不動産会社の経営者が教える! キッチンでわかる「選んではいけないNG物件」

NG1 家事導線に沿っていない収納

キッチンの収納スペースはどのくらい必要だと思いますか? お客様からよく「できるだけたくさんほしい」という意見を聞きますが、じつは、収納が多すぎると逆に使いづらいキッチンになってしまう可能性があるので要注意です。

キッチン収納で重要なのは大容量のスペースではなく、家事導線に沿った収納スペースが適量あること。

たとえば、コンロの上部や下部など取り出しやすい場所にフライパンや鍋、調味料などの置き場があったり、作業台の近くに食器やカトラリーをしまう棚があったりすることで料理がしやすく、また片づけも楽になるのです。

コンロや作業台から離れた場所に大容量の棚や引き出しがあっても、移動するのが面倒で使わなくなり「不要なものがごちゃごちゃ入り混じった場所」になってしまう可能性大です。

「使用頻度の高いキッチン用品が取り出しやすい場所に収納できるか」という点にぜひ注目して選んでほしいです。

NG2 手が届かない吊り戸棚

たとえ狭いキッチンであっても、吊り戸棚があることで収納率が上がるため、備わっている物件が多いです。

ところが吊り戸棚の上段は、成人女性でも手が届きづらい高い場所であるため、どうしてもデッドスペースになってしまいがち。

脚立や踏み台を使えばいいけれど、わざわざそれらを運んだりしまったりするのが面倒というかたも多いのではないでしょうか?

そんなかたには、昇降式吊り戸棚がついた物件がおすすめです。

昇降式の場合、下に軽く引くだけで棚が目の前まで下りてくるので、背の高さや手の長さに関係なく、また脚立や踏み台を利用しなくても出し入れ可能。

大小さまざまなものをラクに収納することができます。

水切りタイプにすればシンク回りに水切りかごを置く必要もなく、作業台を広く使えますし、除菌乾燥タイプなど高機能タイプを選べば衛生面も安心です。

リフォームで取り着けることもできるので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?

NG3 ウォークインタイプのパントリー

パントリーとはキッチンの一部に設置、また併設される食品庫や備蓄庫の役割を持つ収納スペースのこと。

缶詰や調味料、米、ドリンクなど普段使いの食品をはじめ、災害時の備蓄、食器、日用品などをストックしておくことができる場所として人気です。

壁面に取り付ける棚タイプのパントリーが一般的。このタイプならキッチンにいながら、必要なものをすぐに取り出せて便利です。

ただしウォークインやウォークスルータイプなど、広すぎるパントリーは、「そんなにストックするものがない」「ただの物置になっている」という声を聞くこともあり、大家族や、大量にストックしておく必要がある家庭以外は、あまりおすすめではありません。

そもそもウォークインやウォークスルータイプのパントリーを設けるためには、ある程度の面積が必要となり、その分、キッチンやリビングが狭くなってしまうというデメリットもあるのです。

食品をどのくらいストックしておきたいか、そのためにはどのくらいの広さのパントリーが必要か。物件を選ぶ前に、しっかりイメージしておくことが大切です。

NG4 ゴミ箱が置きづらいキッチン

マンションを購入したあと、「ゴミ箱をキッチンのどこに置けばいいかわからない」と悩むかたが、じつはとても多いです。

間取り図を見たり、内見したりするときは見過ごしがちですが、この「ゴミ箱をどこに置くか問題」は、家事効率にも影響を与えるため、意外と見逃せないポイントだと思います。

可燃はもちろん、不燃、資源、ペットボトルなど、分類するゴミに応じ、どのくらいのサイズのゴミ箱をいくつキッチンに設置したいか、事前にイメージしておきましょう。

料理中、生ゴミが出たらその都度、サッと捨てたいもの。そのため可燃のゴミ箱は、キッチンの作業台からゴミ箱までの動線が最短となる、シンク下や作業台の下に設置するのが理想です。

またキッチンの背面収納の一部に設置するのもおすすめ。作業中、振り返るだけでラクにゴミを捨てることができるので、導線も短く、ストレスもありません。

不燃、資源、ペットボトルなど、臭いが出づらく利用頻度の低いゴミ箱については、キッチンからは少し離れますが、物置などに置くのも一手です。

ウォークインタイプのシューズクローゼットや、3で紹介したパントリーにゴミ箱を並べて、ゴミ置き場を作っているかたもいます。

家事導線の邪魔をせず、すっきりとした印象のキッチンにするために、ゴミ箱の置き場についても事前に考えておくことをおすすめします。

Information

<教えてくれた人>
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。現在、TV CMを放送中。YouTube「ことり不動産TV CM」でも視聴可能。

取材、文・髙倉ゆこ

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