2代目BMW X3(F25)は期待通りの成長と進化を見せていた【10年ひと昔の新車】

2代目BMW X3(F25)は2010年9月のパリサロンで一般公開され、大きな関心を集めた。プレミアムミドルクラスSUVの先駆者的存在は2代目でどのように変わったのか。Motor Magazine誌では、発表後まもなくアメリカ・アトランタで行われた国際試乗会の模様をレポートしているので、その時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年12月号より)

ライバルを迎え撃つべく投入された切り札

2003年にBMWが最初のX3(E83)を送り出した時には、プレミアムミドルクラスSUVのセグメントにはライバルがほとんど存在せず、ほぼ市場を独占してしまった。

その結果、このモデルの生産を委託されたオーストリアのマグナ・シュタイヤー社のグラーツ工場は、生産が終了した2010年の8月31日までに累計61万4000台あまりを出荷するという大成功となった。

しかしライバルたち、とくにドイツのプレミアムブランドも黙っていない。その後、メルセデスはGLK、そしてアウディはQ5とその包囲網を敷いてきたのである。そしてこれらを迎え撃つのが今回、試乗会に臨んだニューX3である。

社内開発コード「F25」と言われる、初代登場から7年目にフルモデルチェンジを受けたX3のサイズは、全長4648mm(先代比+79mm)、全幅1881mm(+28mm)、全高1661mm(−13mm)、そしてホイールベース2810mm(+15mm)と長く、そして幅広くなっている。

これはライバル勢に対する優位性を保つということもあるが、自社内にX1という弟分が新たに誕生したので、明らかな差別化を図ろうという意図も備わっている。

デザインは旧型の面影、というかBMWのアイコンは当然すべて残る。だがよく見ると、細部はだいぶ変わった。たとえばフロント部分はキドニーグリルがやや大型化され、両脇のヘッドライトは斜めに切れ上がっている。またその下に続くバンパーやエアインテークの形状もスッキリしたデザインになっている。

また、「継ぎ接ぎのように要素が多すぎてまとまりがない」とまで言われていたリアエンドは、スッキリとしたゲートに置き変わった。

しかし、エクステリアよりも大きく成長したのはインテリアである。まず広々としたキャビンに、やや高めのドライビングポジションをとり周囲を見渡すと、プラスチック感が強く荒削りだった旧型のイメージは消え失せ、代わって新しく典型的なBMWデザインが誕生している。

太めのステアリングホイールを通して、正面には大径のスピードメーターとタコメーター、そしてその両脇には燃料計と水温計が並ぶ。またナビゲーション画面は8.8インチに大型化してダッシュボード中央にレイアウト。幅広いセンターコンソールには、電子制御8速ATのセレクター、そしてiDriveコントローラーが贅沢に並んでいる。

エンジンは2種類が発表された。xDrive35iが搭載するのは、最高出力306ps/最大トルク400Nmの3L直列6気筒ツインパワーターボエンジン。このモデルは8速ATとの組み合わせで、0→100km/h加速が5.7秒、最高速度は245km/hと発表されている。

そして欧州でのエントリーモデルとなるxDrive20dには、最高出力184ps/最大トルク380Nmを発生する2L直列4気筒ディーゼルターボが搭載される。こちらのダイナミック性能は、それぞれ6.9秒と210km/hとなる。

X1とX5の間に位置するポジションニングを、そのスタイリングやボディサイズなどでうまくアピールする。X1の気軽さも魅力だが、新型X3の十分な余裕度もいい。

滑らかな走り味と乗り心地、ダイナミック性能も十分

アメリカのアトランタで行われた試乗会で筆者が選択したのは、もちろんガソリン仕様のxDrive35iである。

標準装備の8速ATは非常に滑らかで、しかもピックアップも良い。シフトチェンジのショックは、低速域ではほとんどわからないほどだ。

またこのX3は、ATモデルでも信号待ちなどでアイドリングストップを行う。背の高く厳ついSUVを街乗りするときの後ろめたさは、これでかなり解消できる。

初代X3で批判の集中した硬い乗り心地(とくに後席での)は、確実に改良されており、アトランタ市内の悪路でも、郊外のやや荒れたカントリーロードでも終始リムジンのような快適さを提供してくれていた。これならば、後席に子供や義母を招待して、改めて家族ドライブを計画することができそうだ。

BMWのSUV(同社ではSAV、スポーツアクティビティビークルと呼ぶ)に対しては、どうしてもダイナミックなドライブ性能を要求したくなる。そんな時には、オプションで用意される電子制御式可変ダンパーDDC(ダイナミックダンパーコントロール)を装着すると良い。これで「ノーマル」「スポーツ」そして「スポーツ・プラス(+)」と3段階のダンパーセッティング、それに合わせたエンジンレスポンスやパワーステアリングの設定、DSC(ダイナミックスタビリティコントロール)の制御に変更されるので、よりホットなドライビングを楽しむこともできる。

この新しいX3は、早ければ来年早々にも日本へ上陸する予定であるという。だが、正確な装備、そして価格については、現時点でまだ発表されていない。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)

現行BMWモデルラインナップのデザインキーに加えて、より立体的に感じられる仕上げも加えられた印象を受けるインテリア。

BMW X3 xDrive35i 主要諸元

●全長×全幅×全高:4648×1881×1661mm
●ホイールベース:2810mm
●車両重量:1880kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:225kW(306ps)/5800rpm
●最大トルク:400Nm/1300rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:245km/h
●0→100km/h加速:5.7秒
※EU準拠

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