ゴビ砂漠に緑 福島の仲間と 荒オルギルトヤさん モンゴル出身、新地町内在住 来春にも植林「故郷守りたい」

故郷で植林を始める荒さん

 福島県新地町で暮らすモンゴル出身の主婦荒オルギルトヤさん(43)は、砂漠化を少しでも食い止めようと来年春、故郷で植林を始める。実家はゴビ砂漠の北部。ゴビ砂漠は日本を悩ます黄砂の発生源とされる。遠く離れた地の環境問題は決して福島と無縁ではない。初年度は約2500本を植え、長い期間をかけて50ヘクタールの森を整備する計画だ。思いに共感し協力を申し出てくれる人も新地を中心に増えてきた。「豊かな緑できれいな空気と水をつくりたい」と力を込める。

 ゴビ砂漠の北にあるウムヌゴビ県マンダル・オボーに植林する。まずは地下水が確保できる10ヘクタールに約2500本の広葉樹「エルム」を植える。実施主体となる団体「ゴビのみどり」を3月に設立した。植える木は活動に賛同する人らに一本3200~3500円で買い取ってもらう「オーナー制」で用意する。

 荒さんの挑戦を知った新地町の人らが取り組みを後押しする。これまでに約20人が手を上げてくれた。町内の田村薬草農場グループの研究室長田村晃将さん(40)は、植物の知識を生かし学術面で活動を支えている。以前からモンゴルの企業や現地の人と付き合いがあった。「多くの人にこの取り組みを知ってほしい」と荒さんを応援する。

 植林には地下水をくみ上げる発電機の設置などが必要で、約3500万円の費用がかかると見積もる。植えた木の成長をインターネットで発信するなどして木の「オーナー」との絆を維持しながら活動を進める。

 荒さんはウムヌゴビ県ダルンザドガドに生まれ、オアシスや砂漠の中を流れる川などの自然に囲まれて育った。友人の紹介で新地町の男性と結婚し2006(平成18)年に移住。2人の子どもに恵まれた。新型コロナウイルスの影響で近年は帰省できずにいたが昨年5月、5年ぶりに故郷を訪れると環境が激変していた。大規模な砂嵐が頻発し、隣を歩く人が見えないほどだった。住環境の悪化から多くの若者が砂嵐の少ない首都ウランバートルに移っていると知った。モンゴルの自然を守らなければ―との思いが芽生え、新地に帰ってから知人らに相談し植林事業に動き出した。

 ゴビ砂漠の総面積約130万平方キロ。活動で緑地化できる範囲はわずかだ。それでも荒さんは「危機感を持った人が動かなければ」と強調する。将来的にはキャンプ場の開設や現地住民が農業を営める環境整備も見据える。「長い計画になるが、数十年先の未来を守っていきたい」と話している。

■視察ツアー参加募る 30日まで

 荒オルギルトヤさんは植林への協力者を募っている。8月下旬~9月上旬にはモンゴルの現状を体感するツアーを開催する予定で、参加者も募集している。

 ツアーはモンゴルの街中やゴビ砂漠を見てもらう内容。30日まで参加申し込みを受け付ける。費用は参加人数によって変わる。

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