冷却力競争は激化の一途!付加価値もさまざま、王座はどの製品に?【PCパーツ100選 2024 CPUクーラー編】 DOS/V POWER REPORT 2024年冬号の記事を丸ごと掲載!

by DOS/V POWER REPORT編集部

性能向上のカギはCPUクーラーにあり!

長年PC自作をしている人ほど、CPUクーラーはCPU温度を下げたり静音性を向上させたりするためのパーツだと思っているかもしれない。確かに昔のCPUなら静音性に目をつむれば安いクーラーでも十分冷却できたし、それでCPU性能を100%発揮させられただろう。高性能CPUクーラーが重要になるのは主にオーバークロックをするときの話だった。

しかし近年はCPUの高クロック化やそれに伴う発熱の増大が著しく進行しただけでなく、自動オーバークロック機能が高度に発達したため、CPUクーラーはCPU性能を左右するパーツとなってしまった。

Intel CPUにおいては、Core i7以上やK付きモデルがとくにCPUクーラーの冷却力の影響を受けやすい。ミドルレンジ以上のマザーボードは、CPUの電力制限が無制限になっている場合が多く、冷却不足だとブースト動作を維持できない可能性があるので、余裕のある36cmクラスの水冷を選ぶ人が近年は増えた印象だ。もちろん空冷でも冷やせなくはないが、サーマルスロットリングを発生させずに高い連続負荷に耐えることを目指すと、簡易水冷タイプに分がある。

一方、AMD CPUにおいては特定のCPU温度を超えないようにブーストクロックを制御するので、Intel CPUのようなサーマルスロットリングは起きにくい。ハイエンドCPUにエントリークーラーのような極端な組み合わせでも動作はするが、性能はかなり低下する。冷やせば冷やすほどに性能が向上するのはIntel CPUと同じなので、Ryzen 7以上は大型のハイエンド空冷や24cm以上の簡易水冷クーラーを使うのが望ましい。

ベンチマーク2023年を代表する最強CPUクーラーはどれだ!?

今回の検証では空冷・水冷を7製品ずつ、合計14製品を用意した。水冷においては昨今大きなニーズがある36c mクラスを6製品、強力な冷却力が特徴の42cmクラスを1製品用意。ファンの制御はマザーボードの標準設定を使用し、負荷テストにはBlender Benchmarkを使用した。

CPUにはIntelのハイエンドCPUであるCore i9-14900Kを使用。CPUの電力設定だが、標準の無制限設定だと全製品冷却力の限界まで消費電力が上がってしまい温度が横並びになってしまうので、今回はPL1=PL2=125Wに設定した場合と、同じく253Wに設定した場合の2通りで高負荷時のデータを計測した。

まずは空冷クーラーのCPU温度を見ていこう。もっとも温度が低かったのはDeepCool ASSASSIN Ⅳで125W高負荷時に53℃、253W高負荷時に81℃を記録。Noctua NHD15も253W時に81℃を記録。両社の最強対決はさらに電力制限を引き上げないとつかないのかもしれない。

それ以外のツインタワークーラーは125W高負荷時に横並びとなった。DeepCool AK620が1℃低い温度を記録しているが、CPS G6やサイズ FUMA3も65℃と奮闘しており、このクラスはかなりの激戦だ。なお、JIUSHARK JF13K DIAMONDは253W時に96℃と高い温度を記録しており、ハイエンドCPU向きではないだろう。

価格差があまり大きくないこともあり、最近は36cmクラスが人気になっている。PCケース側の対応が進んだのも大きい

水冷クーラーの結果は少し番狂わせが起きてしまったが、空冷クーラーよりも全体的にCPU温度が低い傾向が見て取れる。エントリークラスのDeepCool LE720でさえハイエンド空冷クラスの性能を発揮している。42cmクラスのARCTIC COOLING Liquid Freezer Ⅱ 520が36cmモデルの後塵を拝しているのは興味深いが、これはベースプレートのサイズが小さめということや、静音性を重視した設計の影響かもしれない。今回の環境ではCPU温度が80℃を超えないとファンがフル回転しないため、80℃を下回っている水冷クーラーはまだ冷却力に余裕があると言える。

AsetekのOEM製造となる玄人志向 KURO-AIOWC360Lは人気にたがわぬ高い性能を発揮し、ニューカマーのShenzhen Fluence CPS DE360は125W高負荷時にさらに低い54℃を記録。36cm水冷ながら最安で1万円を切るProArtist ECONOMIC-AIO5-SEは253W高負荷時に90℃とAK400を上回る高い温度を記録している点は気がかりだ。

動作音の結果も見ていこう。前述した80℃からファンがフル回転という情報も加味して見てもらいたいのだが、動作音が大きい印象のあった冷却性能の高い水冷クーラーが思いのほか健闘している。冷却力の高いクーラーほどファンの回転数を下げられるので、それが静音性向上につながっている。ポンプの動作音はどうしようもないが、近年は静音性を目的に高冷却クーラーを利用する人も増えている。

空冷の結果を見ていくと、AK400の静音性の高さに驚かされる。冷却性能は控えめだが、コスパと静音性を求めるなら本命だろう。ハイエンド対決ではNoctua NHD15の静音性の高さも相変わらず健在だ。2018年に発売されたCPUクーラーとは思えない。新製品としてはサイズ FUMA3が人気モデルあるDeepCool AK620に負けない静音性を見せた。冷却性能も同等なのでコストパフォーマンスは抜群だ。水冷においては冷却性能では控えめだった42cmクラスのLiquidFreezer Ⅱ 520が圧倒的な静音性を発揮しているほか、MSI MAG CORELIQUID M360も高負荷時に高い静音性を発揮している。

大型水冷はケーブルの取り回しにも注目

Corsairの「iCUE LINK」はシステムハブを介すことでケーブル1本で複数のARGBファンを連結・制御可能なソリューションだ

簡易水冷はARGBファンが3基あるだけで6本のケーブルを接続する必要があり、マザーボード側に接続するケーブルを考えるとさらに増える。これに対処するためメーカー側もデイジーチェーン方式を採用したりファン同士をコネクタ接続にしたりするなどの独自機能をうたっているので、購入時はそのあたりも要チェックだ。

[TEXT:清水貴裕、多賀ひろし]

PCパーツ100選 2024

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今回は、2023年末に休刊したDOS/V POWER REPORT「2024年冬号」の記事をまるごと掲載しています。

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