「片付けなければ」と考えながらも、なかなか手が進まない人は多いのではないでしょうか。部屋を片付けないままもしものことがあったら、家族は大変困ることになります。生前整理・遺品整理アドバイザーで、一般社団法人日本遺品整理協会理事でもある上東丙唆祥氏の著書『人生最後の片づけ・整理を始める本』(メディア・パル)より、一部を抜粋して紹介する本連載。上東氏が、自分のため、家族のために行うべき、人生の後半に後悔しない片づけ・整理の方法を解説します。
納戸の中は、基本的には空にしてもう開けない
使用しない家具やものを収納する物置スペース、いわゆる納戸は、片づけるのにかなり苦労します。
なぜなら、そこは多くの人が開けないまま長期間、何十年もそのまま放置しているからです。ホコリが固まって砂や泥のように積もっていることもあれば、家の修復のためのペンキ缶がさびていたり、壊れた家電の破片が散らばっていたりします。この場所は火事になれば燃えやすく、ネズミや害虫が発生している可能性もあります。結論からいえば、防災や衛生の観点から納戸は空の状態がいいと思います。
遺品整理でよく言われるのが、「納戸の中は見ていないんですよ」「確認しなくてもいいので、あるものはすべて処分してください」などです。家によっては先祖代々のものが置いてありますが、着物や骨とう品のような古い時計などほとんど価値がなく、何の役にも立たないものばかり。思いきりよく捨てても問題ありません。
納戸の片づけが終わったら、基本的には空っぽにして扉を開かないようにするのがベストです。ただ、空いたスペースを有効活用したいならば、いちど、害虫駆除のアイテムできれいにしましょう。汚れがひどければ、床や壁の張り替えも必要です。
そのうえで、納戸を使うなら、季節の家電、脚立や踏み台、災害時の備蓄品がよいでしょう。季節の家電は定期的に出し入れするので、閉めっぱなしにならず安心です。
物置部屋は“手前にあるものだけ”を片づける
これまで作業にうかがった半数近くで「物置部屋」を片づけました。ものを置く部屋としてつくられたわけではないはずですが、家の人にそう呼ばれる部屋には、共通する特徴があります。①部屋の中に入れず、②ものが乱雑につめ込まれ、③奥までたどり着けない状態です。ひどいときは、ものが雪崩を起こしています。
もとは子ども部屋か応接間だった部屋が家族構成が変わって使わなくなり、空いているスペースに「とりあえずこれを置こう」というものが積み重なって物置部屋となります。片づけるには相当の気力が必要です。
片づけの動機づけとして、部屋の賃料を算出しましょう。持ち家なら固定資産税÷部屋の数÷12ヵ月です。3分あればできます。
次は片づけのコツです。物置部屋で使うものはだいたい手前にあります。つまり、要・不要を判断しながら片づけるのはそこだけなのです。その奥にあるものはすべて不要。心を無にして、いらないものをゴミ袋につめていけば、スッキリします。
1日分で大丈夫です。数日後には、部屋の奥にたどり着けます。くれぐれもいちどに片づけようとは思わないようにしましょう。
物置部屋を片づけるときは、手袋やマスクが必須です。また、入り口と窓を開けて換気をしながら行いましょう。
上東 丙唆祥
生前整理・遺品整理アドバイザー
一般社団法人日本遺品整理協会理事