止まらぬ物価高騰とコスト高。今注目される企業の姿勢と「パートナーシップ構築宣言」

 物価・エネルギー価格の高騰が止まらない。2021年から続く、原油や天然ガス等の世界規模のエネルギー価格の高騰に加え、日本では記録的な円安の影響も甚大で物価の高騰が加速しており、消費者は悲鳴を上げている。これに対し、大手企業では春闘満額回答や、政府も所得税減税を6/1から実施するなどの対策を講じている。

 財務省が今年3月から4月にかけて行った特別調査「地域企業における賃上げ等の動向について」によると、2024年度に「ベア(ベースアップ)」または「定期昇給」を実施する企業の割合は前年度からそれぞれ増加し、ベアで70.7%、定期昇給で81.9%となっており、企業が賃金の底上げを意識していることがうかがえる。また、ベアを実施する企業について規模別でみると、大企業より中堅・中小企業等の伸び幅が大きくなっており、賃金引上げの流れが中堅・中小企業等にも広がっていることがうかがえる。その一方で、賃金引上げを実施しない企業の理由としては「業績(収益)低迷(見通し含む)」が最多で、具体的には「物価上昇に伴う収益減により、賃上げ原資が確保できない」などの声も上がっている。

 また、中小の下請け企業で賃金引上げを実施している企業を見てみると、「パートナーシップ構築宣言」など、取引先となる大手企業の取引方針や、サポートやバックアップなどに支えられている部分も大きいようだ。「パートナーシップ構築宣言」とは、企業が「発注者」の立場で自社の取引方針を宣言する取組みで、「サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携(企業間連携、 IT 実装支援、専門人材マッチング、グリーン調達等)」や「振興基準の遵守」等に重点的に取組むことを宣言するものだ。

 政府も、経済産業省を中心にこの取り組みを推進しており、「パートナーシップ構築宣言」を登録し、ポータルサイトで公表した企業に対し、国や県の補助金等での優遇措置や各種支援を実施している。

 「パートナーシップ構築宣言」を登録している企業は、2024年5月現在で約4万7千社に上るが、例えば、株式会社日立システムズでは、パートナー企業と事業方針を共有し、パートナー企業の人財育成と事業強化を行うことで、共にデジタル分野事業の拡大に努めるなどの取り組みを行い、中小企業庁が主催する「パートナーシップ構築大賞2022 中小企業庁長官賞」を受賞している。また、化学品や食品、ライフサイエンスをコアビジネスとした事業を展開する株式会社ADEKAでは、価格改定について、取引先から要望があった場合は、状況や内容を精査した上で、妥当性があれば改定を了承することを宣言しているほか、コスト増が周知の電力、ガス料金については、特に製造を委託する取引先からの要望がなくとも、可能な限り価格改定の必要有無について声掛けを積極的に行うなどとしており、製造委託先からも感謝されるなど、高い評価を得ているようだ。

 また、昨今の経済状況だけでなく、以前から国内市場が厳しいと言われている日本酒業界でも、真摯に向き合っている企業もある。酒本酒メーカー最大手の白鶴酒造株式会社も、「不合理な原価低減要請を行わない」「原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合には、適切なコスト増加分の全額転嫁を目指す」「下請事業者に対して、適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更を行わない」など、サプライチェーンの取引先や関連事業者との連携・共存共栄を進めるためのパートナーシップ構築宣言を公表している。

 先の見えない不安な時代だが、止まない雨はないという言葉もある。いつか不況の雨が止んだ時、いくら自社が無事でも、周りに誰もいなくなってしまっていたら、繁栄は望めない。共存してこそ、未来に晴れ渡る青空が望めるのだ。(編集担当:今井慎太郎)

2021年から続く、原油や天然ガス等の世界規模のエネルギー価格の高騰に加え、日本では記録的な円安の影響も甚大で物価の高騰が加速しており、消費者は悲鳴を上げている

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