田中俊介、須賀健太、矢部昌暉ら出演 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』9月15日より開幕

東京芸術劇場Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』のスウィング含む全キャスト、日程、料金情報が発表された。

2006年に京都で活動を開始し、数々の古典作品を現代劇化してきた木ノ下歌舞伎(通称:キノカブ)。監修・補綴の木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)、演出・美術の杉原邦生により、シアターイーストにて長期公演を行った「東京芸術祭 2023」参加作品、木ノ下歌舞伎『勧進帳』は東京ほか全国6都市で好評を博した。

そんなキノカブ版『三人吉三』は、2014年に初演、翌年、東京芸術劇場が若手演劇団体と提携して公演を行う“芸劇 eyes 公演”としてシアターウエストに初登場し、読売演劇大賞2015年上半期作品賞部門のベスト5に選出。数奇な運命に翻弄されながら疾走する、和尚、お坊、お嬢という“三人の吉三郎”の物語と、現行歌舞伎ではカットされている、商人と花魁の恋をめぐる廓の物語がダイナミックに交錯する群像劇となっている。

9年ぶりの再演となる本作は、作品タイトルを演目の本外題である『三人吉三廓初買』に改めたもの。初演以来約160年ぶりの上演となった「地獄の場」を完全復活するなど、今や幻となった黙阿弥オリジナル版の全貌を見られるのはキノカブ版のみとなっている。

江戸時代。刀鑑定家・安森源次兵衛の家は、何者かにお上の宝刀・庚申丸を盗まれて断絶となっていた。ある時、立身出世を目論む釜屋武兵衛は、巡り巡って木屋(刀剣商)文里のもとにあった庚申丸を金百両で手に入れる。しかし文里の使用人・十三郎は、その取引の帰り道、夜鷹(街娼)・おとせと出会い、受け取った百両を紛失。思いがけず百両を手にしたおとせだったが、十三郎を探す道すがら、女装の盗賊・お嬢吉三に百両を奪われてしまう。様子を見ていた安森家浪人・お坊吉三は、お嬢吉三と百両を巡って争うが、そこに元坊主・和尚吉三が現れる。彼がその場で争いを収めたことで、三人は義兄弟の契りを結ぶ。また、失意の十三郎は、川に身投げしようとしたところを、和尚吉三の父・伝吉に拾われていた。訪れた伝吉の家で、彼はおとせと再会し……。一方、吉原の座敷では、文里がお坊吉三の妹で花魁・一重に想いを寄せていた。人柄で評判の文里だったが、彼には妻子があった。文里の求愛を一重が拒みつづけていたある日、文里は、ある決意を座敷で語りはじめる。

物語の中心となる、同じ「吉三郎」の名をもつ3人の若者の中の兄貴分・和尚吉三を演じるのは、2024年2月にプレイハウスで上演した『インヘリタンス』に出演した田中俊介。血気盛んなお坊吉三役には須賀健太、女装の盗賊・お嬢吉三役には矢部昌暉が名を連ねている。

そして、和尚吉三の父親・伝吉役を川平慈英、もう一つのストーリーラインを動かすお坊吉三の妹・花魁一重役を藤野涼子、一重に恋する商人・文里役を眞島秀和、文里の女房・おしづ役を緒川たまき、「吉三郎」の物語と「廓話」の物語の両方をつなぐキーマン・ 十三郎役を小日向星一、十三郎と巡り逢うおとせ役をオーディションで抜擢された深沢萌華がそれぞれ演じる。

そのほか、木ノ下歌舞伎や杉原邦生演出作品を支える武谷公雄、高山のえみ、山口航太、武居卓、田中佑弥、緑川史絵も出演する。

また、2023年に上演された『勧進帳』で好評を得た、スウィング俳優が本役として出演する「スウィング公演」の試みの実施が今回も予定されている。

■木ノ下裕一(監修・補綴)コメント
日本文化の上澄みだけを掬い出して“美しい国”をアピールする昨今の風潮においては、歌舞伎もまたはその道具の一つにすぎないのかもしれません。しかし、江戸情緒を謳い上げた歌舞伎作者と目されている河竹黙阿弥の会心の作『三人吉三』は、幕末という時代の転換期の光と闇を包み隠さず描き切ったショッキングな作品でした。震災(安政の大地震)や疫病(コレラ)の大流行という受け止め難い現実に対して、死んだ者と生きる者へ万感の愛惜を込めて筆を握り、立ち向かった黙阿弥のパッションを現代に蘇らせたいと思っています。
(文=リアルサウンド編集部)

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