井上尚弥以上の衝撃?元世界ヘビー級王者ワイルダーにKO勝ちした中国の巨人・張志磊

Ⓒゲッティイメージズ

元暫定王者・張志磊がサウジアラビアで5回KO勝利

プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)が6日(日本時間7日)、米ニューヨークで行われた全米ボクシング記者協会(BWAA)選出の2023年MVP(シュガー・レイ・ロビンソン賞)授賞式に出席した。

アメリカの大手プロモート会社トップランクのボブ・アラム氏ら世界のボクシング界を代表する豪華メンバーが集まった会場で、井上は堂々のスピーチ。重量級人気の高いアメリカで、日本の軽量級ボクサーが「最強」と認められたことがSNSでも大きな話題になっている。

一方、同じアジアのボクサーがサウジアラビアのリングで脚光を浴びた。元WBOヘビー級暫定王者・張志磊(41=中国)が、かつてWBCヘビー級王座を10度防衛した元王者デオンテイ・ワイルダー(38=アメリカ)と6月1日(日本時間2日)に12回戦を行い、5回KO勝ちしたのだ。

ともに身長201センチで2008年北京五輪のメダリスト(張はスーパーヘビー級銀メダル、ワイルダーはヘビー級銅メダル)。しかし、97.34キロのワイルダーに対し、張は128.28キロと30キロ以上の体重差があった。

試合は序盤から巨漢サウスポーの張が距離を詰めてプレッシャーをかける展開。5回、ワイルダーの右ストレートに合わせた張の右フックが顔面を捉え、ワイルダーがフラフラと半回転したところに張がトドメの右フックでダウンを奪った。

ワイルダーは辛くも立ち上がったもののレフェリーはストップ。ヘビー級で一時代を築いた38歳の元王者は、2020年2月にタイソン・フューリー(イギリス)に7回TKOで初黒星を喫して以来5戦して4敗目となり、通算成績は43勝(42KO)4敗1分となった。

逆に41歳の張は会心のKO勝利で世界戦線に生き残った。現在WBO2位、IBF8位、WBC9位にランクされており、戦績を27勝(22KO)2敗1分に伸ばした。

いずれは日本でも世界ヘビー級王者が誕生?

かつてヘビー級は「アメリカ1強時代」が長く続いた。

現在も世界記録の25度防衛に成功したジョー・ルイス、49戦全勝(43KO)と無敗のまま引退したロッキー・マルシアノ、「ザ・グレイテスト」モハメド・アリ、45歳で世界王座に返り咲いたジョージ・フォアマン、「鉄人」マイク・タイソン、タイソンと死闘を繰り広げたイベンダー・ホリフィールドらほとんどがアメリカのボクサーだ。

1990年代以降はレノックス・ルイス、タイソン・フューリーらのイギリス勢、ウラジミール・クリチコやビタリ・クリチコ、オレクサンドル・ウシクらのウクライナ勢もベルトを巻いた。ナイジェリアのサミュエル・ピーターやニュージーランドのジョセフ・パーカーらアフリカ、オセアニアからも世界ヘビー級王者は誕生している。

体格面でハンデを背負うアジアだけはヘビー級不毛の地だったが、ついにヘビー級のベルトを巻いたのが張志磊だ。「暫定」とはいえ、世界王座に就いたことには変わりない。そう遠くない未来に、その波は日本にも来るだろう。

最近では日本人の父とブラジル人の母の間に生まれた但馬ミツロ(29=KWORLD3)が世界ヘビー級王者を目指すとして売り出されていたが、3月に11戦目で初黒星を喫した。

やはり層の薄いアジアでヘビー級選手を育成するのは容易ではないが、大谷翔平のような身長190センチを超える身体能力の高いアスリートがボクシングに取り組めば、決しては不可能ではないはず。今回の張のKO勝利はそれを証明している。

張がワイルダーを倒したサウジアラビアは、井上尚弥の試合開催地としても候補に挙がる。最近は潤沢なオイルマネーで世界のビッグマッチを誘致しており、モンスターがリングに上がる可能性もあるだろう。

さらにその先には、日本人のヘビー級ボクサーが世界戦のリングに上がる日が来るかもしれない。それは決して夢物語ではない。



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