空から見るニッポン。ただいま、会津・猪苗代湖の上空です!

猪苗代湖は、数十万年前に断層がつくり出した盆地に、5万年前の磐梯山噴火によってせき止められた川の水がたまることによって誕生した。周辺は山、川、市街、田園と、変化に富む風景が広がっている。

どこまでも続く田園と、海のような湖

仕事で東北に行った帰り道、どうせなら福島に寄って磐梯山と猪苗代湖を空撮しようと思い、会津若松へと向かった。

急遽行くことに決めたため、事前のリサーチは特にしておらず、現地でモーターパラグライダーが離着陸できる場所を探して、しばらくうろうろしてしまった。

なかなかいい場所が見つからなかったが、猪苗代湖近くの田んぼの畦道を借りて離陸することに。

田んぼできれいに育っている稲を傷つけないよう慎重に離陸すると、日本有数の米どころといわれる広大な田園風景がずっと奥まで続いているのが見える。規則正しく並んだ田んぼには雲の影がまだら模様に映り、アート作品のようだ。

空には雲が出ていたが意外と低いものが多く、その切れ間を縫うように飛ぶのが楽しくて、しばらく雲と戯れるように飛び回った。雲の上は快晴で、空の青、地上の田んぼと森の緑、その間に浮かぶ白い雲とのコントラストが美しい。

猪苗代湖北西部付近。田園の上に低い雲がかかり絵画のように美しかった。

高度を上げると、西の方向に雲の間から会津若松市街が見えた。その奥、会津盆地のほぼ中央では阿賀川が流れている。

東を向くと猪苗代湖は大部分が雲に隠れていたが、湖の上空まで飛んでいくと雲の切れ間から翁島が見える。

猪苗代湖は日本で4番目に広い湖。周囲49kmもあり、まるで海の上を飛んでいるように感じる。

目的の一つだった磐梯山は完全に雲に隠れてしまい見ることができなかったが、十分満足できるフライトとなった。

猪苗代湖を背に、西を向くと会津若松市街。画面中央の雲にはブロッケン現象が見える。
中央に見える島が翁島。渇水期には陸続きとなる。

迫力の動画はこちら!

取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2023年9月号より

山本直洋
空飛ぶ写真家
1978年、東京生まれ。モーターパラグライダーによる空撮を得意とする”空飛ぶ写真家”。現在、世界七大陸最高峰を空撮する、成功すれば世界初のプロジェクト「Above the Seven Summits Project」を計画中。

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