河合優実、実在する人物モデルの難役に葛藤も…監督からの手紙に救われる

難しいキャラクターに挑んだ河合優実

俳優の河合優実が8日、都内で行われた映画『あんのこと』(全国公開中)の公開記念舞台あいさつに出席。実在する人物をモデルにした難役に挑むにあたって、メガホンを取った入江悠監督から映画に関する手紙を受け取っていたことを明かした。

本作は、世界的パンデミックが起きた2020年のある日の新聞記事に着想を得て撮り上げた人間ドラマ。機能不全の家庭に育ちすさんだ生活を送る少女が、ある出会いをきっかけに生きる希望を見いだそうとする中、非情な現実に翻弄(ほんろう)されるさまを描く。この日は河合と入江悠監督のほか、共演者の佐藤二朗稲垣吾郎も登壇した。

どん底の境遇から抜け出そうともがく主人公・香川杏を演じた河合は「この映画は一つの新聞記事から作られた作品。そこで取材されていた(モデルとなった)方に想いをはせることから撮影を始めた」と撮影前の心境をしみじみと回顧する。

そんな河合に入江監督は、こう演じて欲しいという思いをつづった手紙を送っていたという。入江監督は「佐藤さんと稲垣さんには、手紙というものは渡していなかったんです。自分は男兄弟で育ったので、佐藤さんと稲垣さんにはなんでも話しやすかった。でも、女性である河合さんには、役どころとか、演技の深い部分を『喫茶店で喋りましょう』みたいなことはしにくかった」とその理由を明かす。「思っていることを手紙に書いたんです。結構推敲をしました。パソコンで実在の人にどう向き合うとかを書きました」とその内容も紹介する。

河合はセンシティブな実在の人物を演じるにあたって、この手紙に救われたと述べ、「言葉で伝えるのが難しいこと、どういう心算で撮影をするとか、そういうセンシティブなことを言葉を選んで書いてくれているのが伝わりました。自分の思いを爆発させた手紙ではなく、どういうふうに映画を作っていこうかを書かれた内容で、それを受け取って嬉しかったです」と告白。「迷った時にそのお手紙に立ち返るような、指針をいただいたような心境でした。それを伝えなかったら後悔するだろうという監督の立場を理解できました」と感想を述べていた。

河合は「昨日別の作品の撮影をしている時、車の中でこの映画の感想を読んでいました」とも明かし、「決して簡単な仕事ではなかったし、実在の方を映画にするということに、怖さや恐れもありました。いろんなことを考えて撮影をしていましたが、みなさんが語る感想を見て別の気持ちになれたりしました。真剣にこの映画を見てくださっているのが伝わってすごく嬉しかったです」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)

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