職場の熱中症防げ 暑さ指数把握、換気徹底 茨城県内企業の現場対策

暑さ指数(WBGT)を確認しながら水分補給する作業員=茨城町常井

茨城県内の企業が現場の熱中症対策に力を入れている。茨城労働局によると、県内では3年連続で職場での熱中症による死亡事案が発生。今年も猛暑が予想される中、企業は「暑さ指数(WBGT)」のモニターを表示したり、送風機内蔵の空調服着用を促したりして取り組む。同局は対策重点期間の7月に向け、WBGTの把握など各職場に準備を呼びかける。

同局によると、建設業や運送業など炎天下での作業を要する業種で特に注意が必要。屋内で機械設備の熱がこもり、換気できない環境にあるなどの理由で製造業もリスクは高い。

2023年4~10月の県内の職場における熱中症罹患(りかん)者数(休業4日以上)は30人、うち死者は1人。22年は35人で、死者は3人に上った。21年は13人のうち1人が亡くなった。

昨年の死亡事例は20代の外国人作業員。駐車場の舗装工事で午前中から資材運びをしていたが、午後2時ごろ気分が悪くなり、車内で休憩した。その後病院に搬送されたが、熱中症の疑いで死亡した。これを受け同局は、今年から技能実習生の熱中症対策推進を監理団体に協力要請した。

水戸地方気象台によると、県内14観測地点のうち1地点でも25度以上の夏日を観測した日が、4月は10日間、5月は21日間あった。4月の水戸の平均気温は平年より3.3度高く、今年も厳しい暑さが予想される。

各職場では対策強化に取り組む。県内のトンネル工事を請け負う総合建設業の安藤・間は、一部で炎天下での作業を要する。小まめな水分補給のほか、暑さ指数をモニターに表示し、数値によって作業中断などの目安として使う。数値が高い日は作業効率の低下を見込んだ工程表を作る。

大和ハウス工業竜ケ崎工場は、住宅部材の溶接や集積を行う工場内に気温低下効果のあるミスト付き送風機を設け、換気を徹底。1時間ごとにチャイムを流して休憩を促す。小型送風機内蔵の空調服を中心に、対策グッズの購入に補助金を出し、従業員に着用を勧めている。

同局は5月に「クールワークキャンペーン」を開始。職場を巡回し、対策を周知する。気温や湿度から算出する暑さ指数を重視し、数値に応じて休憩を取るなどの対策を求める。

梅雨明けや長期休暇明けに少しずつ暑さに体を慣らす「暑熱順化」も促し、7日以上かけて作業時間を調整し急な環境変化で体調を崩すのを防ぐよう啓発している。同局健康安全課は「誰でも熱中症になる可能性はある。異常を感じたら、ためらわず救急車を呼んでほしい」と呼びかける。

■対策グッズ販売強化 水冷服や冷感手袋 小売店

熱中症を防ごうと、茨城県内の小売店では対策商品を充実し、販売を強化している。

ホームセンターの山新グランステージ水戸店(水戸市)は4月上旬から、前倒しで作業現場向け専用の売り場を展開してきた。

空調服や接触冷感手袋のほか、注目されている水冷式ウエアも取り扱う。服に張り巡らされたチューブに、冷水を循環させて体全体を冷やす仕組みだ。

特に空調服は半袖や長袖、デザインを豊富にそろえた。スポーツメーカーの参入も目立つという。

ほかに首に巻く冷感商品「冷却リング」が、コロナ禍明けで外出する人が増えたことで前年の4倍に売り上げを伸ばしている。

菊池大貴副店長は「対策商品は梅雨明けに需要が高まるが、早めに購入する人も出ている」と話した。

作業現場向けの熱中症対策商品の売り場=水戸市酒門

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