「あいつは誰だ?」な34歳 加藤俊英の初賞金はグミを箱買い

遅咲きの34歳(撮影/高藪望)

◇国内メジャー◇BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ 2日目(7日)◇宍戸ヒルズCC西コース(茨城)◇7430yd(パー71)◇

レギュラーツアー7試合目の34歳が、「68」で回って5位で予選通過を果たした。「“あいつは誰だ”って、なるんでしょうね」。初めて迎える週末を前に、加藤俊英の頬が緩んだ。

ツアー5勝のレフティ・羽川豊を叔父に持ちながら、「名前が羽川じゃないので」と選手の間でも意外とその事実は知られていない。幼いころは遊びでゴルフをやっていたが、「基礎体力をつけろ」と叔父に言われて中学までは野球部に所属。高校から本格的にゴルフを始めたが、卒業後はツアーに帯同するトレーナーを目指して大学に進学した。

叔父のことはあまり知られていない(撮影/高藪望)

転機が訪れたのは大学2年。ゴルフの国体で栃木県代表に選ばれ、当時「日本アマ」を制した同郷の阿部裕樹と並んでプレーしたことが自信になった。大学を中退して2011年にプロ転向したが、なかなかツアー出場のチャンスには恵まれず、近所の練習場で店番やレッスンをして生計を立てる日々だった。

2022年に初めてサードQTまで進んで、下部ABEMAツアーにフル参戦。今季はQTランク34位から、出られる試合をうかがっている。ウエーティングからの繰り上がりを待って遠方の試合に足を運んだが、出られず練習だけして帰ったことも少なくない。「現場の雰囲気やグリーンの仕上がりも、自分のプラスになっている」とめげることなくチャンスを待った。

緊張しないのも強みの一つ(撮影/高藪望)

「遅咲きですけど、もうちょっとで咲きそうだなというところ」と、ようやくチャンスが巡って来たのは今週の国内メジャー。初めて獲得する賞金の使い道は、もう決めている。

「長男坊にグミを買ってきてと言われたので、箱で買って帰ります」と笑ったが、首位と2打差で向かる週末で狙うのはもちろん優勝。「水曜には日本オープンの予選会に落ちてしまったので、優勝枠で、出られたら」。29人の初優勝者を出してきた大会で30人目を狙う。(茨城県笠間市/谷口愛純)

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