「想像を絶する」ガザ避難所の学校への空爆 目撃者が証言

ヨランド・ネル 、BBC中東特派員

パレスチナ自治区ガザ地区中部にあるヌセイラト難民キャンプでは、国連が運営する学校の教室が、避難者の寝床になっていた。そこでは今、パレスチナ人の子どもたちががれきや血まみれのマットレスをよじ登っている。

この何時間か前の6日午前、学校がイスラエル国防軍(IDF)の空爆を受け、少なくとも35人が死亡し、多数のけが人が出たと、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は発表した。

「鉄の破片が飛び散って、あらゆるものが崩れ落ちた。想像を絶することが自分たちに起こった」と、ガザ市出身のナイム・アルダダさんは語った。アルダダさんは空爆を受けた学校に身を寄せる何百人かの避難者の1人だ。

IDFは、国連運営の学校を攻撃の計画・遂行の拠点としていたイスラム組織ハマスと、別の武装組織「イスラム聖戦」の戦闘員計20~30人を標的に、「正確で、情報に基づいた攻撃」を行ったと主張している。

しかし、ハマスが運営するガザの「政府メディア局」は、犠牲者には子ども14人と女性9人が含まれるとしている。これに先立ち、複数の医療関係者はBBCに協力する地元ジャーナリストに同様の人数を報告している。

「レッドラインをすべて越えた」

イスラエルは昨年10月から戦闘を続ける中で、ハマスが学校や病院、そのほかの建物に工作員を潜ませ、民間人を人間の盾にしていると繰り返し非難している。

学校に避難しているアルダダさんは、「レッドライン(越えてはならない一線)をすべて越えてしまった」と述べ、国連施設にいても自分の家族は保護されないことを示唆した。「世界は私たちのことを二重基準で扱っている。イスラエルはすべての国際法に違反している」と、アルダダさんは付け加えた。

イスラエルは二つの国際法廷に提訴されるなど、その戦争遂行をめぐり外交的孤立を深めている。それでも、武力紛争法の範囲内で行動していると主張している。ハマスによってイスラエルは存続が脅かされており、それに対抗するためだとしている。

IDF報道官のピーター・ラーナー中佐は電話で記者団に応じ、ヌセイラト難民キャンプの学校を拠点とする、武装したパレスチナ人戦闘員の一部が、昨年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃に関与していたと述べた。その証拠はすぐには示さなかった。ハマスのイスラエル南部への攻撃では約1200人が殺害され、ガザでの戦闘へとつながった。

ラーナー中佐は、ハマスとイスラム聖戦の工作員が、国連が所有する学校は拠点として「比較的安全だと感じていた」のだろうと示唆した。

IDFは学校の2階と3階部分の画像を公開し、戦闘機の標的となった場所を示した。

今回の件では異例なほど、IDFは民間人に危害を加えるリスクを減らす措置を取っていたと強調している。「我々は実際に2度、攻撃を中止した」と、ラーナー中佐は述べた。

避難者が犠牲に

イスラエルがガザでの攻撃を拡大する中、安全を確保しようとするパレスチナ人が再び、この夜間の攻撃で大勢死傷した。

国連運営の学校にとどまる人々の中には、戦闘開始間もなくIDFの避難命令を聞き入れて北部から南部へと移動し、数カ月前にエジプトとの境界近くの南部ラファを追われた人たちもいる。

IDFは今週、ガザ中部で新たな地上攻撃と空爆を行うと発表した。中部ではハマス戦闘員の再編が行われていると、IDFは主張している。IDFは以前撤退したガザの複数地域に繰り返し戻っている。

空爆を受けた学校の中庭には、遺体袋や毛布で覆われた20人以上の遺体が並んでいた。BBCと連携するジャーナリストは、死亡した息子らの頭や手を抱く複数の女性を撮影した。

「すごく過酷な夜だった」と、いとこのモハメドさんが殺害されたという10代のイブラヒム・ルルさんは話す。

「きょうだいや友人と一緒に座っていたら、突然爆発が起きた。自分は壁際に座っていたのでマットレスに守られた。遺体はすべて、ばらばらに引き裂かれてしまった」

複数の住民によると、標的となった学校の一部は成人男性や少年の避難所として使用されていた。成人女性や少女は別の場所で眠っていたという。この学校の一部は5月中旬にもIDFの空爆の標的となったことがある。IDFは当時、「ハマスが戦略を練る部屋」として使っているとしていた。

複数の死傷者が一晩中、ヌセイラトから近くのデイル・アル・バラフにあるアル・アクサ殉教者病院へと運ばれていった。周辺地域ではIDFの激しい砲撃が続いており、同病院はここ数日、数百人の負傷者の治療に苦慮している。

アル・アクサ殉教者病院は先に、発電機が故障し、治療が難しくなるだろうと報告していた。

国境なき医師団(MSF)の医療従事者は5日、同病院の混乱した状況について説明。過去24時間以内に少なくとも70人の遺体のほか、300人以上の負傷者が運び込まれたとしている。負傷者の大半は女性と子どもだという。

(英語記事 Witnesses tell of 'unimaginable' Gaza shelter air strike

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