織田裕二、三上博史の恐怖演技も…90年代『世にも奇妙な物語』今なお語り継がれるトラウマ回

織田裕二 (C)ふたまん+

1990年にフジテレビ系で放送が始まり、今なお根強い人気を誇るドラマ『世にも奇妙な物語』。6月8日には『世にも奇妙な物語 '24 夏の特別編』として、若村麻由美さんやSixTONESのジェシーさんの出演する「追憶の洋館」や、髙橋ひかるさんが出演する谷口菜津子さんの同名漫画を映像化した「週刊 元恋人を作る」など、4つのエピソードが放送され、Xで関連ワードがトレンド入りを果たした。

これまで500話以上の物語が放送されてきた中で、とりわけ人気なのがホラージャンルの作品だ。矢田亜希子さんが出演した2000年公開の『世にも奇妙な物語 映画の特別編』の「雪山」を筆頭に、同番組のホラーはトラウマものの怖さで反響を呼び、今なおファンの間で語り継がれている。

そこで今回は、数あるエピソードの中から番組初期の90年代に放送されたトラウマ回を振り返ってみよう。

■終わらない地獄に背筋が凍る「懲役30日」

まずは、20年以上たった今でも視聴者にトラウマを残している、1998年放送の「懲役30日」を振り返りたい。舞台は、死刑制度が無くなった近未来の日本だ。

あるとき、三上博史さん演じる殺人犯が逮捕される。7人を殺したにも関わらず判決は懲役30日と軽く、男は意気揚々と身体検査と注射を受けて眠りにつき、翌日から刑務所生活が始まる。

刑務所では拷問を受け、その拷問も炎天下の中鉄板の上に縛り付けられるという過酷を極めたものだった。さらに靴を脱がされ、焼けた肌に塩を塗られ、濡れた革ひもで首を締められたりもした。しかし男は、”懲役30日”を希望に耐え抜く。

だが迎えた最終日、突如電気椅子にかけられてしまう。死刑は法律で禁止されているはずだと言う男に、看守は「懲役30日というのは死刑のことなんだよ。常識で考えてみろよ、7人も殺しておいてどうして30日の懲役ですむんだ」と言い放ち、刑を執行するのだった。

目を覚ますとそこは注射を打たれたベッドの上。安堵した男に告げられたのは「入所から5分しか経っていない」という事実だった。実は、注射で眠らされ、男は5分間で30日分の仮想現実を体験をしていたのだ。男の刑期は残り29日と23時間55分、5分ごとに注射を打たれ720年分の拷問を受けることとなる。

無限のように長い「720年」というワードが、このエピソードの底知れぬ恐怖を強めていた。

■ホラー映画『感染』の元ネタ!衝撃展開に鳥肌展開の「急患」

未知のウイルスによる恐怖を描いたのは、1991年放送の「急患」。ジャパニーズホラーの名匠・落合正幸監督による演出回であり、2004年の映画『感染』の元になった作品でもある。

主人公は、近藤真彦さんが演じる医者の七沢治郎で、ある晩の宿直中に、見たことのない症状の急患が運びこまれるというもの。

七沢は、佐野史郎さん演じる森忠幸医師とともに未知の症例を調べるが、「緑の液体を流して死ぬ」「死んでいるのに笑いかけてくる」といった事例に恐怖を覚える。そして患者が消え、謎の感染が広まり、院内の看護師が次々と緑の液体を垂れ流して死に、ついには森も患者の幻覚を見ながら死んでしまった。このときの佐野さんの演技がとにかく怖い。

七沢は自らの指を切り、赤い血を見て感染していないことを確認するも、死者が見えだし叫んでしまう。目が覚めるとそこは医務室。あの晩と同じように急患が運ばれ、緑の液体がないことに安堵したそのとき、顔が溶けた森が起き上がる。

次の瞬間、赤い血を確認した場面にリンクし、赤い血が流れていた手からは緑の液体が……。七沢はすでに感染していて幻覚を見ていたのだった。

全編を通して不穏な空気感が満ちていたこのエピソード。謎が一つも明かされずに終わるモヤモヤ感が、気持ち悪さを倍増させていた。

■避けられない無慈悲な結末にゾクゾク…「ロッカー」

1990年に放送された織田裕二さん主演の「ロッカー」も、後味が悪いトラウマエピソードだ。

織田さんが演じるのは産業スパイの悟。あるとき悟は、新型バイオセンサーの設計図を盗もうと、とある研究所に潜入したところ段田安則さん演じる研究員・佐口邦夫ともみ合いになり、彼を殺してしまう。

とっさに扉が開いていたロッカーに隠れた悟は、佐口の死体を見つけた警備員が警察を呼びに行った隙に逃げ出そうとするが、ロッカーが開かなくなってしまう。そしてすぐに警察が来て現場検証が始まる。

息を潜める悟の目に飛び込んできたのは、薄気味悪い笑みを浮かべてこちらを見る佐口の遺体。このときの段田さんの表情にゾクゾクしたという人も多いだろう。さらにロッカーの中には佐口の写真があり、そこが佐口のものだったのだと判明する。

警察が怪しみだした瞬間、業者が「廃棄処分のロッカーはこれか?」と乱入し、悟の入ったロッカーを運び出した。外に出られて安堵する悟だが、行き先はスクラップ工場。気づいて助けを求めるも声は届かず、無惨にもぺちゃんこにされてしまう。

だが、次の瞬間悟はロッカーの中で目覚めた。ほっとしたのも束の間、ロッカーはクレーンに持ち上げられスクラップ機にかけられる。先ほど見た夢と同様に必死で叫ぶも声は遮られ、今度こそ真上から潰されてしまった。

狭いロッカーと迫りくる重機、張り付いた笑顔で見つめる写真の佐口。一つ一つの描写が怖く、思わず汗ばんでしまうエピソードだった。

■呪いの泣き人形…和風ホラーの「見たら最期」

1992年に放送された「見たら最期」は、オーソドックスなホラー作品。「見た者が死ぬ呪いの〇〇」というのは、ジャパニーズホラーファンにはたまらない設定だ。

筧利夫さん演じるテレビ局のディレクター・杉山は、心霊番組の撮影で、「人に見せてはいけない」と言い伝えられる“泣き人形”の取材をする。撮影が終わり一同が映像を確認すると、女性の後ろにおかっぱの少女が映っていた。

そこに電話が入り、同行した心霊研究家の死が告げられる。これを機に撮影に関わったスタッフ、女性が次々と謎の死を遂げていく。杉山は人形を見た人間が死ぬと気づき放送中止を訴えるが、プロデューサーは受け入れない。

今度は編集室でスタッフが泡を吹いて倒れ、駆けつけると部屋にあるすべてのモニターに少女の顔が……。映像で呪いが広がると確信した杉山は、VTRを奪って女性ディレクターの車に飛び乗り局を出る。

車内で女性が「あなたと乗ってきた女の子は誰?」と聞くので、杉山が振り向くと、そこにはあの少女が乗っていた。少女に気を取られた女性は運転を誤り、2人はそのまま事故死してしまう。

注目はラストシーン。タモリさんが局員に「もう他に見た人はいないのか」と問うと、局員が「それが……他にもいるんです。数えきれないほど」と耳打ちするのだ。つまり、視聴者が見たということ。この時代の視聴者巻き込み型ホラーは斬新だ。

また、人形の封印を解いた瞬間から少女が映像のあちこちに登場するのだが、この演出も手が込んでいて恐ろしい。

今はなかなか再放送もされなくなっているが、やはり90年代の『世にも奇妙な物語』はゾクゾクするような名エピソードぞろいである。友人とお気に入りの懐かしエピソードを語り合うのも楽しいだろう。

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