政治資金は、誰がどのくらい負担すべき? 世界と比べてみたら(原口和徳)

政治資金規正法をめぐる議論が、国会の主要テーマとなっています。

日々、様々な話題が取り上げられていますが、そもそも政治家や政党の活動資金は、国や企業など、誰がどのくらい、どのような手段によって支えていくべきなのでしょうか。

ほかの国との比較を通して、日本の特徴や改善の方向性を探ってみませんか。

政党はどのくらい公的な資金に支えられているのか?

OECDの報告書(民主主義における資金調達、2016年)では、各国の政党等の政治活動がどの程度、国からの助成金で支えられているのかを2010年前後のデータをもとにまとめています。

表1:政党収入に占める公的資金とそれ以外の資金の割合(2007年~2015年)

ギリシャやトルコのように公的な資金が政党の活動の90%を支えている国もあれば、イギリスやオランダのように35%ほどの国もあります。

政治資金収支報告書から、日本の状況も確認してみましょう。

国政政党の収入のうち、政党交付金が占める割合は2022年41%、2021年44%でした。ただし、国政政党のうち、日本共産党は政党交付金を受け取っていません。そこで、対象から日本共産党を除外して計算をし直してみると、政党交付金が占める割合は2022年55%、2021年61%となります。

日本の政党交付金って多いの?

政党交付金制度は、相次ぐ政治と金の問題を受けて成立した政治改革四法(1994年)において導入されました。今年は約315億円が国政政党へと配分される予定ですが、この金額は他国と比べて大きいのでしょうか。

表2:政党交付金(2015年実績)の比較

表2では、2015年の実績をもとに、ドイツ、フランス、イギリスとの比較を行っています。政党交付金の規模は約320億円の日本が一番大きく、次いでドイツ約210億円、フランス約85億円となっています。

人口規模の影響を考慮して、国民1人当たりの金額を算出してみると、最も大きいのはドイツ256円、次いで日本251円となります。

なお、公費助成のユニークな取組としては、政党交付金とは別に野党だけを対象とした資金援助制度(2015年度実績 約14億円)を設けているイギリスの取組があります。

匿名での寄付に対する制限も国によって様々

政治資金パーティーにおける公開基準で注目を浴びる匿名での政治献金の可否も、国ごとに違いがあります。

ドイツは、1回500ユーロ(1ユーロ170円とすると、8.5万円)を超える出所不明または匿名の寄付の受領を禁止しています。

一定の金額を超える寄付については、現金での寄付を禁じることで、寄付者を明確にしている国もあります。フランスでは150ユーロ(2.55万円)を超える寄付については小切手や銀行振り込み等によるものとしており、現金による寄付を禁じています。同様の規制は、アメリカやスロベニアでも適用されています。

寄付をする側の会計書類への記載を義務付けることで、寄付行為を可視化している国もあります。

イギリスでは2,000ポンド(1ポンド200円とすると、40万円)を超える寄付をする場合には、貸借対照表等とともに提出する取締役報告書に寄付先と金額を記載する必要があります。同様に、アイルランドでも一定金額以上の寄付をする法人はその企業の年次報告書に記載する必要があります。

金額によらず、匿名での寄付そのものを禁じている国が複数あることも確認しておきましょう。表3にある通り、OECD加盟国の中で、半数を超える20か国で政党に対して匿名で寄付することが禁止されています。

表3:OECD加盟国における政党に対する匿名での寄付の実施可否

政治資金に関する情報は見つけやすい?

政治と金をめぐる報道によって、日々、情報が更新されていくのを目の当たりにして、「なにが起きているのかが、どうしてこんなにわかりにくいの」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。政治資金に関する情報の公開方法やその使い勝手にも、日本と他国との間で違いが生じています。

アメリカやイギリスでは、政党や政治家による収支報告書が選挙管理委員会等のwebサイトに掲載され、データの集計や抽出を行うことが可能になっています。

日本では政治資金収支報告書をオンラインで提出することが可能ですが、日経新聞の報道によると、その利用率は2022年分で5.7%、24道県において1件もオンライン提出がありませんでした。その結果、インターネット上で公開されている政治資金収支報告書は紙をPDF化したものがほとんどとなり、スムーズにデータを読み取り、分析等することができなくなっています。

また、政治資金収支報告書が公開される場所も、対象の政治団体の活動範囲によって、総務省となるのか都道府県の選挙管理委員会となるかが分かれています。そのため、必要な情報を取得するためには、利用者に一定の知識が求められる状況になってしまっています。

政治への信頼回復に向けて望まれること

政治資金規正法の改正案は、6月6日に衆議院本会議を通過し、7日からは参議院での審議が行われます。参議院での議論を通じて、法案の実効性を高めるための検討は深まっていくのでしょうか。

物価高や少子化対策、安全保障など、様々な重要課題がある中でも、政治と金を巡る議論に多くの時間や資源が投じられ、また、私たちが納める税金から政党助成金も支払われ続けています。

一連の問題によって損なわれてしまった「政治への信頼」を回復していくためにも、他国の取り組みなどからもよいものは柔軟に取り入れ、より実効性のある仕組みや運用ルールを作り、実行していくことが求められます。

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