京本大我(SixTONES)インタビュー!映画『言えない秘密』撮影ウラ話

©2024「言えない秘密」製作委員会

京本大我が映画初単独主演を務めた『言えない秘密』が6月28日(金)より全国公開となる。

音大を舞台にピアノを通して心を通わせていく湊人(京本)と雪乃(古川琴音)の恋物語を描く本作。前半は徐々に惹かれあっていく二人の姿を繊細に見せつつ、後半はまた別の角度から二人を捉え、美しく切ないストーリーを紡ぐ。

ピアノの演奏にも挑戦しつつ、湊人の心模様を細やかな演技で表現した京本。どのような想いで本作と向き合っていたかを語ってくれた。

【京本大我(SixTONES)】映画『言えない秘密』場面写真

何より湊人と雪乃の関係性が美しく儚すぎた

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――最初に脚本を読んだときの印象を教えてください。

原案となる台湾で制作された映画も観させてもらったんですけど、それとはまた違った日本ならではの繊細さとかが詰め込まれていて、何より湊人と雪乃の関係性が美しく儚すぎたので、それを自分がやらせていただけることをとても光栄に思いました。

――日本ならではの繊細さとはどのようなところですか。

ネタバレをしないように話すのが難しいんですけど(苦笑)、原案のほうはインパクトが強く表現されていたように感じたというか、途中からガラッと世界観が変わる印象があったんですけど、日本版は前半のノスタルジックな世界観を残したまま、最後まで展開していく感覚がありました。

原案の表現は、当時、話題となったアプローチではあるんですけど、せっかくリメイクをするのであれば、その辺りを別のアプローチにできたらいいなと思っていて。そこは監督とも相談しつつ、理想的な感じで、日本らしくできたんじゃないかと思います。

――湊人はどんな人だと捉えていましたか。

普通の男の子だなと。留学をして、そこで挫折をしたトラウマを抱えてはいますけど、特別変わった体験ではないと思いました。誰でもみんな何らかそういう経験はあるんじゃないかな。だから、演じる上では個性的にしようという気はなかったです。

親との関係も、ちょっとぎこちないながらも程よい愛情も感じている絶妙な雰囲気は、よくあることだと思ったし。

強いて意識したことと言えば、僕はピアノを専攻している音大生ではないし、大学に通ったこともないので、その部分のリアルさを追求するためにピアノの練習はしました。

――共感できたところはありましたか。

夢を追いかけて挫折を味わうところは、僕は挫折し切ったことはないですけど、しかけたことはたくさんあるし、その感情の引き出しはいっぱいありました。

――夢に挫折したところから、徐々に希望を見出していく感情のグラデーションが繊細に表現されていると感じました。

そこは雪乃の存在が大きかったと思います。湊人のやる気を自然と促して、夢をもう一度つかもうとする気持ちを導いてくれました。雪乃との一つひとつの出来事が、湊人の中で変わるきかっけになって、チャンスを逃さずに勇気を出すことができたのだと思います。

だから、僕自身が意識して感情のグラデーションを出そうとしていたというよりは、湊人としていられたことで出たものかと。事前に計算するようなことはなく、お芝居をする中で自然と出ていました。

いつかこんな恋愛ができたらいいなって

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――湊人はどの段階から雪乃に惹かれていったと考えていましたか。

二人の中にピアノという共通点があって、最初は「不思議な子だな」とか、気になってはいるものの、本当の意味では心を開き切れてはいなかったと思います。

それが湊人の家のカフェにあるピアノで、二人で連弾をしたときに、開くかどうかを悩んでいたところから、完全に開けた感じはしました。初めて湊人が自分自身のことを打ち明けて、それを受けて雪乃が「一緒に弾こう」と誘ってくれるところです。

――京本さん自身は、湊人が雪乃に惹かれていく感情をどのように思っていましたか。

雪乃はとても魅力的ですよね。厚かましくならない、程よい感じで心をノックしてくれる。だから湊人も拒絶する気は起きない。しかも、雪乃はそれを意図してやっているわけではなくて。だからあの二人の空気感はすごくナチュラルだし、湊人が惹かれていくのも必然だと思えました。

例えば、授業をサボってゲームセンターに行くとかは、学生ならよくありそうなことだし、傍から見たら些細なことだけど、二人にとっては特別なもので。そのときの湊人の気持ちはすごくわかるなって思っていました。

自然体で恋愛ができていて、理想ですね。あの感じって友達の延長線上じゃないですか。それに、あんなドラマティックな出会い方もなかなかないですよね。いつかこんな恋愛ができたらいいなって思いました。

でも、あそこまでドラマティックじゃなくても、きっと身近に理解者や、わかり合える人はいるとは思っていて。あとは自分が気づけるか、向き合えるか、なのかなとも思います。

――湊人が雪乃に惹かれる心情を、芝居ではどう表現したいと思っていましたか。

二人の関係は恋愛ではあるんですけど、ただキュンとかを求めているだけでもなくて。湊人が成長する上で雪乃はよき理解者であり、より深い部分で繋がっている。だから、単に「一緒に居たい」という想いではなく、いろんな意味でのパートナーで、親友に近い感覚も表現したいと思っていました。序盤から恋愛の好き嫌いだけでなく、そういう意味での必然性を感じていました。

――二人が海辺ではしゃいでいるシーンなどはとてもかわいかったです。

あれだけベタなことはなかなかできないですよね(笑)。二人で海に行くことはできても、海に入ってキャッキャするのは、僕はできないので。すごくピュアでいいなって思いました。

びしょ濡れになって、湊人の家で乾かすという流れも、そんなエピソードは子供のときくらいじゃないですか(笑)。あんなふうに夢中になって、童心にかえれる相手がいるのはうらやましいですね。

――デートシーンで印象的だったところは?

ゲームセンターや、自転車で二人乗りをするところとか、たくさんあります。撮影のときの記憶をたどると、空き時間も琴音ちゃんとそのままゲームセンターで遊んだりしていたので、撮影中なのか、空き時間なのか、どっちの記憶だっけ?と(笑)。すごく和気あいあいとした雰囲気でした。

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――古川さんとは「きょも」「こっちゃん」とお互いにあだ名で呼び合っていたそうですね。

僕はヒロインの方から「寡黙なのかな?」って思われることが多くて気を遣われるので、いつも作品に入ると、自分から意識して話すようにしているんです。

それで、毎回、どんなあだ名で呼ばれているかを聞くんですけど、琴音ちゃんが「こっちゃん」と呼ばれていると言うので、僕はファンの方から「きょも」って呼ばれていることを伝えて、お互いに「きょも」「こっちゃん」と呼び合うようにしました。

お会いして2日目ぐらいには、その呼び方になっていました。今、放送中のドラマ『お迎え渋谷くん』(関西テレビ)の現場でもあだ名で呼び合っていて、そういう距離の縮め方はよくしています。

――湊人の雪乃に対する視線や仕草はとても自然でした。

監督がとても丁寧に段取りをしてくださって、1、2回やってみてすぐに本番という流れではなく、僕と古川さんがお互いにスムーズにできるところが見つかるまでやらせてくださったことは大きかったと思います。

例えば、雪乃がピアノを弾いているところに、湊人が加わって連弾になるシーンは、湊人が少しずつ距離を詰めていくんですけど、「雪乃がここを弾いているときは、湊人はまだこの位置に居ないほうがいいね」とか、「この辺りまで来たら、雪乃のことをチラチラ見始めよう」と、緻密に段取りをして決めていきました。

湊人のピアノに対する気持ちの揺れ動きとか、雪乃との距離感に、監督がとても丁寧に向き合ってくださったので、演じる上ではスムーズに気持ちをつなげることができました。

――細やかな演出がされていたのですね。

「正解」を持っている監督さんでした。もちろんこちらに委ねてくださる形の演出もうれしいんですけど、僕自身そんなに芝居の技量がないので、「正解」を示してもらったほうが自分としては迷わないでいられます。

時には、僕から「ここはこうしてみたいんですけど」というような提案をすることもありましたけど、そういうときも「じゃあやってみよう」なのか、「やっぱり元のほうがいい」なのか、的確に答えを出してくださいました。

だから、僕もその答えに対して、「だったらプランを変えよう」とか、修正もやりやすくなるので、すごく助かりました。

ピアノというツールで分かり合えたり、打ち解けあえたりするのは素敵

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――今回、ピアノの演奏に挑戦されていますが、自分からやりたいという想いがあったのですか。

これには少し経緯があって。最初にマネージャーから、特にこの映画の話とかではなく「ピアノ、弾けるよね?」って確認をされたんです。そのときに、独学だし、コード弾きでロックやポップスがちょっと弾けるくらいで、クラシックは無理って答えて。

それから数週間、何の音沙汰もないから「あれって何の話だったんだろう?」思っていたところに、この映画の話が来て、資料を見てみたら「ピアノ」と書いてあったんです。「なるほど、このために聞いたんだ」と理解したんですけど、「できないって言ったのにめっちゃクラシックやん!」ってなって(笑)。

そのあと、わりとすぐに監督と顔合わせする機会をいただいて、そこで監督からも「弾いてもらいたい」と言われたので、「頑張ります」と答えました。とにかく練習が必要だと思って、早めにできるようにお願いをして、撮影の3ヶ月前から本格的に始めました。

――改めて、ピアノと真剣に向き合ってみてどうでしたか。

ピアノには美しいイメージはありましたけど、それ以外にも力強さとか、表現の幅が広くて、やりがいを感じました。発見がいっぱいありました。

――大変だったことは?

ペダルの使い方ですね。グランドピアノの屋根の部分を開けたまま演奏するシーンが多くて、そうするとペダルを踏んでいるか、いないかが見ている人からわかってしまうんです。特にピアノも含めた全体を撮るカットだと、足の動きと合っていないといけない。

正直、もう手の練習だけでいっぱいいっぱいで、足の動きまで追いついていない曲もあったんですけど、撮影をしている最中に「ここはやっぱりペダルも」って言われて。その場で10分で覚えて、本番でやるということもありました。それはさすがにしびれましたね(笑)。

――楽しかったことは?

例えば、歌で誰かとハモるとか、ギターのセッションもそうですけど、ピアノの連弾は言葉ではないもので距離が縮まる感覚がありました。ピアノというツールで分かり合えたり、打ち解けあえたりするのは素敵だなと思いました。

連弾ってカッコいいなとか、難しそうだなと、いろいろとやる前は思っていましたけど、誰かと一緒に奏でることの楽しさがあるとわかりました。

――ピアノ連弾がうまくいったとき、古川さんとハイタッチをして喜んだそうですね。

お互いにフィクションを本気でやっていて、何かをまとっている状態なのに、心が通じ合えるお芝居ができることってすごく面白いなって思うんです。本気で向き合っているからこそ、たどり着ける境地というか。そういう感覚がありました。

ただ、いくら二人でハイタッチをするぐらいのものができたからと言って、観た人がどう思うかはわからない。自分では「ここは気持ちがすごく乗せられた」と思っても、実際に本編で使われる保証はないし、自分と周りの感覚に温度差が出ることもある。けど、それもまたお芝居の面白いところでもあるのかなとは思います。

舞台をやっているときにもあるんですけど、「今日はめっちゃうまく歌えた!」と思ったら、自分としてはダメだと思っていた日のほうが「良かったね」って言われたり。そういう温度差が生じる、主観と俯瞰の違いとかも、お芝居の面白さだと思います。

――舞台で演じている最中に、素の自分に戻る瞬間もあるのですか。

舞台の場合は、若干、自分の目は持っています。逆に入り込み過ぎて周りが見えなくなってしまうことが危険なんです。例えば、セットが転換されていないかもしれないし、いるはずの人がいないかもとか、いろんなことがあるから。気づかないことで大問題が起きることもある。

だから基本的にお芝居はしているけど、どこかで自分が責任を持って見ていかなくちゃいけない部分もあります。映像の場合なら、たとえ視野が狭まっていてアクシデントがあったとしても、もう一回やれるので、そこの緊張感の違いはありますね。

公開されたらめっちゃエゴサしそう

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――今回、京本さんにとって映画での初単独主演作となりましたが、この経験によって何かご自身の中で変化はありましたか。

前提として、作品が皆さんに届いたときにどう感じていただけたかで、自分の自信になるかも含めていろいろ変わってくるのかなとは思います。

ただ現時点では、主演映画というものに憧れもあったし、何ならここ数年は自分には無縁だと思っていたので、それが20代のうちに叶ったことは、驚きであり、本当に感謝をしています。

映像作品は7、8年やっていなくて、最近になって急に主演ドラマとか、映画という機会をいただけているので、本当に奇跡のようです。

さらにそんな中で、僕に合っていると言っていただける作品に恵まれていて。今回も「ぴったりだね」と言ってもらえるものに出会えたことがうれしいです。何より今は、皆さんにどう受け取ってもらえるかが楽しみなので、公開されたらめっちゃエゴサしそうな気がします(笑)。

――何か映像のお芝居の仕事が増えるきっかけなどはあったのでしょうか。

「映像もやらせてください」って直談判したとか、自分でそっちに導かれようと動いたわけでもなく、自然と増えていったので、むしろ自分でも驚いているくらいです。

もしここ1、2年、映像のお芝居の仕事をいただけていなかったら、たぶん、音楽に全振りしていたとは思います。今は本当にぜいたくな悩みなんですけど、音楽もいろいろとやりたいことがあるので、撮影の合間にどれだけやれるかという感じになっていて。

これまで通りに求められることにもしっかり応えながら、逆にお芝居で得たことを音楽に還元することもできるので、互いに還元し合っていければいいなと思っています。

――両方やるのは大変ではないですか。

大変ではありますけど、難しいところですよね(笑)。この状態がずっと続くのがスターなんだと思いますけど、これからもそうである保証があるわけではないから、とにかく、今は求められているもので結果を出して、次につなげていくという意識でやっています。

20代に何をやってきたかによって、30代が決まるということを、周りの皆さんがよく言っているので、少なくとも自分の中では、20代の最後(現在、29歳)を駆け抜けるということを目標にしていたんです。だから、今のようにいただけるお仕事がなかったとしても、たぶん自分で仕事を作り出して、詰め込んでいたとは思います。

でもそうやって自発的に行動しなくても、舞台(『モーツァルト!』)まで、この一年はたくさんのお仕事をいただけているので、理想通り駆け抜けられそうです。数年後に振り返って「20代ラスト、めっちゃ仕事したな」って思えそうなのがすごくうれしいです。

メンバーにも観てもらいたい気持ちが強いです

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――本作では湊人がピアノで挫折をする姿が描かれていますが、京本さんは音楽活動において難しさや苦労を感じたことはありますか。

10代のころ、声変わりで苦戦を強いられていたころのことですかね。あれはしんどかった(苦笑)。当時の時代背景的に(声変わりをしていることを)言えなくて、それまで通りにめちゃくちゃ高いパートを割り当てられるんです。

心の中で「声変わりが始まっとんねん!」って思いましたけど(笑)、それでも無理をして歌うから、本番で声が裏返ってめっちゃ怒られたりしていました。

――それはどのように乗り越えたのですか。

乗り越え方がわからなくて、ただただしんどいって思っていました。でも声変わりは時期が来たら終わるので、終わったときに、奇跡的にまだ高い声が出ていたのは良かったです。

高音を失っていたら、魅力ゼロになっていたと思います(笑)。そこは一つ、救われたところです。音楽や歌を嫌いにならずにいられた理由になっていると思います。

――京本さんは親しい間柄の人との間に“言えない秘密”はあってもいいと思いますか。

難しいですね。親しいからこそ、相手の価値観や感性をわかっていて、「これを言ったらたぶん心配させるだろうな」とか、「これは理解されないかも」の塩梅もわかるから、敢えて言わないということも生まれるのかなとは思います。

お互いの関係性を変えないため、相手を困らせないために、優しさから言わないってことはあるかと。

逆にまだそんなに親しい関係性でなくても、一つ、共通で理解しあえるものが見つかると、「これをわかってくれるのであれば、今まで誰にも言ったことがないけど、これもわかるかな?」と思って言うこともあります。

そこでまた理解しあえると、出会ってからの期間は短くても深くつながれたり。初めて打ち明けるのがこの人だってことが不思議になることもありますね。

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――SixTONESのメンバーには秘密はありますか。

意識的に秘密にしていることはないですけど、「そういえば、言ってなかったな」みたいなことはあるかもしれないです。それは、メンバーそれぞれにみんなあるんじゃないですかね。

――メンバーとの関係性は、年を重ねるごとに変わってきていますか。

変わってきていますね。いい意味でメンバー間の関係性としては丸くなってきています。昨日もメンバー数人でご飯に行っている写真がグループLINEに送られてきて、行けなかった人は、それにコメントをしたり。普段の関係性はどんどん良くなっています。

でも、逆に外側、パフォーマンスを含めて、皆さんに見せる姿はより尖っていきたいです。やはりライブ後とか、体力の衰えを感じることもありますけど(苦笑)、それに反して尖っていければと思っています。

――お互いのソロ活動について話しますか。

しますね。6人で一緒に取材をする日に、「今、あの作品撮ってるの? どうなの?」とか、「いつクランクインするの?」と、そういう会話はよくしています。

共通の共演者も多いので、「(上白石)萌音ちゃん、こっちの現場にもいるよ」や、「琴音ちゃん、今、そっち(田中樹が出演中のドラマ『ACMA:GAME アクマゲーム』)で一緒でしょう?」とか。

ジェシーは『お迎え渋谷くん』を観てくれていて「1話から展開早くない?」と、感想を伝えてくれました。

――本作はまだメンバーの皆さんは観ていないんですよね?

(取材時は)誰も観れてないです。ただ今回は主題歌がSixTONESの「ここに帰ってきて」で、この曲も込みで作品という気がするので、メンバーにも観てもらいたい気持ちが強いです。

(松村)北斗は自分が出ている作品を「観てね」って言ってこないから、観てほしいって言うのは少し恥ずかしいですけど(苦笑)。ジェシーは観に行ってくれそうな気がします。

――作品の世界観に合った素敵な主題歌だと感じました。

この間、ミュージック・ビデオの撮影もしたんですけど、(森本)慎太郎が「きょも、こんないい曲を持ってきてくれてありがとう」って言ってくれたり、みんな気に入ってくれていて。だから映画を観たら、より好きになってくれるんじゃないかなって気がしています。

役を通して新しい体験ができるのはすごく楽しい

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――劇中、湊人がピアノバトルに挑む場面がありますが、京本さんが自分の得意なことでバトルをするなら、何をしますか。

最近、ちょっとハマっているのが、L'Arc~en~Cielのhydeさんの歌物まね。物まねのプロには負けるかもしれませんけど、マジで自信あります(笑)。

hydeさんに声質が近いとたまに言っていただくことがあって、高校生のころからよくラルクさんを聴いていて、家でも歌っていました。音域的にも歌いやすくて、憧れて真似をしていたんですけど、最近また、精度を上げるためにやり始めました。別に披露する予定はないけど、自己満で練習をしています。

僕はガチで研究をしているので、身近には僕に勝てる人はいないんじゃないかなと思いますけど、強いてあげるなら、Travis Japanの七五三掛(龍也)ですかね。カラオケでやっているんですけど、面白いんです。真剣にやっているのが面白いんです。

――今回のピアノのように、作品を通して新しいことに挑戦することはどうですか。

めちゃめちゃ楽しいです。自分の中にないものであれば、あるほど楽しいです。知らない世界に触れられるので。

今回はピアニストという部分もそうですけど、僕は大学に通ったこともなかったし、自分の中のマルチバースみたいな、役を通して新しい体験ができるのはすごく楽しいです。

――今後、京本さん自身の音楽活動でもピアノを使う機会がありそうですか。

もともと作曲では使ってはいたんですけど、ライブで弾くとかは……それはやらないかな。ピアノを弾いてしまうと、全体としてのパフォーマンス力が落ちてしまいそうな気がして。(ピアノのレベルが)発表会みたいな感じになっても仕方ないし。

そうなってしまうくらいなら、歌に100%の力を注いで、ピアノはプロの方に弾いてもらったほうが、気持ち良く、後悔なくできそうだなって思うんです。ピアノ50、歌50の力でやるのはちょっと怖いです。

これまでずっと歌を歌ってきているからこそ、歌のほうに重きを置きたいと思うんです。もしピアノをやるなら、ピアノも人前でやりなれておかないと。ファンの方が単に僕がピアノを弾いている姿を見て「頑張ってたね」で終わるのは嫌なんです。やるからにはちゃんと音楽として届けたいから。なので、簡単にはできないと思います。

©2024「言えない秘密」製作委員会

――京本さんは未来を知りたいですか。

よくタイムマシーンがあったら、未来と過去、どっちに行きたい?という質問がありますけど、僕は、未来ってあまり知りたくないんです。未来にたどり着いたときの達成感や、そこで見える景色を大事に待っていたいので、先回りはしたくないです。

だから現在に戻ってこられる前提で選ぶなら、過去に行きたいです。あのとき、本当に面白かったから、もう1回見たいなとか。好きな子に振られた、怒られた、そのときはすごく傷ついたけど、今見てみたら面白いのかな?とか。

戻って過去を変えたいとかではなく、そういうくだらない使い方はしてみたいですね。頭で思い返しただけでも面白いんですけど、実際に外側から見られたらもっと面白いんじゃないかと。それこそSixTONESが結成した日をもう1回、見に行きたい。未来はどうせ来るんだから、わざわざ行かなくてもいいかって思います。

――思いもよらない出来事が起こったほうが楽しいですか。

そうですね。自分にない発想とか、考え方に出会えるのは楽しいです。曲作りでいえば、自分の引き出しで作るとこういうものが生まれて、それをチームで作業をすると、「こういう要素を入れたほうが面白くなりそうだね」とか、「アレンジでこういう楽器を加えたら面白そうだね」と、自分にない発想が出てくるのでわくわくします。

僕は頑固な一面もありますけど、新しい風も常に待っていて、それも吸収して、自分のものにしていきたいです。

――最後に改めて、本作を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

公開の時期は夏で、だいぶ暑くなっていると思いますけど、そんな時期にぴったりな心地よい涼しさと、余韻がしっかり残る素敵な作品になっていると思います。個人的に、この作品が公開になるのを、この一年、ずっと楽しみにしていました。絶対に観て後悔はさせないラストが待っています。観に行こうか悩んでいる方は、とりあえず足を運んでみてもらえるとうれしいです。


全体にノスタルジックな雰囲気が漂う中、随所でピアノの美しい調べが奏でられ、まるで印象派の絵画を鑑賞しているような気分にもなる本作。ただ、いい意味でそれだけでは終わらない展開もあり、単なる恋愛映画ではないところも見どころです。

京本さんも「絶対に観て後悔はさせないラストが待っています」と言っていましたが、ぜひ映画館でその言葉の意味を味わっていただきたいです。

作品紹介

映画『言えない秘密』
2024年6月28日(金)より全国公開

(Medery./ 瀧本 幸恵)

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