光と音、触って落ち着く「センサリールーム」ドナルド・マクドナルドハウスに

by 中林 暁

ドナルド・マクドナルドハウス さっぽろ(さっぽろハウス)

北海道札幌市の「ドナルド・マクドナルドハウス さっぽろ」は、照明などを活用することで子供が落ち着いて過ごせる部屋「センサリールーム」を開設。5月21日に報道陣向けに公開した。利用開始は6月10日から。

新設されたセンサリールーム

ドナルド・マクドナルドハウス さっぽろ(さっぽろハウス:北海道札幌市手稲区金山1条1丁目2-5)は、病気に向き合う子供と家族のための滞在施設。隣接する北海道子ども総合医療・療育センター(コドモックル)に、遠方から入院または通院している子供やその家族の負担を軽減することを目的に開設された。個人や企業による寄付で運営し、利用家族は1人1日1,000円で滞在できる。ドナルド・マクドナルドハウスは世界に約380カ所、国内12ハウスを展開している。

ドナルド・マクドナルドハウス さっぽろ(さっぽろハウス)。北海道内の様々な地域から子供とその家族が訪れる。遠方だと診療後の時間も遅くなることから、宿泊滞在をサポート

今回さっぽろハウスに新設した「センサリールーム」は、光や音などに配慮して、視覚や聴覚などを心地よく刺激するように整えられた空間。身体や感覚に病気や様々な特性を持つ子供や、その家族が利用できる。

小さな個室に、光ファイバーの幻想的な明かりや、照明型プロジェクターの映像など、ゆっくり会話などができる落ち着いた空間にするための演出が施されている。これらは直接的な治療効果を持つものではないが、子供の病気や障害といった日々の不安や緊張に対して、治療の合間の心身のリフレッシュや、良いコンディションで治療に臨む手助けになることが期待されている。

さっぽろハウス内のセンサリールーム
センサリールームを先行体験した子供とその家族の様子

開設の資金はクラウドファンディングで募り、全国の427名から合計516万2,000円の支援が集まった。設置はパナソニック エレクトリックワークス社が実施。LED照明などを手掛ける同社は、これまでセンサリールームについて、ショールームや商業施設、保育園などでの体験、大学との共同研究などを通じて社内外で述べ3,000名以上に対して検証を実施。そうした活動を知ったさっぽろハウス側が依頼する形で実現した。

パナソニック エレクトリックワークス社によるセンサリールームの取り組み

センサリールーム内に使われている機材は、スポットライトやナノイー発生器、プロジェクターなどはパナソニック製品が多いが、同社製品に限定するわけではなく、空間コーディネートという形で提供している。

北海道子ども総合医療・療育センターの髙室基樹センター長は、「とても安らげる空間。子供の時に作ったような秘密基地の雰囲気があって“いい感じの手狭感”という印象を持ちました」と説明。

隣接する北海道子ども総合医療・療育センター(コドモックル)の髙室基樹センター長

小児科医である髙室基樹センター長は、センサリールームの中でも特に、見るだけ、聞くだけではなく手で触るなど一度にいろいろな感覚の刺激が受けられることを高く評価し「子供の発達には、実は触ることがすごく大事。リハビリなどでも赤ちゃんやお子さんにいろんなものを触ってもらう、足の裏で踏んでもらうということを大事にしています。みなさんもぜひ触っていただくと分かると思います。大人も子供も安らげると思います」と語った。

北海道子ども総合医療・療育センター

地元のプロ野球・北海道日本ハムファイターズの中島卓也選手からもビデオメッセージが寄せられた。選手会として、シーズン成績に応じた寄付をさっぽろハウスに行なっている中島選手は「日々、病と向き合い頑張っているお子さんと家族にとって、心からリラックスできるのは大切な時間。私にも小さな息子がいますし、私自身もケガなどで苦しむ時期には家族の存在が何よりの助けになります。ハウスをより多くの方々に知ってもらい、支援の輪がさらに広がっていくことを願っています」とコメントした。

北海道日本ハムファイターズの中島卓也選手

実際にセンサリールームに入ってみた。広すぎず、明るさはやや暗めで、周りの騒音などが入らないものの全くの無音ではなく、わずかに音が聞こえる程度。ヨギボーなど触り心地のいいクッションもあって、大人でも無心で落ち着けそうな空間だと感じた。

パナソニックの担当者によると、これまでの検証では、子育て中のお母さんが、これまで日々の緊張感が高かったためか、ルーム内で落ち着いて眠ってしまうことも少なくなかったとのこと。普段は外へ出しにくいストレスなど、子供に限らず現代の人々にとって周りの情報を適度にシャットアウトしながら五感を適度に刺激するような時間や場所が、気持ちの入れ替えにつながるのかもしれない。

ドナルド・マクドナルドと、北海道日本ハムファイターズ マスコットのポリー・ポラリスがお出迎えしてくれた
さっぽろハウスは、子供と家族が泊まれる個室のほか、リビングやダイニング、キッチン、プレイルーム、図書館などがあり、外には野菜や花などの畑も。運営費は募金や寄付でまかなっており、地域のボランティアによって運営が支えられている。部屋内には、利用者による日々の想いを記したノートも

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