近藤華、俳優人生で大きかった出会いは? 『アンチヒーロー』“父との面会”の心境明かす

TBS系日曜劇場『アンチヒーロー』第8話では、弁護士・明墨正樹(長谷川博己)から過去の“過ち”を懺悔され、人生の分岐点となるある対面も果たした牧野紗耶(近藤華)。あのとき、彼女はどんな胸中だったのか。

今回、紗耶を演じた近藤華に当時の心境を聞くとともに、最強メンバーがそろう本作でも引けを取らず、視聴者を惹きつける彼女自身にも迫った(以下、第8話までのネタバレあり)。

“父”緒形直人との面会シーンは「緊張してガチガチだった」

ーードラマのなかでも異彩を放つ『アンチヒーロー』について、近藤さんはどんな印象を受けていますか?

近藤華(以下、近藤):壮大でドラマというより映画の世界観に近いのかなと思っています。リアタイで毎週観ているんですけど、1時間にいろんな情報がギュッと詰まっていて、あっという間です。

ーー紗耶を演じるときに意識していることはありますか?

近藤:初対面の人とはうまく喋れない子なんですけど、実は、心の中では常に感情の起伏があるのかなって。演じているときは、心のなかで紗耶ちゃんが考えていそうなことをブツブツ言うようにしています。

ーーそう心がけることで、演技がより良くなる?

近藤:そうですね。話を聞くシーンでも、何も考えずにいると、ボーッとしている人に見えてしまいそうなので、いろいろと考えています。例えば、悲しいことを考えていると表情が変わったり、集中していると瞬きの回数が少なくなったり、言葉にしなくても見え方が変わる部分があると思います。

ーー第8話では、明墨から父・志水裕策(緒形直人)の自白を強要したとして謝罪される一幕がありました。近藤さんはどんな心境で撮影に臨んでいましたか?

近藤:紗耶ちゃんにとって、とても大事なシーンだと思っていました。明墨先生が紗耶ちゃんに向かって話しているんですけど、紗耶ちゃんはほぼ喋らないので、受けの芝居をすごく考えましたし、頑張らなきゃなって。先生の言葉を受けて、紗耶ちゃんは何を思い出すんだろう、と思っていました。

ーー明墨の謝罪を聞いて、紗耶はどんな気持ちになったと思いますか?

近藤:ずっと信じてきたのに、裏切られたような気持ちになったのかなと思います。自分が頼りにしていたものが全部壊れてしまって、“ずっと信じてきたものは一体何だったんだろう。これから私は、何を信じていけばいいんだろう”って。

ーーその後、父・裕策と対面します。撮影はいかがでしたか?

近藤:緒形さんとは、お父さんと会うシーンで初めて現場でお会いしたのもあって、すごく新鮮な気持ちでできました。

ーー紗耶が感情を吐露するシーンでもありました。

近藤:すごく緊張してガチガチだったんですけど、監督や長谷川さんが「ストレッチしたら?」とか「深呼吸、深呼吸」と声をかけてくださったので、少しリラックスできました。できる限りの準備をして臨んだんですけど、皆さんの演技を受けただけで感動して泣いてしまいました。

ーー人間力がすごい方ばかりですもんね。紗耶は当時どんな心境だったと思いますか?

近藤:紗耶ちゃんも台詞で言っているんですけど、どうしようもない怒りがずっと溜まっていたと思うんです。ずっと我慢していたことを、ようやくお父さんに言えたので、そのしがらみからは少し解放されたんじゃないかなと思います。

ーー近藤さんは紗耶のことをどんな子だと思っていますか?

近藤:普通では経験しないことを経験していて、想像し難いくらいの苦しみを抱えている。そして、自分に自信がなくて、ネガティブな子。でも、この辛いなかを生き抜いてきたからこその強い信念や、自分の芯はちゃんと持っている子なのかなと思います。

ーーご自身とリンクする部分はありますか?

近藤:動物好きなところは似ていますね。私も(紗耶のように)ワンちゃんが好きですし、ほかにも猫ちゃん、ハツカネズミ……あとカラスも好きです。

ーーカラスですか!?

近藤:カラスってカッコよくないですか?

ーー確かにフォルムはカッコいいですよね。カラスは珍しがられることも多いのでは?

近藤:あまり共感は得られないです(笑)。

ーー(笑)。撮影現場の雰囲気はいかがですか?

近藤:シリアスなドラマですけど、すごく明るいです。皆さんたくさん喋りかけてくださって、出演者の方と学校の話をするのが楽しいです。この前テストがあったんですけど、そのときは皆さんが応援してくださったおかげで頑張れました。

ーー『アンチヒーロー』のなかで印象に残っているシーンを教えてください。

近藤:法廷のシーンも好きなんですけど、野村萬斎さんの迫力が画面越しからでも伝わってくるので、萬斎さんが出るシーンは毎週家族で注目して観ています。

ーー確かにあの迫力はすごいですよね。今後の注目ポイントを教えてください。

近藤:第1話からいろんなところに伏線が張られていて、これからどんどん回収されていくので、ぜひ楽しんでいただきたいです。これまでの物語を観返していただくのもオススメです。

豊嶋花、山﨑玲奈ら同世代の俳優から受ける刺激

ーー『アンチヒーロー』でもさまざまな先輩と共演されていますが、13歳でデビューされてからこれまでで特に大きかった出会いは?

近藤:共演した同世代の方からは、すごく影響を受けています。例えばドラマ『ばらかもん』(フジテレビ系)だったら豊嶋花さん、ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』だったら山﨑玲奈さん。今夏公開の映画『サユリ』もそうですが、同年代の方たちが頑張っているところを見ると、“私も頑張らなきゃな”と思います。

ーー同世代の俳優がいると安心感もあるでしょうね。

近藤:そうですね。(撮影現場には)大人がいっぱいいて、常に緊張感があるので、同世代の子方といるとちょっとリラックスできます。

ーー同世代の方から学ぶことも多いですか?

近藤:子役からやっている方もいっぱいいるので、私よりも経験があって、貫禄があるなと思います。現場での雰囲気だったり、対応だったり……私はおどおどしっぱなしなので、見習わなきゃなって。特に皆さんコミュニケーション能力が高くて、自分からいろいろ動いているんです。そういう姿を見るたびに、“コミュニケーションってすごく大事なことだな”と思います。

ーーデビュー当時から、作品の向き合い方、演じ方に変化はありましたか?

近藤:不安要素が少なくなってきた、といいますか……。昔は何も分からないから、いろんなところに不安があったんですけど、最近は「こういうことがあっても大丈夫」と少しリラックスして撮影現場に行けるようになりました。

ーー近藤さん自身の魅力や強みはどんなところにあると思いますか?

近藤:目力と声ですね。特に声は地声が低めなので、特徴的かなとは思っています。

ーー声優の仕事にも興味はありますか?

近藤:機会をいただけたら、ぜひやってみたいです。

ーーアニメがお好きということなので、今後オファーがあるかもしれませんね。どんなアニメが好きですか?

近藤:特にアメリカのアニメ『アドベンチャー・タイム』が大好きです。私は趣味でアニメーションを描くんですけど、その作品を参考にすることもあります。

ーーアニメーションづくりが趣味とは驚きです。お休みの日に制作されるんですか?

近藤:そうですね。YouTubeを見ながら、絵を描くのが至福の時間です。

ーー俳優をやるなかで、やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?

近藤:演じているうちに邪念が一切なくなって、演技だけに集中できたときはすごく嬉しいです。自分のやりたいことができたときも「やった!」と思います。あとは、褒めていただいたとき。「この人が私を褒めたいと思えるくらい心を動かせたのかな」と思うと、すごく嬉しいですし、やりがいを感じます。

ーー俳優をやるにあたってのモチベーションの保ち方を教えてください。

近藤:食べ物ですね。辛いものが大好きなんですけど、撮影が終わったあとは、夜遅くても明日のことは気にせず、一旦辛いものを食べることに決めています。

ーー激辛でも大丈夫なんですか?

近藤:友達が「辛い」というものは、もう辛いと感じなくなってきていて……ちょっと麻痺してきているかもしれません(笑)。

ーー今後、辛いもの好きが加速するかもしれないですね(笑)。最後に、俳優としてこれからやってみたいことはありますか?

近藤:いま高校生なんですけど、いまだからこそできるものがあるんじゃないかな、と思うので、学園ものに挑戦してみたいです。

ーー学園ものというと、十人十色いろんなキャラクターがいますが、どんな人物を演じてみたいですか?

近藤:主人公の友達役にすごく興味があります。主人公が悩んでいるときに支えたり、助言をするようなキャラクターを演じてみたいです。
(文=浜瀬将樹)

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