お母さんコウノトリどこへ 淡路市の人工巣塔、姿消して3週間 雄がワンオペ育児に奮闘中

姿を消したコウノトリのつがいの雌(いずれも山本喜一さん提供)

 兵庫県淡路市で今年を含め4年連続でひなをふ化させた国特別天然記念物コウノトリのつがいの雌が、姿を消した。約3週間前から見られなくなり、今春誕生した4羽のひなを雄が懸命に育てている。つがいとひなを見守ってきた地元住民は「無事に帰ってきてほしい」と雌を心配しつつ、ひなの成長を願う。(中村有沙)

 つがいは2021年から毎年、淡路市の同じ場所でひなをふ化させ、今年は4月下旬に4羽が誕生。淡路市教育委員会や愛好家らによると、雌は5月中旬ごろから巣で見かけなくなり、目撃情報もないという。

 市教委が設置している観察用カメラの映像では、父親の雄が日中に6~8回程度、ひなに餌を与える吐き出しの行動が確認された。

 コウノトリの郷公園(豊岡市)によると、この回数はペアがそろって子育てしている状況と変わらないといい、まさに雄はワンオペ育児に奮闘中。

 同公園の担当者は「餌を与える回数が減っていれば対策が必要だが、現時点で問題はない。雌の分まで雄が頑張っている。この状態が維持できれば、ひなが無事に巣立つことができる可能性は高い」とみる。

 一方、雌がいなくなった理由については「事故に遭ったことも考えられるが、確定的なことは何もなく、分からない」とする。

 淡路市はつがいのために人工巣塔を作り、今年初めてそこでふ化に成功した。

 巣塔が自宅の敷地内にある男性(80)は雌について「母親がこれほど長く帰ってこないことは、これまでなかった。情報もなく、心配だ」と話した。

© 株式会社神戸新聞社