【何が】開帳側は70~80代の男女 夜更けの市営住宅で“違法サイコロ賭博” 94歳の女も真剣勝負…暴力団の“シノギ”も高齢化!?

暴力団などの捜査を行う大阪府警本部刑事部「捜査第四課」が、大阪市内の市営住宅の一室で開かれていた“違法賭博場”を摘発した。現行犯逮捕されたのは開帳側の79~88歳の男女3人と客の男女4人。客の中には94歳の女も含まれていた。夜更けの時間帯に知り合いだけに声をかけて行われていたという“サイコロ賭博”の実態とは―。

■大阪・日本橋の市営住宅 6畳の一室で高齢者らが“サイコロ賭博”

5月30日、電気店が立ち並び、アニメなどの“ヲタク”の聖地としても知られる大阪・日本橋の一角。

集まった捜査四課の捜査員10人は緊張感に包まれていた。彼らは、違法の賭博場を取り締まる専従班。こうしたチームが置かれているのは、東京の警視庁と大阪府警の2つしかないという。

捜査員の視線の先にあるのは、14階建ての建物。大阪市内ならどこにでもあるような、一般的な市営住宅だ。

この建物の一室からは、何かがカラカラと鳴る音が漏れ聞こえ、たまに「ドン」という音が響く。しばらくすると「よっしゃー」という歓声が聞こえていたという。

「警察や!動くな!手を挙げろ」

夜も更け始めた午後9時半ごろ。捜査員は一斉に部屋に突入したが、捜査員が目にしたのは異様な光景だった。

■客には94歳の女も…捜査関係者「至って普通のおじいちゃん・おばあちゃん」

突入の瞬間は、真剣勝負の最中で室内には張りつめた空気が流れていたという。

6畳ほどの一室の畳には、長方形の白いシーツを挟むように7人の高齢者たちが座布団に座り、シーツの上には振り台やサイコロなど賭博の道具が置かれていた。

現行犯逮捕されたのは、開帳側の3人と客の4人。

この部屋に住んでいた79歳の男は「寺師」(賭博場の開帳者)で、「合力」(進行役)として、進行や賭け金の受け渡しを行う役割だ。

この男と同居する88歳の女は「盆屋」(賭場の提供者)、近隣に住む83歳の女が実際にサイコロを回したりする「胴師」だった。客のうち2人は自営業など50代の男と女だったが、残りの2人は無職の94歳の女と89歳の男。

捜査関係者によると、94歳の女をはじめ、開帳側も客も着衣はボロボロな服などではなく、見た目は「至って普通のおじいちゃんとおばあちゃん」だったという。

ボケたりした様子もみられず、7人は抵抗することなく、その場で現行犯逮捕された。

■サイコロを振る壺は「湯呑み」 夜8時ごろから連絡をとりあって開催か

この部屋で行われていたのは「賽本(さいほん)引き」と呼ばれる日本の伝統的な賭博だ。

時代劇でも描写される「丁半賭博」は、2つのサイコロの出た目の合計が「丁(偶数)」か「半(奇数)」かに金を賭ける。

「賽本引き」でも2つのサイコロの合計を予想するのは同じだが、この部屋で行われていたのは、その中でも「4枚張り・受け」と呼ばれるもの。合計が7を超えた場合は6を引き、1~6の数字を客は予想する。客側はレートにあたる4枚の札に「1」~「6」のうち4つの数字の札を置き、出た目に応じて配当が分配され、賭けられていない数字だった場合は全額が没収されるという仕組みだ。

サイコロを振る胴師の前には、電話帳2冊分くらいの冊子が振り台として置かれ、2つのサイコロを振る壺は“湯呑み”が代用されていたが、使われていた木札は相当期間使用されたと思われる年季が入ったものだった。

賭博は、知り合いだけで連絡をとりあって開催し、夜8時ごろから日をまたぐころまで4~5時間開催されていたという。

賭けられていた金額は、1000円~1万円。部屋からサイコロなどの賭博の道具に加え、現金約170万円が押収された。

■売上金は暴力団に流れたか…“シノギ”支払う側も取り立てる側も『高齢化』

大阪府警によると、「賽本引き賭博」の検挙は2017年以来7年ぶりだったという。

大阪府警は7人の認否や、詳細な素性などを明かしていないが、開帳側には暴力団とつながっている関係者が存在し、売上金が暴力団に流れている可能性があるという。

覚せい剤などの密売やノミ行為、みかじめ料の徴収などと並び、違法賭博は伝統的な“ヤクザ”の資金源といわれているが、暴力団対策法や各自治体の暴力団排除条例が施行されるなど、反社会勢力を規制する動きが年々強まる中、“シノギ”として取り立てる側も支払う側も『高齢化』しているのが実情だ。

近年では、特殊詐欺や闇バイトといったSNSなどを駆使した組織犯罪に組員らが関与し、暴力団の貴重な資金源になっているともいわれているが、今回摘発されたように、市営住宅などを隠れ蓑にした違法賭博は、『令和』の世になった今も続いていたことが明らかになった。

大阪府警は、売上金の流れなどを調べ、実態解明を進める方針だ。

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