【復興臨時支局・新地町編】旧公民館、アート施設に 駒ケ嶺交流や学びの新拠点 故横山孝雄さんの原画収蔵

分館で横山さんの作品を眺める大須賀さん

 福島県新地町は東日本大震災の影響を受けた旧駒ケ嶺公民館を芸術作品を展示する分館として改修し、5月に開館した。現在、展示環境は未整備だが、町出身の元漫画家で赤塚不二夫さんのアシスタントなどとして活動した横山孝雄さん(故人)の原画や資料を貯蔵している。町は施設をアート関連事業に活用して、新たな交流を生み、学びを得る拠点として役割を見込む。

 旧公民館に隣接する体育館が震災の地震による影響を受けた。付近に再建し、旧公民館部分の活用策を模索していた。町内各施設で管理していた文化資料を集め、保管する場所として昨年度改修した。

 展示スペースは未整備だが、町にゆかりのある画家の作品を収蔵する。昨年、町に寄付された横山さんの原画や資料も眠る。横山さんは赤塚さんをはじめ、漫画界の巨匠が暮らしたアパート「トキワ荘」に通っており、親交があった数々の漫画家とのやりとりを記した手紙が残る。町によると、東北大が調査し、歴史的な価値などを調べているという。

 横山さんは「アイヌ神謡集(しんようしゅう)」で知られる知里幸恵さんのめいに当たる女性と結婚し、北海道に移住した。アイヌ民族や民話を題材にした漫画や本を制作しており、アイヌ関連の資料も多く残る。

 町は3村合併70周年の記念事業としてアート関連イベントを展開する。作品展示やモニターツアーで学生を招き、町を表現した作品を制作してもらう予定だ。分館を会場の一つとして芸術の発信、住民の交流拠点として活用を見込む。

 分館の管理人で町郷土史研究会の大須賀昇会長は「交流を楽しんでもらいながら、新地にこんな人がいたんだと誇りに思うきっかけになってほしい」と話す。分館の開館日程は不定。問い合わせは町教育総務課へ。

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