ベストナイン獲得の慶大・清原正吾が今春に得たものとは 家族へ、仲間へ、強い「恩返し」の思い 父・和博氏の打撃参考に

 東京六大学野球の春季リーグでベストナインに選ばれた慶大・清原正吾

 2日に東京六大学野球の春季リーグ全日程が終了した。注目を集めた選手の一人が慶大・清原正吾内野手(4年・慶応)だ。西武、巨人などで活躍した和博氏(56)の長男。大学から硬式野球を始めた異色の経歴ながら4番を任され、ベストナインを獲得するまでに成長した今春を振り返る。その中で得たものとは-。

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 「4番・ファースト、清原くん」。神宮に響くアナウンスに心躍る野球ファンもいただろう。

 今春は全13試合に先発出場し、最終戦の早大2回戦で3番に入るまでは全試合で4番を任された。打率・269はリーグ14位ながら、チーム内では7打点とともにトップの数字。本塁打こそ0本に終わったが、二塁打はリーグ1位タイの5本を記録した。昨年までリーグ戦通算9打席1安打。昨秋はベンチ外も経験したが、確かな成長を遂げた。

 東大との開幕戦でリーグ戦初打点となる先制V二塁打を放つと、そこから4戦連続安打をマーク。開幕前に左手小指を負傷したことがきっかけでバットを指1本分短く持ったことも奏功した。「父親もあんなにホームラン打ってますけど、短く持ったりしていた」と和博氏の打撃も参考にしたことを明かしている。

 1日の早大1回戦では、打ちたい気持ちからかボール球に手を出す場面も目立ったが、翌2回戦では2安打1打点と復調。「自分の中にとどめておきたい」と詳細は明かさなかったが、「甘い球を仕留め切れていなかったのでメンタルの方で修正して、技術面も微調整しました」と語った。

 堀井哲也監督(62)は「どんな状況でも練習をやりこんで野球に対する姿勢が変わらなかった」と評価し、「清原の4番は欠かせない」と信頼を置いた。清原自身も「納得がいくまでバットを振り込んできた」と自負。「別にプライドも何もないので。後輩からも技術を教わったりしていますし」。貪欲な姿勢と練習量により、自身を俯瞰(ふかん)的に見て課題に冷静に対処している。

 小学校時代に軟式のオール麻布でプレーしたが、中学はバレーボール部、高校はアメリカンフットボール部に所属。異色の経歴を見れば、今春の結果にすごみが増す。「最初は全体練習でミスしても『6年間、やってないから』と怒られない。そんな自分が許せなくて」。厳しい姿勢でトップを目指してきた意義も語っている。「大学の野球教室とかで、親御さんから『いろんなスポーツをやらせたい』とご相談を受けるんです。僕が第一人者として証明できたら」。今春は一塁手で自身初のベストナインを獲得。プロ入りも狙う中、可能性を示し続けた。

 この春「得たもの」を問われると、こう答えた。「この舞台で野球ができているありがたさです」。「恩返ししたい」という家族のため、「支えてくれた」仲間のため、神宮のグラウンドに立ち続けたことは、何よりの収穫だった。「自分の結果に満足はしていません。優勝もできなかったので、チームが勝てる打撃、守備、走塁を心がけて取り組みたい」。まだ成長の過程。勝負のラストイヤーに全力を注ぎ、無限の可能性を解き放つ。(デイリースポーツ・間宮涼)

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