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「機動戦士ガンダム」や「虹色のトロツキー」などの作品で知られるカリスマアニメーターにして稀代の漫画家である安彦良和さんの大規模回顧展「描く人、安彦良和」が6月8日、兵庫県立美術館で始まった。アニメの設定図や目を見張るほど美しいカラー原画、漫画原稿など、およそ1400点もの膨大な資料を6章に分けて展示。幼少期から76歳の現在に至るまで尽きることを知らない怒涛の創作活動の軌跡を辿ることができるとあって、初日から多くのファンで賑わっている。
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開幕に先立ち、関係者やメディアを集めて行われた7日の内覧会で挨拶に立った安彦さん。「漫画は今の中学生の方が上手いですよ。私は勉強したくないから描いていただけ」と終始謙遜の姿勢を崩さず、学生時代に描いたという漫画作品についても「昔の“迷い心”の産物だと思って、温かい目で見ていただければ」と話すと、恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
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安彦さんは1947年、北海道遠軽町で開拓民3世として誕生。66年、弘前大学に入学するが、学生運動に参加したことから除籍となって上京し、アニメーターの道へ。「機動戦士ガンダム」でキャラクターデザインとアニメーションディレクターを担当したほか、数々の伝説的アニメ作品に関わった。後に漫画家に転身し、「アリオン」や「ヴイナス戦記」、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」などを精力的に発表してきた。
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安彦さんは「子供の頃に漠然と『漫画家になりたい』と思っていたが、遠回りしながらもこうして夢を叶えることができた。こんなにも立派な場所で自分の残してきた長い足跡を辿っていただけるなんて、本当にありがたい。つくづく幸せな人生だと思う」と振り返り、「とはいえ所詮は“足跡”なので見苦しいものもあるかもしれない。その点は、ご容赦を」と茶目っ気たっぷりに語った。
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常に「小さき者の視点」を大切に、古代史、近代史から宇宙世紀まで壮大な世界を手掛けてきた安彦さん。報道陣からパレスチナ・イスラエル情勢やロシアによるウクライナ軍事侵攻など、昨今の世界情勢について考えを問われると、「善悪を決めつける傾向が強まっているのが気になる。ゼレンスキーかプーチンか、そんな二項対立の捉え方は危険だと思う」と答え、今こそあらためて「小さき者の視点」に立ち、現地で悲劇に巻き込まれている人たちを救うにはどんな解決法があるかを探らなければならない、と祈るように言葉を紡いだ。
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2024年は「ガンダム」テレビ放映開始から45年、そして安彦さんが喜寿を迎える“メモリアル・イヤー”。それを祝して企画された「描く人、安彦良和」展は、今後巡回の予定もあるが、皮切りとなる兵庫会場が最大にして展示点数も最多だという。点数の膨大さと一点ごとのクオリティ、密度は確かに圧倒的で、同館の林洋子館長が「じっくり見て回ると、行き倒れてしまいそうになる」と表現するほど。もういっそ、行き倒れてしまいましょう。
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9月1日まで(月曜休館日)。一般1900円、大学生1000円、高校生以下無料。
詳細は「描く人、安彦良和」Xアカウント @yasuhikoten で。
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(まいどなニュース・黒川 裕生)