鉄道の国交付金活用へ、只見線と会津鉄道 県、自治体負担を軽減

 地域鉄道に対する自治体の財政負担を抑えるため、福島県がJR只見線と会津鉄道について、国の有利な交付金を受けられる「鉄道事業再構築事業」の活用を目指すことが8日、分かった。新型コロナウイルス禍や物価高騰を受け、地域鉄道に対する県と市町村の財政措置は4年間で2.8倍に膨らみ、負担軽減と利用促進が喫緊の課題となっている。県は本年度中に再構築実施計画を策定する方向で、国の認定を受ければ県内初となる。

 県によると、JR只見線、会津鉄道、野岩鉄道、阿武隈急行、福島交通飯坂線などの各路線に対する負担額は【グラフ】の通り。2018年度の約7億円から右肩上がりに推移し、22年度は約20億円に達した。

 急増の要因は、新型コロナ禍による運賃収入の落ち込みに加え、資材・エネルギー価格や人件費の高騰を受けて財政支援の必要性が高まったことが大きい。阿武隈急行は本県沖を震源とする21年2月の地震で線路などが損傷し、復旧費を計上した。JR只見線は22年10月の全線運行再開に合わせ、施設の維持管理と運行事業者を分ける「上下分離方式」を導入。管理者の県や沿線自治体に一定の負担が生じた。

 県生活交通課は「災害復旧が一段落したとしても、老朽化や物価高騰の影響で維持管理費はかさむ。今後、負担額は高止まりする可能性が高い」とみる。

 昨年10月施行の改正地域公共交通活性化再生法により、地方自治体は鉄道事業再構築実施計画を策定し、国土交通省の認定を受けることで国から施設整備費の5割の交付金を受けられるようになった。主な認定要件は、輸送密度が一定以下で、上下分離方式などの事業構造を採ること。全国では今年に入り、山形鉄道フラワー長井線など8路線が相次いで認定を受けた。

 県は只見線に加え、施設整備費と運営費の赤字分を自治体が負担する「みなし上下分離」を採用する会津鉄道について、近く再構築実施計画策定作業に入る。利便性向上を見据えた今後10年間の設備投資や収支改善効果などを盛り込み、早ければ25年度にも有利な補助の適用を目指す考えだ。

 一方、県境をまたぐ阿武隈急行と野岩鉄道は関係者が多く、負担軽減策などが具体化していない。県担当者は「まず会津鉄道と只見線で再構築事業に挑戦し、地域鉄道の持続的な運営につなげたい」としている。

 鉄道事業再構築事業 昨年10月の改正地域公共交通活性化再生法施行に伴い、国は道路などを整備する地方自治体への「社会資本整備総合交付金」を、公共交通を見直す事業にも活用できるよう変更した。事業を活用するには、国主導で鉄道の存廃などを扱う「再構築協議会」を経由する方法に加え、自治体などでつくる法定協議会で実施計画を策定する2パターンがあり、県は後者を選択する。

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