米国大使が「米中関係はある種の正常な状態回復」と発言―海外中国人向け情報サイト

米国のバーンズ駐中国大使は6日行った講演で、米中関係は「ある種の正常な状態」に回復したと表明した。だだし、かつての状態には戻らないという。写真は米国大使館のウェイボー(微博)への投稿より。

海外在住中国人向け情報サイトの留園網は7日、米国のバーンズ駐中国大使が6日に、米国側組織のアジア協会で行った米中関係をテーマとする講演を紹介する記事を掲載した。バーンズ大使は米中関係は「ある種の正常な状態」に回復したが、両国の協力がかつてと同様になることはないと主張した。

米中関係は「ある種の正常な状態」に戻ったが

バーンズ大使は米中関係について、バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が2023年にカリフォルニア州で会談してから「ある種の正常な状態」に戻ったと述べた。大使が22年初頭に駐中国大使に就任した際よりも、良好な意思疎通ができるようになったという。

バーンズ大使は、5月末から6月初頭にかけて開催されたIISSアジア安全保障サミット(シャングリラ会合)で米国のオースティン国防長官と中国の董軍国防相が対話したなどの、米中両軍の交流が特に重要だと述べ、さらに「両国の空軍と海軍が非常に接近した位置にあること。特に南沙諸島と西沙諸島、南シナ海の国際水域と空域、尖閣諸島と東シナ海の諸島、当然ながら激しい係争が存在する台湾海峡があることを踏まえると、われわれ両軍は対話せねばならない」と表明した。

バーンズ大使は、米中はAIリスクに関する議論や違法薬物のフェンタニル対策での協力、民間交流でも進展があったとの見方を示した。そして、米中両国は長期的な戦略的競争関係にあるが、両国は意思疎通を保ち、衝突を管理抑制する必要があるとも指摘した。

過去の対中接触は正しかったが、今の中国は別物

バーンズ大使は、「われわれがトウ小平、江沢民、胡錦濤と接触しようとしたのは正しかったと思う」と述べ、「米中は北朝鮮、イランの核問題解決で協力してきた。例えば国連安全保障理事会でイラン制裁決議案を採択したり、(イランを巡る)6カ国協議に共同参加するなどしてきた」と説明した。

バーンズ大使は、米国が中国と協力する機会が過去のようでなくなったことは、中国の指導者の変化と関係があるとの見方を示し、「世界に目を向ければ、24年の中国の行動は全く異なる。攻撃的で一部の近隣諸国を一顧だにせず、また、中国国内での抑圧もさらに大きくなった」と論評した。

バーンズ大使は、「今の中国はアジア太平洋、さらには世界全体でより大きな影響力を勝ち取ろうとしていると考えている」「中国の指導者は『東は昇って西は下がる』と繰り返しているが、これは中国の間違いだ」と述べ、「彼らが間違っている点は、日本、ドイツ、EU、NATO、米国に対する予測だ」との考えを示した。

バーンズ大使は、中国指導部の判断ミスの例として、「激烈なロシア・ウクライナ戦争で、中国がロシアを支援することに欧州がこれほど強く反対するとは予想していなかった。彼らは思い違いをしていた。私は1980年代から日米関係を観察し、関与してきたが、現在のわれわれと日本との同盟は史上最強だ」と述べ、さらに日本の国防費の増加や台湾問題に対する日本の厳しい姿勢を挙げ、また、米国とフィリピンとの同盟の復活も指摘した。バーンズ大使は「これは民主諸国が立ち上がり、『われわれは平和の中で暮らしたい』と言っているのだ」と論じた。

バーンズ大使は台湾問題について、米国の「一つの中国政策」は1972年に提起されて以来変わっておらず、米国は依然としてこの政策を守っていると主張し、「米国の行為が中国の態度変更を触発したという見方があるが、私は正反対だと思う」と述べた。

中国のウクライナ戦争関与に強い懸念

バーンズ大使は、「中国はロシア・ウクライナ戦争における彼らの立場が、中国と米欧の関係にどれほど深くマイナスの影響を与えているのか、本当の意味で理解していないようだ」と述べ、「中国企業がロシアの防衛産業部品や技術、重要材料を輸出する活動は、ウクライナの戦場におけるプーチン大統領の能力を大きく強化している」と指摘した。バーンズ大使は、米国は中国政府に対して、これらの企業がこれらの部品を提供することを阻止するよう求めたが、中国側はそうしなかったと紹介し、「これが、われわれの関係における真の問題だ」と述べた。

バーンズ大使は、欧州における対中観について「NATOもEUも、今や中国を戦略的対抗相手と呼んでいる。なぜなら、中国は欧州の死活に関わる問題でロシアを支持しているからだ」と説明し、「彼らは自分たちが何をしているのか、ロシアを支援することが欧州やわれわれとの関係に深い悪影響を及ぼすことを本当には理解していないと思う。われわれは中国に、欧州の将来は米国の核心的利益の一つだと伝えてきた」と述べた。

それでも米中は対話の継続が必要

バーンズ大使は、米中両国は特に軍事や経済分野で対話を続けねばならないと主張した。「米中の軍事衝突は米国、中国、全世界にとって破滅的だ」と述べ、「われわれ(米国と中国の)競争と意見の相違について、次の10年期(2030年代)まで長く続くと予想している。われわれは責任を負う方法として、門戸を開いたままにする」と述べた。

また、バーンズ大使は、(米国による)経済分野での中国切り離しは認められないと論じ、「われわれは(中国切り離しが)世界経済にダメージを与え、われわれと中国の経済にダメージを与えると考える。技術や国家安全保障に関連した貿易では、リスクを軽減している」「もちろんながら、関係の安定化を目指す非常に困難な対話を閉ざすべきではない。このような困難に満ちた世界にあって、外交は一つの良いことなのだ」と述べた。

講演に途中妨害、「異なる意見の表明は有益」と指摘

バーンズ大使の講演は、ロシアとの関係で中国を批判したところで、3分間で2度にわたり中断させられた。動画では、客席側から女性が何か言っているが、内容は聞き取れない。バーンズ大使はその後、「誰もが異なる見解を持つ権利がある。われわれはその一点で、米国を大いに愛している。人々はこのような会合で立ち上がり、異なる意見を述べることができる。それがマイナスとは思わない」と述べた。

バーンズ大使は講演の最後の部分で、在中国米国大使館が中国のソーシャルメディアで開設した公式アカウントの状況を説明した。一部の米国の政策内容や当局関係者の発言、著名人のインタビューについては、中国の「ネットファイアウォール」の検閲により発表できないことが多いという。バーンズ大使は、「われわれは米国の民主と言論の自由、思想のせめぎ合いの側面を示したいだけだ」「中国の状況は、明らかにそうなっていない」と紹介した。(翻訳・編集/如月隼人)

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