パロマ・リームHD 10年後に売上高3兆円へ 海外でM&A推進も 90億円投資、大口工場刷新 小林社長インタビュー

「世界戦略を日本発で実行したい」と話す小林社長

 ガス器具メーカーのパロマ(本社名古屋市)を傘下に置く持ち株会社、パロマ・リームホールディングス(HD、本社東京都)の小林弘明社長が中部経済新聞の取材に応じ、2034年12月期の売上高について「3兆円ぐらいに引き上げたい」と意欲を示した。23年12月期の連結売上高は約9千億円。国内はものづくりの集積地として経営資源を集中させる一方で、売上高の9割を占める海外事業において温水機器や空調機器などを拡販するほか、M&A(企業の合併・買収)も推進して収益を拡大させる。

 小林社長がトップを兼務するパロマは、23年10月に持ち株会社のパロマ・リームHDを設立。パロマと、北米子会社で大手の給湯器・エアコンメーカー、リーム社を傘下に置き、パロマが日本事業の関連子会社を、リーム社がその他の海外子会社をそれぞれ統括している。パロマとリーム社は、日本に生産拠点を10カ所、海外生産拠点を22カ所構える。
 持ち株会社体制に移行した理由について、小林社長は「グローバルに変化していく経営環境への対応などが狙いだ。現状は国内の売上高が700億円程度で、海外子会社が8千億円強の規模。アンバランスな状態を解消する必要があった」と語った。
 持ち株会社の本社を売上高の1割未満の日本に置いた狙いは「世界戦略を日本発で実行したいからだ。国内と海外の事業は切り離せない関係で、世界戦略に見合う(技術者など)人材を充実させたい。研究開発やものづくりの技術集積は日本発を中心に考えている」と述べた。
 パロマグループの23年12月期連結売上高は、22年12月期比0.3%減の9045億円。営業利益は5.6%減の1070億円だった。円安効果はあったものの、国内外で給湯器などの主力製品の販売が鈍化。国内は給湯機器の在庫増加に伴い出荷台数が減少したほか、海外は金利上場の影響で住宅インフラへの投資が減少したことなどが響いた。
 ただ、売上高は過去10年で約3倍に拡大。営業利益は約3.9倍に急伸している。19年にオランダの住宅用ボイラー・給湯器メーカーを買収したり、21年に米国のエアコンメーカーを買収したりするなど、M&Aを進めて主に海外事業を拡大。客のニーズを製品やサービスに反映する、製販一体型の高付加価値のものづくりで収益を伸ばしてきた。「近年は為替の影響が大きいが、海外で省エネ機器への需要が高まるなど、購買志向が変化したことも寄与している」(小林社長)としている。
 国内の生産体制について、ガス給湯器の主力工場の大口工場(愛知県大口町)の刷新を計画。「26年から27年に完成するイメージ」(小林社長)。新棟を増設し、生産能力を増強する。工場の延べ床面積は約1.9倍の7万3800平方メートルになる見通し。完成した新棟から順次稼働させる方針で、約90億円を投じる見込みだ。
 今後の課題について、「世界市場でエアコンなど空調機器の大手が給湯器市場に参入してきた場合の、競争が課題だ」と指摘。「お客さまの声に寄り添い、多種多様で高品質な製品づくりに取り組み、成長してきたグループの強みを生かしていきたい」と力を込めた。

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