7月1日、福島県葛尾村に美術カフェ 村に移住の現代作家・大山里奈さん

葛尾村民らの交流拠点を目指し、カフェの開店準備を進める大山さん

 福島県葛尾村に美術作品の展示スペースを備えたカフェが誕生する。村に移住した現代美術作家の大山里奈さん(40)が経営する。村内には少ない住民らの交流場所を生み出そうと、空き家を改築して出店を決めた。7月1日にオープンする予定。「憩いの場をつくり、村をさらに盛り上げていきたい」と、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興途上にある村の活性化に貢献する。

 木のぬくもりを感じる店内で開店準備が本格化している。壁にはアクリル板を使って自身が手がけた美術作品を展示する。「多くの人を呼び込みたい」と誓う。

 現代美術作家として活動するため、古里の茨城県で2019年に高校教諭を退職した。ただ、コロナ禍で思うような活動ができず、知人の紹介を受け、2021(令和3)年から村内で地域おこしをする「葛力創造舎」で働き始めた。初めて村を訪れ、人の温かさや豊かな自然に触れた。「ここで暮らしたい」と2022年4月に村民となった。

 村で生活し、勤務する中、若者たちから「交流の場がほしい」との声が集まった。葛力創造舎は美術作家らを村に集め、作品を創作してもらう事業を展開している。作家らが作品を展示する場所を生み出し、飲食も提供して幅広い世代が集うカフェを作ろうと考えた。

 村中心部から少し離れた空き家の一軒家を借りて店を出すと決意した。原発事故に伴う居住制限区域などが解除されてから、12日で8年になる地域だ。店を開き、さらなる復興の推進力になろうと場所を選んだ。

 料理やコーヒーなどを提供するほか、村民らが自由に作品を並べることができるコーナーを設ける。将来的に住民同士が結びつきを強めるワークショップなどの開催も計画している。「『そこにいればのんびりできて楽しい』と思ってもらえる場所を目指したい」と意気込んでいる。

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