連載『lit!』第105回:超ときめき♡宣伝部、BEYOOOOONDS、SWEET STEADY……中毒性が光るアイドル新譜5選

何度も繰り返して聴いてしまう楽曲を評する際に「中毒性」という言葉が使われることがある。ロックバンドやヒップホップでもそうだが、特にアイドルグループが発信する音楽においては、この中毒性がグループの成長を図るために重要な要素である。一度聴けば耳から離れないサウンド、一瞬でオタク心を掴んで離さないひと言のセリフで、一気にバズってしまう昨今のアイドルシーン。今回は、グループごとに多様なアプローチで発信する中毒性が光る楽曲をピックアップした。時期も相まって夏が似合う楽曲が揃っているので、ぜひ夏を感じながら聴いてみてほしい。

■超ときめき♡宣伝部『最上級にかわいいの!』

本サイトでも何度か取り上げられてきた超ときめき♡宣伝部の「最上級にかわいいの!」。同曲は2024年1月31日公開(集計期間:2024年1月22日~1月28日)のBillboard JAPAN週間アルバムセールスチャートで首位を獲得した3rdアルバム『ときめく恋と青春』に収録されていたが、満を持してシングルカットされた。本稿執筆時点でTikTokでの総再生回数は7億5000万回を突破し、記録的なバズを起こしている。これまで数々の恋愛ソングを手掛けてきたシンガーソングライターのコレサワらしい、〈君に振られて最上級に可愛いの〉〈認めなよ これが乙女の逆襲だ!〉とちょっぴりドロっとする失恋によって、逆にかわいいが増してしまう仕様。その流れで引きずった嫉妬心をロックに歌い上げるカップリング曲の「ししし!」、〈楽しめば最高じゃん!〉ですべてを吹き飛ばしてしまう気分爽快ダンスナンバー「ときめきパーティ」も中毒性抜群なのでぜひチェックを。

■BEYOOOOONDS『灰toダイヤモンド/Go City Go/フックの法則』

ハロー!プロジェクトからはBEYOOOOONDSのニューシングル『灰toダイヤモンド/Go City Go/フックの法則』が到着。3曲とも作詞・児玉雨子×作曲・星部ショウのハロプロファンならおなじみの強力タッグで制作され、幾重にも重なるコーラスパートと西田汐里や高瀬くるみのフェイクが効いたボーカルで魅了するファンクナンバー「灰toダイヤモンド」、この曲をお供に全国を旅したくなる五七五調の日本的な旋律が気持ちいい「Go City Go」、〈力は伸びに比例する!〉とばねの持つ力でリスナーを後押しし、公式まで学べてしまうBEYOOOOONDSのセルフタイトルとも言える意欲作「フックの法則」のトリプルA面シングル。その中毒性は3曲3様、BEYOOOOONDSをネクストフェーズにぐいっと押し上げるシングル作となった。

■SWEET STEADY『Call me, Tell me』

先日の日本武道館公演が記憶に新しいFRUITS ZIPPERを輩出したKAWAII LAB.の新グループ、SWEET STEADYがニューシングル『Call me, Tell me』をリリース。表題曲は冒頭のテレフォンタイム、〈ピピッピー〉〈フッフー〉〈キュン〉などキュートな合いの手、サビの半音階が耳に残るフレーズ、中盤のフォトタイムと、中毒性てんこもりでくすぐってくる王道アイドルソング。「こんな電話かかってこないかなあ」とつい妄想してしまう。ライブ会場が一体となって盛り上がる様子が容易に想像できて、絶対楽しいやつ。カップリングの「Sweet Cafe」は公式のコール動画がYouTubeにアップされているので、一言一句覚えてライブに参戦したいところ。アイドルの天性を真正面から発信するKAWAII LAB.に今後も注目していきたい。

■Merry BAD TUNE. 『2D POPと超電脳アオハライズ。』

前身グループ時代から続くサイバーな音像と、心情が揺れ動いた瞬間を切り取る刹那的なパフォーマンスでアイドルシーンに爪痕を残してきたMerry BAD TUNE.のニューアルバム『2D POPと超電脳アオハライズ。』。「WONDER DRIVE -ONLINE-」「ぷいぷい。」「やわいむじゅん」「ヨワムシタイムリーパー」など楽曲ごとに表情をがらっと変えながら、バチュン空間に誘い込む全12曲を収録。「真夏のユーレイ!!」のMVでは透明感のある制服姿にアルバムタイトルを踏襲したアオハル感が漂うも、サビの転調で表情を変え、青春時代の陰陽を表現しているよう。夏の青春模様を鮮やかに描いた「86 SUMMER FILM」では、冒頭の白担当・星島ゆいによる〈ぼっちじゃないよ〉に救われるリスナーも多いはず。バチュン流のサマーチューン、ぜひ真夏のアイドルフェスやサーキットイベントで体感してみたい。

■可愛いって言わないと呪う!「ソロサマ!」

最後は可愛いって言わないと呪う!のニューシングル「ソロサマ!」。夏の陽気を浴びながら2ビートで駆け抜けていくのが眩しく、水着を着用したMVはこの時期のアイドルソングのいわば正攻法。中盤の〈沸きたい夏があるんだよ!〉に始まり〈ア・ツ・イ・ナ・ツーーー!〉と締めくくるパートは歌詞がそのままコールとして成立する親切設計だし、懐メロ=夏メロとして挿入された〈「1993 恋をした」〉や、昨今聞きなじみのある〈全話無料〉など、2010年代中頃にインディーズバンドシーンにおいて熱狂的な中毒者を生んでいたバンド・ぽわんのコンポーザーであるメイビーモエによるユーモアのある筆致は、現代の日本の多様なアイドル文化にフィットすること間違いなし。近い将来〈かわのろレボリューション〉が巻き起こる日が来るかも……!?

(文=栄谷悠紀)

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