ファシリティマネジメント(6月9日)

 先月いわき市は、市有施設を将来的に最大で現在の数から半減する計画を公表した。

 今後様々な異論、摩擦が出るかもしれないが、元々いわき市では公共施設のファシリティマネジメント、つまり「ファシリティ(土地、建物、構築物、設備等)すべてを経営にとって最適な状態(コスト最小、効果最大)で保有し、賃借し、使用し、運営し、維持するための総合的な経営活動」の方針をまとめ、2011年度からの計画で進めていくはずだった。震災バブルが落ち着き、当時の予測よりも人口減が進む現在、向き合わざるを得ない課題だ。

 人口縮小社会が進む中、企業のみならず公共インフラの再編はどの地域でも喫緊の課題だが、それが単なる“縮減”ではなく、“最適化”となるかがカギとなる。

 先月隣県の2つの地方銀行を傘下に持つ「じもとホールディングス」が実質国有化になるという報道が流れた。国の後押しもあり、厳しい経営環境下にある地方銀行の打開策として再編・統合が進められている中でのニュースは、少なからぬ衝撃を与えた。

 DXの進展とともに、銀行業界にも変革が迫られているが、社会のあらゆる分野で二極化が進行する中、グローバルでボーダレスな事業を展開するメガバンクと、地域経済に密着する信用金庫・信用組合等の中間に位置する地方銀行は、その立ち位置やバランスをどのようにとっていくか、岐路に立たされている。第二地銀を含めた地方銀行3行が先月揃[そろ]って増収決算を発表した福島県においても、決して余[よ]所[そ]事[ごと]ではない。

 様々な指標に照らせば、再編や統合による体力強化、コスト削減など経営上のメリットは大きい。そもそもメガバンクのみならず銀行は時代や経済状況の変化とともに合併を繰り返してきた。

 一方で県紙が2紙もある広域で多様性に富んだ福島県において、3行が競争環境のもとに多様なサービスを展開することは、むしろ地域特性に合致しているとも言える。少なくとも再編・統合すれば済む、という問題ではないことを先の事案は示している。

 また地方銀行は民間企業であると同時に、地域の金融インフラでもある。公共のインフラとして、“経済の動脈”として地域経済を支える宿命があり、だからこそ、破綻はしても倒産はしない(とは言い切れないが)。

 つまり企業の生き残り策としての再編ではなく、地域経済を持続可能かつ強化していくという“本業”のための最適な体制を、地域特性も踏まえて構築する、それを官民連携して取り組んでいくことが肝要なのではないだろうか。

 しかし本当に最適化が必要なのは、官民問わず大規模建設工事が続く“メガロポリス”東京ではないか。際限なく全ての欲望を飲み込む巨大都市に問いたい。「一番じゃなきゃダメですか?」

(福迫昌之 東日本国際大学副学長)

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