へ直行するので、課長から持っていく資料を渡された。夜自宅で確認し、朝一旦自宅を出たが、念のためUSBも持って行ったほうがよいと思い取りに戻ってから向かったが、クライアント先にはギリギリになってしまった。

余裕がなくなってしまい、スムーズな説明ができなかった。すると帰りに課長から「お前がちゃんと余裕をもって来ないから、こんなしどろもどろになるんだ! いつも遅刻ギリギリのお前なんか、連れてくるんじゃなかったな!」と言われた。

DさんはDさんで一生懸命やったが、結果不手際になり、課長から罵倒され、全否定されているような気持ちになった。以来、課長は自分に冷たいような気がして、自分はダメだというレッテルを貼られているように感じ、職場の居心地も悪くなってきた。

よく眠れず食欲もなく、徐々に気分も落ち込んできたが(あんなふうに言わなくてもいいんじゃないか、人格を否定するような言い方で、パワハラだ)と思うようになった。

気持ちがなかなか回復せず、メンタルクリニックを受診し「パワハラで、具合が悪くなりました」と訴えた。


※本記事は、2022年9月刊行の書籍『仕事で悩む若者は適応障害なのか』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。

© 株式会社幻冬舎メディアコンサルティング