感染症を題材とした小説の世界 【第1回】日本で新型コロナウイルスによる感染者が初めて確認されてから現在に至るまでの流れ

はじめに

新型コロナウイルスによるパンデミックの発生から現在に至るまでの流れ

《世界の流れ》

中国・武漢市で原因不明の肺炎による集団感染が2019年12月8日に発生したとWHO(世界保健機構)に報告された。

2020年1月9日には中国国営メディアの報道で、中国の専門家グループが新型コロナウイルスを検出し、そのウイルスによる集団感染が華南海鮮卸売市場で発生したことが明らかになった。数カ月もたたぬ間にその新型コロナウイルスは、アジアからヨーロッパ、北アメリカなど世界中に拡散していった。

武漢で確認された従来型ウイルスは、より感染力が強いアルファ株、アルファ株よりさらに感染力が強く病原性が高いデルタ株、そしてデルタ株よりもさらに感染力が強いが病原性が低いオミクロン株と変異を繰り返し続けている。

WHOが世界の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年1月30日に「緊急事態宣言」を発出してから3年が経過した。イギリス、アメリカ、日本ではオミクロン株が90%以上を占める状態が続いている。

2023年2月16日現在、世界の新型コロナウイルスの感染者数6億7321万6440人、死者数685万6055人に達している(ジョンズ・ポプキンズ大学発表)。

アメリカ、中国、ヨーロッパ諸国などでは、ゼロコロナ対策からウイズコロナ対策に移行する動きが盛んになってきている。

《日本の流れ》

日本では2020年1月16日、厚生労働省が国内初の新型コロナウイルス感染者の確認をしてから2023年3月の時点で感染者3352万7123人、死者7万4669人(ジョンズ・ポプキンズ大学発表)に達している。

一般に、新型コロナウイルスによる感染者、死者の増減などの推移を確認するため感染の山と谷を一つの波として時系列に表現する方法が採られている。日本では、新型コロナウイルスによる感染者が初めて確認されてから、2023年9月の時点で第9波までの波を

【第1波】(2020年1月~5月 致死率5・34%)

最初の波は、2020年4月11日をピークとする波である。全国の一日当たりの新規感染者数は720人を記録した。

・ 2月27日、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」内で集団感染が発生した。

・ 安倍元首相が布マスクの全戸配布を表明した。

【第2波】(2020年7月~9月 致死率0・93%)

2020年8月7日をピークとする波である。全国の一日当たりの新規感染者数は1605人を記録した。

・ 4月7日、東京などに初の「緊急事態宣言」が発出された。

・ GoToトラベルが開始された。

・ 4月16日、国民一人当たり一律10万円の支給が決定された。

【第3波】(2020年10月~2021年2月 致死率1・82%)

2021年1月8日をピークとする波である。全国の一日当たりの新規感染者数は7956人を記録した。

・ 1月7日、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の4都県に「緊急事態宣言」が発出された。

・ 2月17日、医療従事者へのワクチン接種が開始された。

【第4波】(2021年3月~6月 致死率1・88%)

2021年5月8日ピークとする波である。全国の一日当たりの新規感染者数は7234人を記録した。

・ 従来型ウイルスより感染力の強いアルファ株への変異が進行した。

・ 4月5日、「まん延防止等重点措置」が大阪、兵庫、宮城の3府県に初めて適用された。

・ 菅元首相が1日100万回接種を目指すことを表明した。

【第5波】(2021年7月~9月 致死率0・32%)

2021年8月20日をピークとする波である。全国の一日当たりの新規感染者数は2万5995人を記録した。第5波でこれほど多くの感染者が増大したのはアルファ株以上に感染力の強いデルタ株の影響であった。

・11月30日、オミクロン株が国内で初めて確認された。

【第6波】(2022年2月~6月 致死率0・17%)

2022年2月2日をピークとする波である。全国の一日当たりの新規感染者数は10万447人を記録した。初めて10万人を突破し過去最多を更新した。

【第7波】(2022年7月~9月 致死率0・11%)

2022年8月24日をピークとする波である。全国の一日当たりの新規感染者数は7969人を記録した。

・10月11日、全国旅行支援が開始された。

【第8波】(2022年10月~2023年9月 致死率0・18%)

2023年1月7日をピークとする波である。全国の一日当たりの新規感染者は9475人を記録した。

・ 新規感染者数の発表が「全数把握」から「定点把握」に変更された。

・ 新型コロナウイルスが感染法上の2類から5類に移行した。

・ 5月8日、WHOからオミクロン株が「変異株EG・B」へと置き換わりが進んでいるとの発表があった。

【第9波】(2023年9月~)

・ 10月3日、ノーベル生理学・医学賞が、カタリン・カリコ氏、ドリュー・ワイスマン教授に贈られた。新型コロナウイルスに対する「mRNAワクチン」につながる基礎技術が評価された。

(2023年1月15日付、22日付、10月3日付の朝日新聞より)

パンデミックで一変した私たちの社会

3年に及ぶ新型コロナウイルス禍は、私たちの社会に様々な影響を及ぼしている。

航空、鉄道などの交通業界、観光業界、飲食業界などが大きな打撃を受けた。オンライン会議や在宅業務など働き方に大きな変化が起こった。失業率が高くなり職を失う人も増えた。

外出制限や人と人との接触制限などで人付き合いが希薄になった。コロナ感染者や家族に対するいわれのない差別意識の発生や行き過ぎた同調圧力の動きなど心理的な分断も広がってきた。


※本記事は、2023年12月刊行の書籍『感染症を題材とした小説の世界』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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