キリン「午後の紅茶」戦略説明会、アイスティーの訴求で夏の市場拡大を目指す

by 編集部:湯野康隆

2024年6月7日 発表

代表取締役社長の井上一弘氏(左)とマーケティング部 午後の紅茶 シニアブランドマネージャーの原英嗣氏(右)

キリンビバレッジは6月7日、「午後の紅茶」についての戦略発表会を開催し、代表取締役社長の井上一弘氏らが説明を行なった。

午後の紅茶は1986年に発売され、38年にわたって親しまれているロングセラーブランドだが、主力のストレートティー/ミルクティー/レモンティーが6年ぶりにリニューアルし、6月18日に発売されることになっている。

井上氏は、飲料業界の現状と今後について、「国内市場が人口減少によって縮小する見込みで、インバウンド需要の増加、健康ニーズの拡大など、市場が好転する可能性もあるが、実態は不透明で見通しがなかなか難しい」と語る。こうした環境は今後も続くとする同氏は、「生き残っていくためにはキリンの強みを最大限に活かしたCSV(Creating Shared Value)の実践が不可欠」だとする。

2024年の事業方針としては、強固なブランドの構築と事業基盤の強化の2つを重点課題とする同社だが、新たな価値提案による既存カテゴリーの魅力化を午後の紅茶ブランドで推進することでブランド力の強化を図っていく。

主力のストレートティー/ミルクティー/レモンティーが6年ぶりにリニューアル

マーケティング部 午後の紅茶 シニアブランドマネージャーの原英嗣氏によると、午後の紅茶では「日本の紅茶文化を創造し、社会とお客さまの毎日を豊かにする」というビジョンを掲げているが、コロナ禍を経て楽しかったという感情が下がり、直近になってもその感情が戻ってきていない、という消費者マインドの傾向が続いており、紅茶だからできることがあるとする。

同氏は、紅茶には上質感、香りの豊かさ、飲み方の多様性といった強みがあり、こうした特徴を活かしていくことで消費者の気持ちを満たせるはずだが、他の飲料と比べて飲むシーンが分からないという声や、ジュースのようなイメージがあるため、紅茶を飲みたくなるようなシーンを作っていく必要があると説明。上質さやおいしいという体験を作っていくことで、市場拡大を目指すとしている。

カテゴリーの拡大には夏の戦略が重要だとする原氏は、清涼飲料が最も売れる夏の季節にアイスティーが飲みたくなるような機会を創出することで、紅茶好きから関心が低い人まで幅広い層にアプローチを図り、秋~冬にホットで飲むという日本における紅茶のイメージを一新するとともに、紅茶の上質感を活かして「毎日飲むならちょっといいもの」という潜在意識に働きかけたいとする。

“夏にアイスティー”のイメージの定着を図る

今回のリニューアルにおいては、フレーバーごとに使用する茶葉を変えたり、冷やしても濁らないクリアアイスティー製法を用いたり、工場においてもポットで淹れる紅茶と同じ手順で生産したりといったブランドの伝統を受け継ぎながら、時代が求める味わいを追求。リラックスしたい時やご褒美シーンでの飲用を想定し、紅茶ならではの香りのよさと、ちょうどいい甘さのバランスを目指したという。

味わいについては、「ミルクティーでは、ミルクの満足感を高めるような変更を行なった。ストレートティーについては、心地よい甘みとすっきりとした後味が楽しめるような変更、レモンティーに関しては、香りを楽しみながらレモンの甘酸っぱさを楽しめるようにリニューアルした」とのこと。

あわせてボトルやラベルのデザインも一新。従来のシュリンクラベルからロールラベルに変更し、プラスチック樹脂の使用量削減にも取り組んでいる。

また、期間限定商品として、炭酸を加えることで爽快に飲めるようにした「キリン 午後の紅茶 Sparkling ライチスカッシュ」を7月2日に、トロピカルなフレーバーの無糖で表現した「キリン 午後の紅茶 TEA SELECTION SUMMER BLEND ICE TEA」を7月9日にそれぞれ発売することで、普段あまり紅茶を飲まないような人にもアピールしていく。

期間限定の「キリン 午後の紅茶 Sparkling ライチスカッシュ」「キリン 午後の紅茶 TEA SELECTION SUMMER BLEND ICE TEA」も登場

井上氏は、「日本の紅茶市場にはまだまだ成長のポテンシャルがある」とした上で、「コーヒーの販売数量は飲料全体の約11%を占めているが、紅茶を文化として根付かせていくためには、(現状で4~5%の紅茶の販売数量を)コーヒーに近い水準の10%程度の規模にまで拡大させる必要がある。午後の紅茶ブランドを成長させることで、紅茶市場の拡大、紅茶文化の浸透につなげたい」と語っていた。

なお、今回の発表会には、午後の紅茶で使用されている茶葉を生産するスリランカ側から駐日スリランカ大使のE.ロドニ・M・ペレーラ氏も同席。同氏は、「英国による統治下で1860年代に世界最大のコーヒー生産国になっていたが、さび病の蔓延により損失を被ったコーヒー農園を救うために茶葉の栽培実験が始まった」と、セイロンティーの歴史を紹介しつつ、近年、スリランカの紅茶農園がレインフォレスト・アライアンスの認証を取得することをサポートしている同社への謝意を伝えていた。

駐日スリランカ大使のE.ロドニ・M・ペレーラ氏

同氏はまた、6月15日~16日に東京・代々木公園で開催される「第16回スリランカフェスティバル2024」では、スリランカの食や文化を楽しめるとして、イベント会場への来場を呼びかけていた。

© 株式会社インプレス