ひと月で3度の“戦力外” 家族を残して毎回引っ越しも…元ハム右腕を突き動かす「情熱」

ヤンキースのマイケル・トンキン【写真:ロイター】

元日本ハム・トンキンは4月だけで3球団でプレー、ヤ軍では13登板で防御率0.93

■ドジャース 11ー3 ヤンキース(日本時間9日・ニューヨーク)

度重なる“戦力外”も挫けない。元日本ハムでヤンキースのマイケル・トンキン投手は、8日(日本時間9日)の本拠地・ドジャース戦に2試合連続で登板。34歳右腕は大谷翔平投手と対戦はなかったが、6回途中から1回2/3で無安打無失点。6試合連続無失点と安定した投球を見せた。

「素晴らしい。グレートだ。こういうチームでプレーできて夢のようだ」

昨年12月にメッツと1年100万ドル(約1億5000万円)で契約。開幕から3試合登板した後の4月5日にメッツから事実上の戦力外となり、9日からツインズ、17日から再びメッツと渡り歩いた。22日には今季3度目の戦力外を受けてヤンキースへ。ひと月で3球団に所属する激動の4月となった。

心が折れそうな移籍ラッシュ。全てを前向きに捉えるようにしたという。「何回も引っ越しをした。でも、メジャーに戻るためのプロセスだと考えた。成功するにはどうすればいいか考えた」。トンキンの故郷、ロサンゼルス近郊にいる妻、2人の子どもと離れ離れの生活を送っているが、必死の毎日だ。

過去のことを思えば、メジャーにいるだけで幸せだという。コロナ禍に見舞われた2020年は5月にFAに。まだ30歳。「ここでキャリアを終わらせることはできない。もう1回チャレンジしたかった。プレーできない苛立ちはあったけど、身体と肩を休めることができたし、メカニックの改善にも取り組めた。日本でプレーした翌2019年に3Aの何チームかに所属したし、独立リーグでもプレーした」。野球への真摯な思いが突き動かしている。

「野球に対しての情熱は常にある。好きではなかったら、やり続けることはできない。2008年、18歳の時に(初めて)契約を結んだんだ。引退した時に、後悔は絶対にしたくない。可能な限り最高のキャリアで終えたいし、家族のためにできることは全てやりたいんだ」

ヤンキースでは13試合登板して1勝1敗、防御率0.93。ようやく安定した結果がついてきた。今では新たな目標が芽生えてきている。

「理想は今年ここでいい成績を残して、来年もヤンキースでプレーすることだ。それがベストシナリオだ。でも、僕の野球人生は常に予測不可能。NPBに戻る選択肢を消すことは絶対にない。(NPBは)私にとって素晴らしい機会だった。日本では後半戦にあまりいい投球ができなかった。一歩下がって自分がどういう投手かを見直せたことを学んだ。NPBでプレーできたことは大きかったよ」

球界の厳しさを十分に味わった201センチの長身右腕。どこにいても懸命に右腕を振っているのは間違いなさそうだ。(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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