稲垣吾郎、「BISTRO SMAP」からレストラン&カフェ開店まで “食”を身近に歩んだ料理の道

稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾が出演する『ななにー 地下ABEMA』(ABEMA/以下、『ななにー』)では6月2日、9日の2週にわたって、料理企画を実施。2日には「最強バズレシピ30連発!リュウジが全て伝授」と題し、料理研究家のリュウジ、さらに料理系インフルエンサーのバヤシ、ケンティー健人、もあいかすみがゲストとして登場。おいしさだけではなく、手軽さなども加味した料理レシピを公開した。

料理といえば、彼らがかつて出演していたバラエティ番組『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)で、ゲストたちのリクエストに沿ったものをSMAPが料理する「BISTRO SMAP」が人気コーナーだった。そこで「SMAPは料理上手」という印象が強くついたが、とりわけ料理にのめりこんだのが稲垣である。

稲垣は、「食の大切さ素晴らしさをNAKAMAの皆さんと共有していくことは僕の長年の夢」(2019年8月12日投稿アメーバブログより/※1)だったことから、2019年10月、“やんちゃでおてんば、遊び心を忘れないレストラン&カフェ”をコンセプトに、ディレクターとして銀座にBISTRO J_Oをオープンさせた。

「僕自身が行きたくなるような、僕の経験やこだわりをちりばめた、お客様に長く愛されるお店にしていきたいと思っています」(同ブログより)と語っていた同店ではまさに、「BISTRO SMAP」を通して行った稲垣のイタリアでの取材体験をもとにした手長エビを用いたパスタを提供するなどしている。さらに、ワイン通でも知られる稲垣は、服部栄養専門学校の講師陣と打ち合わせをしてワインメニューも充実させた。BISTRO J_Oはオープンから5年が経ったが、ファンはもちろんのこと食通たちも唸らせ続けている。

稲垣は、6月2日放送の『ななにー』でも深い目線で料理について尋ねる場面があった。特に印象的だったのが、バヤシがアレンジしたオニオンソースをかけたローストビーフサンドイッチをふるまった時。

バズらせることを目的に、本来は使用しない炊飯器でローストビーフを作ったというバヤシに、稲垣は「低温調理器を買ってしまったんですけど、炊飯器でやろうと思えば、水の温度を60度、70度でキープできるっていうこと?」と質問。バヤシは思わず「料理研究家じゃないのですみません、わからないです」と“降参”し、解説のバトンがリュウジへと渡った。稲垣がそれだけ料理について鋭い目線を持ち、研究熱心であることがわかった一幕だった。

そんな稲垣は、リュウジに「夜、ワインを飲みながら食べられる夕飯」の調理をリクエスト。リュウジは食パンを使った洋風ネギトロを作ったが、口にした稲垣は「ワインとペアリングした時が見えてきた。ブルゴーニュのシャルドネ、持ってきてくんない?」と産地と品種を具体的に指定。このやりとりを見ていて感じたのが、稲垣の“味の記憶力”である。私たちも「この味にはこういうものが合う」とざっくりとイメージすることはできても、稲垣のようにここまで細かくその味に合うワインなどを導き出すことはなかなかできない。それだけ稲垣はいろんなものを食べ、単純に味わうだけではなく知識としてしっかりストックしているのだろう。

かと言って稲垣は、仰々しい雰囲気で料理に取り組んでいるわけではない。

たとえば2018年5月6日投稿のブログでは、人気ブロガーのそっち~から教わったという茄子の揚げびたしを作ったことを報告。耐熱皿にあくぬきした茄子を並べ、サラダ油を全体にまぶしてレンジで加熱するだけの時短料理なのだという(※2)。

さらに遡って2017年11月14日投稿のブログでは、草彅剛からもらったバルサミコ酢でソースを作り、冷蔵庫にあった刺身用のノルウェーサーモンなどにかけて食べたと綴っていた(※3)。「冷蔵の奥にお刺身用のノルウェーサーモンが潜んでいたので」というところがポイントで、ありものでささっと作った手料理であることを窺わせた(確かに手が届かない食材・料理ではなく、私たちも気軽に作れそうである)。

ちなみに2018年11月28日放送のラジオ番組『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)では、食事を目的とした旅行には行ったことがないと言い、「気持ちはわかります。博多まで行くこと含めての楽しみですよね」「旅行先でその土地でしか食べられないものを食べる、という順番ならあるかもしれない」と理解を示しながらも、そこに労力をかけるのであれば「近くにある2番目に食べたいものでいい」と話していた。

これらの言葉をすくいとってみると、稲垣は基本的には、食べるうえでも、作るうえでも「料理は身近であるべきだ」と考えているように思える。どうしても「料理」というと、手間暇をかけたものが「素晴らしい」と思われがち。でも実際はそうではない。簡単でもいいので作ること自体が「素敵なこと」なのだ。こと私たちの生活に置き換えてみると、仕事で忙しかったりするとついつい料理まで手がまわらなかったりする。そんな時、ちょっとでも何かを作ってみると、「こんなに忙しいのに、15分くらいで一品作っている自分は偉い」と自己肯定感が上がったりする。筆者はまさにそうなのだが、料理は、やってみるととても気持ち良いものなのだ。

稲垣も、料理は決して背伸びするものではなく、時短料理でも、ありものを使った料理でも、なんでもいいので気軽に楽しむべきだと捉えているのではないだろうか。そう考えると、『ななにー』でバヤシが炊飯器でローストビーフを作ってみせたことに興味津々になっていた理由も頷ける。

そういった料理観が根底にあるので、逆にBISTRO J_Oでは「せっかくわざわざ外出して食べにきてもらったのだから、とびっきりのものを味わってもらおう」という特別感のあるメニューを揃えているのではないだろうか。「そこでしか食べられないものを振る舞う」という点では、前述した『編集長 稲垣吾郎』での「その土地でしか食べられないものを食べる、という順番ならあるかもしれない」という言葉にも近い部分がある。

稲垣を見ていると、楽しんで料理をしていることがわかる。その姿に、私たちも「自分もちょっと料理をやってみよう」と背中を押されるものがある。

※1:https://ameblo.jp/inagakigoro-official/entry-12505306146.html
※2:https://ameblo.jp/inagakigoro-official/entry-12373843785.html
※3:https://ameblo.jp/inagakigoro-official/entry-12328444766.html

(文=田辺ユウキ)

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