MVPニュービルが移籍のシーズンを総括…「ブレックスネイションの皆さんに感謝したい」

広島ドラゴンフライズのリーグ初制覇で幕を閉じた2023-24シーズン。ワイルドカード上位、リーグ全体の第7シードから頂点に上り詰めた広島の躍進が素晴らしかった一方で、レギュラーシーズンでは宇都宮ブレックスがリーグ1位の勝率を残し、過去に2度リーグ制覇を果たしている地力を見せつけた。そして、栄えあるシーズンMVPに輝いたのはその宇都宮所属のD.J・ニュービルだ。そのニュービルにMVP受賞の感想、さらには大阪エヴェッサから移籍した1季目のシーズンを振り返ってもらった。

MVPは、欠席したペリン・ビュフォード(島根スサノオマジック)を除く9人のベスト5ノミネート選手が立ち並ぶ中、その足元に伸びた光線が最後まで光り続けていた選手が受賞する演出。最後まで光を浴びていたのがニュービルだった。

受賞については、事前に知らされていなかったとニュービル自身が証言。「知ったのは、発表で名前を呼ばれた瞬間です。ライトが自分の所で止まって、それで気づきました」と、その瞬間は驚いたようで、イベント終了後の囲み取材では「比江島(慎)選手が受賞すると思っていたのですが、自分がこの賞をいただいて、今はすごく良い気分です」と笑みを浮かべた。チームメートの名前を挙げただけのことはあり、ニュービルは受賞直後のコメントでもチーム、リーグ、そしてファンに対する感謝を述べている。

「Bリーグの皆さんに感謝したいと思います。自分がより良い選手になるためにプッシュしてくれましたし、シーズンを通して温かいサポートをいただきました。コーチ陣、チームメート、スタッフのみんなも自分をシーズンの初日から受け入れてくれて、温かく迎え入れてくれました。この賞は自分個人の賞ではなく、チーム全体で勝ち取った賞だと思っています。チームと関係者の皆さんに感謝したいと思いますし、何よりブレックスネイション(ファン)の皆さんに感謝したいです」

移籍1シーズン目はプレーオフを含めた63試合全てに出場し、スターターを外れたのは1試合のみ。1試合平均16.3得点と同1.3スティール、3ポイントシュート成功率37.3パーセントはいずれもリーグ13位、同4.7アシストは11位と、宇都宮の攻守の要としてオールラウンドに活躍。文句なしのMVP選出と言っていいが、実は個人の成績に関しては、昨シーズンまで過ごした大阪エヴェッサでの3シーズンのほうが良い数字だった。その事実も踏まえた上で、ニュービルはチームのおかげで受賞できたということを強調する。

「過去には『自分もアウォードを受賞する価値がある』と思ったこともありますが、今シーズンブレックスに移籍してきて、チームの仲間たちの存在があってこその受賞だと思いますし、対戦相手も含めて周囲の環境やサポートがあってこその受賞だと思うので、そこに対する感謝の気持ちが強いです」

大阪時代も勝負どころでボールを託され、高い決定力を誇るクラッチプレーヤーとして名を馳せてきたニュービルは、チャンピオンシップ常連の宇都宮に移籍してきたことで、さらに脚光を浴びる立場となった。好不調の波がなく、シーズンを通して安定した活躍を披露してきた秘訣は、不断の努力にあったという。

「準備に限ると思います。チームメートやコーチ陣とコミュニケーションを取ること、毎日ハードワークすること。それがお互いの不安を払拭するので、日々積み重ねてきたことが結果につながったと思っています」

これまでも、圧巻のパフォーマンスで対戦相手に脅威を与え続けてきたニュービル。今シーズン到達できなかったリーグ優勝を目指して地道な努力を重ね、来シーズンもリーグを代表する選手として君臨するに違いない。

ニュービルは関係者、特に宇都宮のファンに感謝の言葉を送った [写真]=B.LEAGUE

文=吉川哲彦

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