お父さん、生きているうちに実家を取り壊して…年収500万円のサラリーマンに嫁いだ〈40代のひとり娘〉、70代父に「必死の懇願」のワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

厳しい家計運営が続くなか、いきなりの大逆転! このようなことが起きるのが相続です。持ち家率の高い日本では「実家を相続」→「売却」という流れで、一気に家計が潤うということも珍しくはありません。ただし、すべてがすべて、という話ではなく……みていきましょう。

実家の相続…誰もが「ほしい!」わけではない

止まらない物価高、上がらない給与。さらに将来的には老後生活のベースとなる年金も減額。国に頼られても暮らしていけないので、老後の生活を見据えて自助努力が必須になっています。もはや一般人は逆転ホームランなんて夢のまた夢……唯一、「親の遺産を相続」というタイミングで逆転できるかもしれません。

総務省統計局『令和5年 住宅・土地統計調査』によると、日本の持ち家率は61.1%。住宅総数4,960万戸ほどなので持ち家は3,032万戸ほど。つまり、万が一のときに相続対象となる実家/不動産がそれだけあるということ。

――貯金はないけど、実家(=不動産)はある

そういうケースは多いでしょう。「実家を相続し売却」→「人生、逆転!」というシナリオです。もちろん、相続の際に一番揉め事の原因になるのも分割しにくい不動産。ひとつの不動産に対して相続人は複数名いる場合は、揉めないはずがありません。兄は「思い入れのある実家を売りたくない」と主張し、弟は「売却して等分を」と主張、話は平行線のまま決着つかず……というパターンです。人生逆転の可能性を秘めつつ万能ではない、といったところでしょうか。

また「実家を相続したくない!」と、相続放棄を選ぶケースも多いようです。一般社団法人あんしん解体業者認定協会が実家の相続を放棄したいと思っている人を対象に行った調査によると、実家を相続したくない理由として最多となったのは「相続・相続後にコストがかかる」で21.4%。続いて「資産価値が低い」で19.4%。

【実家の相続を放棄したい理由】

1位「相続・相続後にコストがかかる」

2位「資産価値が低い」

3位「管理が難しい」

4位「相続手続きが面倒」

5位「住むつもりがない」

6位「家族と疎遠・関わりたくない」

7位「兄弟・親族間で揉めたくない」

8位「借金がある・ありそう」

どうやら必ずしも「実家を相続し売却」→「人生、逆転!」というシナリオを描けるとは限らないようです。

ひとり暮らしの70代父、相続が発生したら実家は…

実家の状態はそれぞれで、いい話ばかりではない……「建物が古くて、資産価値もほとんどないと思うんです」というのは40代女性。ひとり暮らしの父は70代後半で、終活の話も最近はチラホラ。実家の相続についても話が及んだといいます。女性に兄弟姉妹はなし。万が一の場合は、遺産のすべてが女性に相続されます。

――とはいっても、遺産と呼べるものは実家くらいしかない

――父は「この家(実家)だけでも残すことができるから良かった」と言っているけど

――私も持ち家なので、自分たちが住むということはない

――建物は古く相続しても大変そう

最近は空き家対策が強化され管理不足だと罰則もありえます。そこで今後は実家の解体も視野に相続を考えるべき、という専門家も。

国土交通省『建築物滅失統計調査』によると、住宅の除去件数は、令和4年度で10万4,796件。過去をみても、「平成30年度」10万8,435件→「令和元年度」10万3,765件→「令和2年度」9万6,780件→「令和3年度」10万7,272件と、だいたい10万件前後で住宅は解体。空き家対策強化により、今後、その数は増えていくといわれているのです。

40代女性の夫は年収500万円ほど。女性の収入と合わせると700万円弱だとか。住宅ローン返済の負担もなかなかのものというので、プラスになるのであれば実家は残して……というのが本音でしょうか。ただ住むことのない実家、しかも築年数が古い。「古家付き土地」は価格が相場より低くなったり、買い手が付きにくい場合が多く、解体も視野にいれなければなりません。

しかしそこにも昨今の物価高の影響が。国土交通省の資料によると、1坪あたりの解体費用は関東で3.7万円。50坪であれば175万円ほどかかります。ただこれは5年ほど前の資料によるもの。昨今の相場は、この2倍以上になっているとか。「実家の解体費用」>「土地の売却額」となり、実家を相続したほうがマイナスというケースも。

女性の場合も、いろいろと考えていけばいくほど、実家を相続した際にマイナスになる公算が高くなってきたといいます。

――お父さん、実家は生きているうちに取り壊してくれるかな(または解体費用を用意しておいて)

もちろん、そう直接的に伝えるわけではありませんが、遠回しに「実家をそのまま相続されても困る」と必死に訴えているといいます。

[参考資料]

一般社団法人あんしん解体業者認定協会『実家の相続を放棄したい理由ランキング』

国土交通省『建築物滅失統計調査』

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