キリンビバレッジ井上社長 戦略と戦術の間に起爆剤 「会社の根幹かみ砕き力をより発揮したくなるような仕掛け」で現場を鼓舞

キリンビバレッジの井上一弘社長は3月28日から現職。6月7日、「午後の紅茶」戦略発表会で、吉村透留前社長が主導して策定したヘルスサイエンス領域を中心とする戦略の実行度をより高めていく考えを明らかにした。

「(策定された戦略は)業界5位の我々が上位メーカーと同じ戦いをしても勝てないため、とても良い戦略。私がやるのは、その戦略の実行度を高めていくこと。本社と現場の連携や、現場のKPI(目標達成に向け日々の業務を評価するための数値指標)をいかにしてやり切る組織風土にしていくことに注力し部隊を鼓舞していきたい」と意欲をのぞかせる。

井上社長は社長就任後、全国各地の現場を回り社員との対話集会に心血を注ぐ。その中で井上社長がまず感じたのは、実行力のポテンシャルの高さだった。

「若い方や経営職の方、お年を召された方などいろいろな層に分けてお話を聞いている中で、“何かやると決めたときにやり切る実行力はある”とみな口を揃える。確かに『生茶』も目標を大幅に超えて1-5月で約130%の成績を残しており、私もそう思う」との見方を示す。

対話集会により、社員の会社へのロイヤルティの高さも浮き彫りになった。

井上社長が、やり切る力の原動力について質したところ、多くの社員から返されたのが“この会社が好きだから”の回答だった。

この言葉を受け「このご時世、自分の会社を好きだという人は少ないので、良いことだと思った。会社に対するロイヤルティが高いとすると、やはり会社の根幹の部分をもう少しかみ砕き、社員がより楽しく、より力を発揮したくなるような仕掛けが必要。戦略と戦術をつなぐところに何か起爆剤みたいなことを入れながらやっていきたい」と力を込める。

現場の社員からは“勝ちたい”や“元気が出るような言葉が欲しい”といった言葉も漏れ聞こえてくるという。

「元気になるには、実行力を上げてマーケットで商品を認めてもらわないといけない。さらに上を行くために、基本的にはヘルスサイエンス領域をしっかりやるのだが、『午後の紅茶』『生茶』『ファイヤ』もしっかりやっていく。収益性を高めながらトップライン(売上収益)も意識していきたい」と語る。

中長期的には、現場から新たなCSV事業を啓発するボトムアップ型の取り組みも進め、現場・本社一体のCSV経営を推進していく。

ボトムアップ型については「それぞれの担当が持っているお得意先様や生産・マーケティングの各機能の中でお客様あるいはお得意先様に貢献できるような個別の課題を解決していくこともCSVだと私は認識している。アイデアを募集し、現在、現場から寄せられた10個ほどのアイデアに優先順位をつけている段階にある」と説明する。

座右の銘は“日に新たに、日々に新たなり”。

「昨日よりも今日、今日よりも明日をより良くしていくためにしっかり努力していかなくてはいけない。要はセルフコントロール。たがを弛めず精進し続けることが人として大事だと思っている」と語る。

趣味は学生時代に始めたヨット。
「たまに昔の仲間とヨットに乗るが、今は3歳の真っ白なポメラニアンが私の生き甲斐。朝晩、散歩しながら筋トレして、体づくりにも励んでいる。1日1万歩を歩くように努力している」と述べる。

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