高田梅不作「50年で最悪」 「100年フード」に選ばれたのに… PR、出ばなくじかれる 福島県会津美里町

収穫作業初日に、実がほとんど付いていない梅の木を確認する星正之さん=7日午後

 福島県会津美里町特産の「高田梅」は実の付きが悪く、今年の収穫量が大幅に減る可能性が出てきた。JA会津よつばと県は実態を調査し現段階で「不作」と評価する。中には例年の1割ほどに落ち込むとみる農家もおり、生産意欲の低下につながらないかと関係者は心配する。収穫が本格化するのはこれから。高田梅は3月に文化庁の「100年フード」に選ばれ、地域を挙げて一層の認知度向上も取り組もうとしていただけに、出ばなをくじかれた形だ。

■寒暖差、受粉に影響か

 例年なら「鈴なり」なのに、今年はまばら。「これほど実が少ないのは珍しい」。7日に収穫を始めた会津美里町上戸原地区の生産者星正之さん(59)=星農園代表=は肩を落とす。中には数個しか実が付いていない木も…。収量は例年の3分の1程度と厳しい予想を立てている。ただ、大きさや品質は良好という。

 JA会津よつば美里営農経済センターと県会津坂下農業普及所は5月末、管内で収量の多い農家5軒の畑で実の数を調べた。主要産地の町内松岸地区では実が極端に少ない状況だという。同地区の星次男さん(72)は「50年ほど栽培しているが最悪の状況。実がほとんどないのは初めてだ。1キロ採るのも苦労する」とため息をつく。

 JAの近年の市場への出荷量を見ると2019年度は4.9トン、2020年度は3.1トン、2021年度は6.4トン、2022年度は5.7トン、2023年度は5.8トンと、波はあるものの3~6トンで推移してきた。JA担当者は「今期は昨年度の半分以下になるのも避けられない」とする。

 今年は地域の食文化をPRする「100年フード」に高田梅が認定されて最初の年だ。町を挙げて「宝」をさらに磨き上げ、活性化の起爆剤として魅力発信に力を入れる考えだった。15日に開幕する町の一大イベント「あやめ祭り」にブースを出し、高田梅を販売したり梅を使った料理のレシピを紹介したりする計画だったが断念した。町内の伊東種苗・人形店は、個人客への発送注文を例年1カ月近く受け付けていたが上限に達したため、今季は5日間ほどで終了した。「不作はとても残念」。町産業振興課の担当者はぽつりとつぶやく。

 県会津坂下農業普及所は、冬から春にかけて寒暖差が大きく受粉がうまくいかなかったことや一部地域での霜害、強風、樹勢の衰えといった要因が重なり、不作につながったと推測する。普及所の担当者は「気候変動の影響で、近年は栽培管理が難しくなっている」とする。JAは来年以降を見据え、肥料の適切なまき方などを検討していく必要性を指摘した。

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