鹿児島県警前生活安全部長の漏えい文書 隠蔽指示者は「前刑事部長」と記載…流出元ばれないよう「指示者名変えた。陥れる意図なく申し訳ない」 前刑事部長も関与を否定

 前鹿児島県警生活安全部長の男(60)=鹿児島市紫原5丁目=が国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕、送検された事件を巡り、漏らしたとみられる文書には「前刑事部長が事件の隠蔽を指示した」との趣旨が記されていることが8日分かった。容疑者はこれまで「野川明輝本部長が隠蔽を指示した」と主張しており、弁護人によると「本部長の隠蔽を知っているのはごく少数だったため、文書には送り主が自分だと分からないように、指示した人物の名前を変えた」と話している。

 容疑者は内部情報を書いた文書を札幌市の記者に郵送し、5月31日に逮捕された。6月5日に鹿児島簡裁であった勾留理由開示手続きでは「本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとした」と主張した。

 弁護人によると、容疑者は「漏らした情報は現職警察官の犯罪に関するもので、本部長指揮案件。警察内部に詳しい記者ならば、隠蔽を指示したのは前刑事部長ではなく本部長だとすぐ理解してもらえると思った」と話している。また「前刑事部長とほとんど接点がなく、個人的な恨みは何もない。陥れようという意図もない。申し訳なく思っている」と釈明している。

 漏らしたとされる文書には、トイレに侵入して女性を盗撮したとして逮捕、起訴された巡査部長の事件について、前刑事部長が「静観」するよう指示したとする記述があった。本部長による隠蔽指示をうかがわせる記載はなかった。

 他にも、2023年に男性警察官が、市民の情報をまとめた「巡回連絡簿」を使い、県内の女性に携帯電話で性的な内容を含むメッセージを送った可能性があるとする内容もあった。

 野川本部長は7日の報道陣の取材に「隠蔽を意図した指示は一切ない。(容疑者の主張については)動機に関することであり、なぜそのような主張をしたのか、捜査で必要な確認を行う」と答えている。

 鹿児島県警は8日夜、前生活安全部長の男(60)が漏らしたとされる文書に記載されていた前刑事部長は「静観しろと指示したことはない」と否定していると明らかにした。記者クラブの加盟社を集めた記者説明を開き、コメントを出した。

 県警によると、一連の報道を受けて本人から申し出があった。前刑事部長は「在任中、報道されている枕崎署の盗撮事件は全く知らなかった。同事件の捜査指揮に携わったことはなく、野川明輝本部長からも指示を受けたことはない。このため『静観しろ』などと指示したこともない」と説明している。

 県警は前刑事部長のコメント内容について「間違いない」とする一方、漏えいしたとされる文書の中に、前刑事部長の指示が触れられているかなどの事実関係については「答えられない」とした。

記者の前でコメントする鹿児島県警の野川明輝本部長=7日午後6時、鹿児島市の県警本部

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