【10年ひと昔の新車】スマート フォーツーはマイナーチェンジで可愛さに磨きをかけ、ターボも追加した

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、スマート フォーツーだ。

スマート フォーツー(2012年:マイナーチェンジ)

大型化されたフロントグリルやクローム加工されたブランドロゴなどで顔つきを一新、ちょっと精悍になった。

ダイムラー グループのコンパクトカー、スマートがマイナーチェンジされた。最大のトピックである、電気自動車の導入は今年(編集部註:2012年)後半の予定なので、まずは電動開閉ソフトトップを備えたカブリオで、新たに追加設定されたターボモデルに乗ってみることにした。

スマートの最初のモデルが登場したのは、思い起こせば14年前の1998年。最初に試乗したスマートは、まだスウォッチとダイムラー・ベンツの合弁会社だったMCC(マイクロ コンパクトカー)所属で、スマート・ジャパンが並行輸入扱いで導入していたものだった。

そのときは正直いって、少し大げさだが首都高を真っすぐ走るだけでも不安を感じさせるレベルだった。だが、紆余曲折の末に2007年に2代目にフルモデルチェンジ。世の中のダウンサイジング志向の波に乗り、今やすっかり人気モデルになった。もちろん、乗り味もずいぶんと進化し、今回マイナーチェンジされたモデルでは、もうすっかり「個性的ではあるけれど、普通のシティコミューター」といえるレベルにまでブラッシュアップされていた。

なんといっても、シフトレバーを「A」モードにしたままで、さほど違和感なく走ることができるようになった。シングルクラッチのAMTだけに、以前のモデルではシフトアップの瞬間にアクセルペダルを戻すといった小技を使わない限り、変速がかなりギクシャクしていたのだが、今やいわゆるトルコン式ATから乗り換えても十分に許せるレベルに進化した。ちなみにステアリングホイールにはパドルも装備されていて、これまで同様に積極的なMTモードでのドライビングも味わえる。

パドルシフト付き3スポーク ステアリングホイール、ダッシュ上のタコメーター&時計はターボに標準装備となる。

ターボモデルならパワーは十分。オープン走行も簡単に

ソフトトップを全開にし、サイドウインドー上のルーフフレームを外してフルオープン状態に。後方視界は、あまり良くない。

今回試乗したのはターボモデルだったこともあり、パワー的にも余裕たっぷり。オープンのカブリオでも870kgという軽自動車並みの車両重量も功を奏し、6速80km/hで約2000rpm、100km/hで約2600rpmとエンジン回転数も抑えられ、燃費もJC08モードで18.0km/Lと実用性も高い。静粛性を語るほど静かではないにしろ、ルーフがソフトトップの幌であることを加味したら、穏やかな気持ちで過ごせると言っていいだろう。

ちなみにルーフトップの開閉は電動で、走行中でも可能だ。フルオープンにするには、サイドウインドー上のバーを外さなければならないが、意外と軽い上にリアゲート内に収納できるので便利だ。ただしフルオープンにすると後方視界はあまり良くないので、そのあたりの注意は必要だろう。

進化したとはいっても、ホイールベースが1865mmと軽自動車よりも短いために、乗り心地がいいとは言い難いが、コーナリング性能は予想以上に高い。ツイスティな首都高でも、不安を感じることなく、けっこうなペースでコーナリングを楽しむこともできるようになった。さすがは、スマートの背後にはメルセデス・ベンツがいるだけのことはあるといえるだろう。

エアコンの風量調整が少し大雑把だったり、ブレーキは踏力が必要だったりと、特殊な面はまだまだあるけれど、それも味かな?と思わせてくれる。そんな愉しみも感じさせる、満足度の高い1台になっていた。

サイズから想像されるよりも室内のスペースは意外と狭くない。ヒーター付き本革シートはオプション設定。

●全長×全幅×全高:2740×1560×1540mm
●ホイールベース:1865mm
●車両重量:870kg
●エンジン:直3 DOHCターボ
●総排気量:999cc
●最高出力:62kW(84ps)/5250rpm
●最大トルク:120Nm(12.2㎏m)/2000ー4750rpm
●トランスミッション:5速AMT
●駆動方式:横置きRR
●燃料・タンク容量:プレミアム・33L
●JC08モード燃費:18.0km/L
●タイヤサイズ:前175/55R15、後195/50R15
●当時の車両価格(税込):219万円

© 株式会社モーターマガジン社