規格外ミカンのジュースが「想像以上に大好評」 地域活性化へ奮闘する果樹園の園主、まさかの相続で一念発起

果樹園を営み、ミカンジュースを販売する鈴木さん=小田原市江之浦

 神奈川県小田原市江之浦の果樹園が、地元産のミカンを使ったジュースで、地域を活性化させようと奮闘している。かつて若き農家が多く、活気にあふれていたが、全国と同様、少子高齢化が進む。それでも「時間はかかっても、元気だった頃の江之浦に少しでも近づけたい」と願う。

 豊かな自然と温暖な気候に恵まれた地で「江之浦果樹園 maruesu」を営むのは鈴木麻也さん(51)。

 東京都内で会社員として働いていた。転機は2年前。実家に帰省した際、家族に告げられた。「家と畑だけど、麻也に相続することになりそう」

 正直、戸惑った。「会社員を20年くらいやってきて、農業は今日明日でできるものじゃない。どうしようって」。ただ、果樹園に心血を注ぐ祖母・登世子さんの姿を知っていた。「90歳で亡くなる直前まで畑に立つほど、本当に大切にしていた」。祖母の思いに応えたい。継ぐことを決意した。

 そうは言っても、農業に関しては初心者。右も左も分からない。あいさつのため、知り合いの農家を訪ねると、悩みを打ち明けられた。「うちのお父さんが生きていた頃は、規格外のミカンもさばいてくれていたんだけど、亡くなった後はどうしようもできなくてね」

 「規格外のミカンをジュースにしたらどうだろう」。地元企業に持ちかけ、試しに1.2トンを加工し、インターネットで販売してみたところ、「想像以上に大好評だった」。太陽光だけでなく相模湾からの照り返しもたっぷり浴びたミカンそのものの味を楽しんでもらうため、濃縮還元ではなく果汁100パーセントにこだわり、甘みと酸味のバランスに優れ、ほのかなとろみもある一品に仕上げた。

 「江之浦みかん ストレート果汁100%」は180ミリリットル500円、500ミリリットル1100円。maruesuのオンラインショップなどで購入できる。

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