甘口カレーに入れると大人の味に 家庭菜園初心者はハーブに挑戦を 農家が太鼓判を押す3種とは

夏に食べたいハーブ三昧カレー【写真:こばやしなつみ】

夏本番に向けて、植物がぐんぐんと育つ季節になりました。今年こそは家庭菜園を始めてみたいと思っている人もいるでしょう。そこで、茨城県で兼業農家を営み、少量多品種の米や野菜作りに取り組むこばやしなつみさんがコツをレクチャー。初心者さん向けに、市販の苗1株からでも育てて収穫しやすく、食卓で活躍するおすすめのハーブを3つご紹介します。

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ハーブは手間いらずで使いやすい!

我が家の畑は毎年6月に入ると、夏野菜が花を咲かせ始めます。一方、庭のプランターではキッチンハーブを育てており、そちらもグングンと成長していきます。

使いたいときに摘んでフレッシュな状態で料理に使える点と、畑まで出て行かずに済む点でも重宝しています。しかも、野菜を育てるよりも負担が少なく、手間もかかりません。なにより、夏のハーブならではの摘みたての“香り”が魅力です。

最近ではハーブ苗も野菜苗と同じように、幅広い品種が生花店やホームセンターなどで手に入りますよね。私自身も過去、10種類以上を種から育てたり、苗を買って育てたり試行錯誤しました。それでも、料理には活用しきれなかったハーブもあります。

しっかり葉を食べることを目的にするという観点から、我が家には定番化しているキッチンハーブがあります。

育てやすく夏の料理にも活用しやすいハーブ【写真:こばやしなつみ】

花が咲くまでが食べ頃 キッチンハーブの成長と栽培の流れ

今回紹介するハーブは、葉を収穫すればするほど、脇から新しいフレッシュな葉が育ちます。生花店やホームセンターなどに売っている、手のひらサイズの小さな苗を6月中に植えつけたら、土が乾いたタイミングで水やりをしましょう。

気温の上昇とともに茎や葉が成長。少しずつ収穫を始めても、夏に向けて苗全体が大きくなっていくので、花が咲く頃まで食べられます。

花が咲き始めると、苗の栄養が花に奪われ、葉や茎がしだいに硬くなっていきます。私は長く葉を食べたいので、花芽を見つけたらすぐに摘んで新芽を育てるようにしています。

それでも、8月になると苗全体で花が咲くムードになってくるので、収穫最盛期は終了です。小さくたくさん咲く花がかわいらしいので、その後も観賞用に残して、夏の終わりに苗を片づけています。

○初心者さん向けキッチンハーブ1:大葉(シソ)

冷ややっこ、肉・魚料理の付け合わせにも合う大葉【写真:こばやしなつみ】

【分類】
シソ科シソ属/原産地:中国南部、ヒマラヤ、ミャンマー

【特徴と食べ方】
和風ハーブの代表格である大葉(シソ)は、成長過程に応じて長く食べられる点でとても優秀です。8月に入るとシソの軸が伸びてきて、小さな花をたくさんつけた「花穂」が出てきます。花穂を天ぷらや刺身のつまにしても◎。大葉の香りに加えて、プチプチした食感がおいしいです。夏に畑で枯れても、翌年にこぼれた種から芽が出るので、私はその一部の芽をプランターに移植して育てています。

○初心者さん向きキッチンハーブ2:バジル

トマトやチーズなど、イタリアンとの相性が良いバジル【写真:こばやしなつみ】

【分類】
シソ科メボウキ属/原産地:インド、アフリカ

【特徴と食べ方】
バジルは、夏に収穫したトマトと一緒に食べたくて毎年育てています。茎にえぐみがあるので、料理には葉だけを使用。トマトとモッツァレラチーズ、オリーブオイル、塩コショウでカプレーゼに。株が育ってきて大量に収穫できたら、オリーブオイルなどと合わせてペースト状にし、冷凍保存しています。ピザやパスタのソースに活用できるのでとても便利です。大葉と同じシソ科であることからか、花穂のつき方が似ている点は比較するとおもしろいですよ。

○家庭菜園向きキッチンハーブ3:パクチー

唯一無二の独特な香りでアジア料理の肝となるパクチー【写真:こばやしなつみ】

【分類】
セリ科コエンドロ属/原産地:地中海沿岸、南ヨーロッパ

【特徴と食べ方】
アジア系エスニック料理に使われているハーブといえばパクチー。加えれば、どんな料理でも一気に異国情緒を感じられる魅惑のハーブです。好みが分かれる食材ですが、苗が若いうちは葉も茎もやわらかく食べやすいのでおすすめ。蒸し鶏に添えたり、サラダに加えたりして食べます。

小さなハートの形の花びらが愛らしいパクチー【写真:こばやしなつみ】

収穫しないと茎や葉が硬くなり、どんどん伸びて、小さな花が咲いてきます。葉や花の雰囲気は、どことなく同科のニンジンに近いような印象も。

甘口カレーにハーブを刻んでのせれば大人の味に

ちなみに、夏場は“ハーブ三昧カレー”をよく作って食べます。我が家では、子どもも含めて家族全員で食べるカレーの辛さが甘口一択のため、薬味のトッピングで大人の味に変化をつけます。

収穫した複数のハーブを細かく刻んで、福神漬けのようなイメージで食べます。大葉、バジル、パクチーにミョウガも加えれば、爽快感あふれる香りでうだるような暑さも吹き飛ばしてくれます。

ちなみに、カレーのスパイスなどに使われているコリアンダーは、パクチーが完熟した種を指すそうです。そもそもカレーのスパイスにはコリアンダーが使われていることからも、パクチーの葉の部分とも相性が良いのかも知れませんね。

ぜひ、夏のキッチンハーブの家庭菜園を楽しんでくださいね。

【参考】
「もっとからだにおいしい 野菜の便利帳」白鳥早奈英、板木利隆監修(高橋書店刊)
「新版 食材図典 生鮮食材篇」(小学館刊)

こばやし なつみ
半農半フリーランスPRプランナー。2009年に大学卒業後、東京のPR会社に就職。PRプランナーとして勤務後、14年に独立。同年、茨城県・水戸の兼業農家へ嫁ぐ。16年9月に茨城県立農業大学校いばらき営農塾(野菜入門コース)を修了、同11月に第1子を出産。現在は少量多品種(年間約30~40種)の野菜を義両親と共に作り、販売する傍ら、平日は執筆、意識調査の設計・分析等の仕事もこなしている。

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