NOA「みんなに会えるなら、なんでも大丈夫」 アルバム『Primary Colors』で歩む新章とNOANAへの想い

NOAが5月29日に、約1年3カ月ぶりとなる2ndアルバム『Primary Colors』をリリース。発売を翌日に控えた5月28日に東京・有明ガーデンでリリースイベントが開催され、雨のなか、大勢のNOANA(ファンの呼称)が会場に駆けつけた。

「皆さんこんにちは! NOAです!」――曇天もはね返す爽やかなオーラで登場したNOAは、今回が初披露となるリードトラック「COLORS」でイベントの始まりを告げた。身にまとった真っ白なジャケットは、“三原色”をコンセプトに制作された本アルバム収録曲のなかで唯一「何色にも染まらない“今の自分”」=「無色」を表す同曲を体現しているようだった。「次の曲は皆さんが知っている曲だと思います」と続けて歌唱した先行デジタルシングル「YBOM (You’ve Been On my Mind)」でも、観る者を釘づけにしていく。

MCでは、たくさんの裏話を聞くことができた。どこか懐かしいサウンドの「COLORS」について練習で意識したことを問われると、「かっこよさはもちろん、ガチガチにキメるよりも余裕がある感じを意識した」と回答。そういった“抜け感”や“エレガンスさ”は、R&Bグルーヴを存分に含んだ、80年代のマイケル・ジャクソンを彷彿とさせるダンスにも反映されている。パフォーマンスではNOAのステージに欠かせないダンサーズ・TEAM NOAとの掛け合いも見どころだ。

「YBOM (You’ve Been On my Mind)」のMVで演技をするシーンには、「韓国語を話している自分を演じる」という意識で臨んだそう。韓国出身の女優を相手役に起用し、強みの言語力を活かして韓国語でのアドリブにも挑戦しているのだが、「5、6回ほど連続で振られました(笑)」とテイク数を重ねたことを話し、会場からはあたたかな笑いが巻き起こった。また、この2曲の振り付けをYG ENTERTAINMENT練習生時代のトレーニングで出会ったダンサー・振付師のAkanenが担当していることにも言及。「サビをキャッチーにしてほしいと伝えて、それ以外はAkanenさんの思うままに仕上げてくださいとお願いした」と教えてくれた。

本アルバムのコンセプトが赤・青・緑の“三原色”である理由について、NOAは「日本語・英語・韓国語を話すなかで三重人格みたいなものを感じていて。それを曲に落とし込んでみたらどうなるんだろう?と思ったところから始まった」と説明。そんな時、日頃からともに制作を行い、今作にも参加している音楽プロデューサーのSunny Boyから“Primary Colors”=“三原色”という単語の提案があり、「想像していたこととも繋がるし、新しいものができるのではないか」と考え、コンセプトとアルバムタイトルの決定に至ったという。

本アルバムは当初12曲を収録予定だったところ、“今の自分”を表現するのにどうしても2曲追加したいというNOA本人の強い思いから、全14曲のラインナップで構成。注目したいのは、三原色にちなみ、「無色(色属性なし)」のM1「COLORS」を除いた残りの13曲が上から順に赤・青・緑の3色にカテゴライズされていることだ。

2~7曲目までの「gimme」、「BURN」、「RED ZONE」、「Prime」、「answer」、「between」は“情熱/強さ/エネルギッシュ”の赤に、8~10曲目までの「YBOM (You’ve Been On my Mind)」、「imasara」、「Break Away」は“センチメンタル/知性/冷静”の青に、11~14曲目までの「Last Letter」、「Always and Forever」、「Fell in love in NYC」、「00:02 (You & I)」は“幸福感/自然体/リラックス”の緑に分類され、各曲にそれぞれのイメージを包含している。

本アルバムについて、NOAは「今までよりも英語詞/韓国語詞だけの曲があったり、書いたことのない言葉を書いたりといろいろな挑戦ができたアルバム。自分自身に対しても発見があったし、皆さんに届けるメッセージとしても新しいものが生まれた」と期待を込めた。一方、“NOA”というアーティストのカラーについては、「各言語を話している時ごとに色が異なる」という。「韓国語は赤、日本語は青、英語は緑」というように、その言語を話すキャラクターになって歌うことを意識したり、「COLORS」以外の楽曲は色のイメージをもってレコーディングを行ったりと、興味深い制作秘話が明かされた。

アルバム楽曲を聴きたいシチュエーションも、NOAのなかでは色によって分かれているという。たとえば、「明日は勝負時!」というシチュエーションでは赤の曲を、浸りたい気持ちの時には青の曲を、散歩に行く際には緑の曲を……といったイメージだ。しかし、なかには寂しくて気持ちを奮い立たせたいからこそ、赤の曲を聴きたくなる人もいるかもしれない。赤と青のあいだ、青と緑のあいだなど、“つなぎ”の位置にある曲については、人によってどちらの色寄りか感じ方も違うだろう。NOAはそういった楽曲の受け取り方の幅広さを“グラデーション”に喩え、「ぜひ色を感じながら、頭から聴いていただきたいです」と今作ならではの楽しみ方を教えてくれた。このように自分の感じ方をベースにして聴くことができるのが『Primary Colors』の面白さ、味わい深さであると言えるだろう。

プライベートでドライブをする際にも自分の楽曲を聴くことがあるようで、「ちょっと恥ずかしいけど、(アルバムが)出来上がったからこそドライブ中に聴いて、(楽曲が)いいのかっていうのは、自分のなかでの確認事項」と、リスナーの視点で客観的に音楽に向き合っている様子も明かした。

最後には「制作期間もインスタライブ(Instagram Live)を通して皆さんと共有したりして、みんながいるからこそ出来上がったアルバム。本当に楽しんでいただきたいです」「このアルバムをもって始まる第2のチャプターも皆さんと素敵な思い出を作っていきたい」と感謝や今後の展望を伝え、壮大なスケールでアルバムのトリを飾る「00:02 (You & I)」を歌い上げた。空を見上げていた視線をNOANAに移し、体を同じ音楽で揺らしていく。雨すらも演出の一部に感じられるようなエモーショナルなひと時は、NOANAの心にも刻まれる大切な思い出となったのではないだろうか。

実力と音楽的感度の高さ、スター性を兼ね備え、語学力を活かしてグローバルファンダムも拡大しているNOA。7月に行われる渋谷でのキックオフ公演を経て、10月には『Primary Colors』を携えた全国ツアーを控えているほか、8月17日、18日には『SUMMER SONIC 2024』(17日に東京、18日に大阪公演)への出演も決定し、次世代のホープとして着実に歩みを進めている。

NOAが「みんなに会えるなら、なんでも大丈夫なので」と言い切る姿からは、NOANAへの惜しみない愛情が感じられた。それはNOANAも同様で、メディア向けのスチール撮影の際には、少々緊張気味のNOAに「かわいいよ!」と自主的に声をかける姿も。NOAはその声に照れた様子を見せていたが、そういったNOANAの愛あるサポートが、この先も彼を次のステージへと押し上げていくのだろう。ダンス&ボーカルグループ群雄割拠のシーンにおいて、彼のようなソロアーティストの存在はますます大きくなっていくに違いない。まずは今夏の活躍に要注目だ。

(文=風間珠妃)

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